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アスベスト:規制法案に業界抵抗 審議せず廃案 92年
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20050716k0000m040138000c.html
アスベスト(石綿)の原則使用禁止を定めた「アスベスト規制法案」が92年、議員立法で国会に提出されたが、提出前に業界団体の日本石綿協会が「健康障害は起こり得ないと確信できる」などとした見解を文書で政党と省庁に配り、自民党などの反対で一度も審議されないまま廃案になっていたことが15日、分かった。旧クボタ神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺では先月、住民5人(うち2人は既に死亡)が中皮腫を発症していたことが明らかになったが、文書は「一般環境においては石綿による健康問題は発生していない」と強調。危険性を軽視した業界の“圧力”が規制の遅れにつながった可能性が出てきた。
当時、市民団体などを通じて国内外の石綿被害を知った社会党(当時)は、規制法案づくりに着手。(1)石綿製品の製造、輸入、販売の原則禁止(2)健康被害調査(3)代替品の開発や適正な廃棄処理の推進−−などを柱としていた。92年はイタリアとフィンランドでも石綿使用が全面禁止され、世界的潮流になりつつあった。
これに対し、石綿協会は同年5月、同党に文書を渡し「健康への影響について誤解され、危険性を過大に受け取られることで、石綿業界は社会的に大きく制約を受けている」と主張。代替品については「コスト高で資源エネルギーを余分に消費する。安全性確認も不十分で、安易な代替は望ましくない」とし、法案への反対姿勢を明確にした。文書は通産省(現経済産業省)にも提出した。
社会党は同年12月3日、議員立法で法案を衆院に提出したが、所管の委員会には付託されず、同10日の議院運営委員会で自民党などの反対で廃案になった。国内では昨年10月、ようやく石綿使用が原則禁止になった。
法制化を目指した五島正規衆院議員(現民主)は「当時、省庁も自民党も規制に消極的だった。業界からの働きかけもあったのだろう。その後の政界再編の混乱の中で置き去りにされた」と振り返り、「今こそ総合的対策を取るべきだ」と訴える。
これに対し石綿協会は「詳細は分からない。ただ、当時は石綿が全面規制される前だったこともあり、法律や行政指導を守れば安全だと考えたのだろう。現在とは社会状況も協会の考え方も異なる」としている。【脇田顕辞、河内敏康】
毎日新聞 2005年7月16日 3時00分
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