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いつかどこかで吸ったかも 拡大アスベスト禍(Tokyo)
http://www.asyura2.com/0505/health10/msg/257.html
投稿者 ああ、やっぱり 日時 2005 年 7 月 07 日 11:07:11: 5/1orr4gevN/c
 

特報 いつかどこかで吸ったかも 拡大アスベスト禍
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050707/mng_____tokuho__000.shtml


 吸引して年月を経て発症することから「静かな時限爆弾」といわれるアスベスト(石綿)の被害拡大が分かってきた。建材メーカー従業員が多数発症していたことで、周辺住民にも大きな不安を与えている。アスベストはかつては建物の建材として多用され、解体などで簡単に飛散する。いつ、どこで吸い込むか分からない「爆弾」の恐怖は、いまだに身近に潜んでいる。 
 「もうちょっと早く別の会社にうつっとりゃあよかったんだわ、と私らは言っとったけどね。本人は恨み言は言わなかったよ」
 昨年、弟(59)をがんの一種・中皮腫で亡くした岐阜県羽島市の女性(63)は振り返る。弟は女性宅から二百メートルも離れていないニチアス羽島工場で働いていた。同工場では一九七六年から昨年まで、アスベストが原因とみられる肺がん、中皮腫で従業員ら二十一人が死亡している。
 「二十年、いやもっと前の話だけど、そりゃあ、あの工場からは何ともいえん嫌なにおいがしたもんよ。今は装置がよくなって大丈夫だって聞いたけどね。工場の中にいなければ大丈夫だって…」と女性は自分に念を押すように語った。
 地元では以前、同工場内で従業員が健康被害にあっていることは知られていた。だが、実情が分からなかったため、大きな話題にならなかったという。同工場に近い老人保健施設の職員は「もう昔のことだと思ってました」。
 同工場北隣にある羽島市民病院には、被害を発表した五日、高谷清治工場長が事情説明に訪れた。同病院には現在、ニチアス従業員一人が中皮腫で入院中。過去に中皮腫の患者が何人か受診したが、いずれも同社従業員だった。被害発表後、「健康診断を受けたいという希望者が数人、問い合わせしてきた」という。同病院の担当者は「ニチアスは工場外での健康被害はないといっているが、本当にそうか分からないので、市民向け説明会を開いてはと提案した」と話す。
 建材などのメーカー従業員のアスベストによる被害は先月末、クボタが七十九人の死亡を発表した。その後、ニチアスが計八十六人死亡していたと発表。ほかにも次々と被害が明らかになってきた。
■70−90年代に大量輸入、使用

 「アスベストは自然の鉱物で、古くはギリシャのアポロンの神殿などに使われた。ギリシャ語で『消し去ることができない物』という意味」。アスベストについて解説するのは「静かな時限爆弾−アスベスト災害」の著書がある東京女子大の広瀬弘忠教授(災害・リスク心理学)だ。
 「繊維状の鉱物で、耐熱などの特性があり、造船では火事が起きると困る機関エンジン部分に、鉄道でも機関車に使った。五〇年代以前から、コンクリートの中に入れて下水管などとして使われた」。七〇−九〇年代に大量に輸入され、建材や断熱材として多用され、学校などの公共施設でも使われてきた。「さまざまな用途に使われてきた」

 アスベストの怖さについて、広瀬氏は「長い時間を経ても変質せず、体内に入るとそのまま残り、刺激をし続け、中皮腫や肺がんにつながる。アスベストの一本の繊維は小さく、細いものだと、たばこの煙の粒と同じくらいか、それより小さい」と説明する。

■死者数ピークは25年後の見通し

 アスベストなどの被災者支援を続ける市民団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の永倉冬史事務局長も「においもしなければ、高濃度でも気づかず、自覚症状もない。潜伏期間も長くて、発症しても因果関係が分かりにくいことだ」と話す。アスベストは吸い込んでから三十−四十年後に発症するといわれ、アスベストに接したことを忘れてしまうことも多い。

 発がん性が指摘されたことから、国は七五年にアスベストの吹きつけを禁止した。だが「その後も、アスベストが混入した代替品が使われてきた」と永倉氏。九五年には、毒性の強い青石綿と茶石綿の製造も禁止され、昨年十月には、白石綿の使用も原則禁止になったが、「吹きつけ材は、八九年ぐらいまでには無くなったが、その後は屋根瓦や、天井材、波形スレート板などに、アスベストを含む物が使われてきた。昨年十月以降も、建材以外では石綿布、原発関係の材料などで、違法でなく使われ続けている」(永倉氏)。

 アスベスト吸引が原因で、労災認定されたのは一昨年度だけで百二十一人に上る。アスベストが原因とは断定できないが、中皮腫による死者数は、九五年には五百人だったものが、一昨年には八百七十八人になるなど、ほぼ毎年増えている。これまで吸った人の発症のピークは二〇三〇年からで、そこから五年間で死者は二万人を超えるとの試算もある。

 怖いのはアスベスト関連の労働者にとどまらないことだ。広瀬氏は「アスベスト工場の周辺や、建物の解体時に飛散したものを短期間に吸って、発症する可能性もある」と指摘する。

 公共施設での使用も問題となり一九八七年、文部省(当時)が、全国の小中学校や公共施設の調査を通達で求め、改修なども進んだ。だが、東京都練馬区では二〇〇二年度になって、旧区立センターなど計十一施設で、アスベスト使用が見つかった。同区は「再調査では、施設の建設年度から、アスベストが含まれていないはずの施設でも含まれている場合もあった」と調査の難しさを吐露する。

 各地の公共施設でも使用が見つかり、問題にもなっている。「一九八七年当時の調査がずさんだったし、『対策をとる』という通達が現場で徹底されていなかった」と永倉氏はいう。

■飛散防ぐ新規則 実効性は疑問符

 さらに被害が懸念されるケースがある。阪神大震災では、アスベストが使用された古い建築物が一斉に破壊された。

 環境庁(当時)の調べでは、九五年二月から十月にかけて九回、被災地の住宅地十七カ所を調査したところ、倒壊したビルなどの解体作業現場では、大気汚染防止法がアスベスト使用工場付近について義務づけた基準「大気一リットルあたり(アスベスト繊維)十本」のほぼ二倍にあたる一九・九本を計測したケースもあった。解体現場をシートで覆ったり、水を掛けるなどして飛散を防ぐ措置が不十分だったのが原因らしい。

 国の推計では、アスベストが使われた古い建造物の解体は二〇二〇年から四〇年までがピークで、年間十万トン前後のアスベストが排出されると見込まれている。

 今月から、石綿障害予防規則が施行され、解体工事の際、飛散防止対策を労働基準監督署に届け出ることが義務づけられた。だが、永倉氏は不安げだ。「解体を安い単価で引き受け、きちんとした工事が行われない可能性もある。対策をとっているかどうか、それを見抜く力を労基署も持っていない」

 広瀬氏はこう指摘する。「新たな規則は、届け出を義務づけているだけで、十分とはいえない。公的機関や専門機関のチェックを義務づける必要がある」

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