★阿修羅♪ > 国家破産42 > 904.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
職場から
一億総中流は終わった
日本は格差社会になっている
http://www.bund.org/culture/20051025-1.htm
日本の財政赤字が1000兆円(地方を含む)を超えるなか、自民党や財界からは消費税率アップの声が高まっている。このところ年金や医療費の相次ぐ個人負担増など私たち国民の生活は圧迫されるばかりだ。戦後60年、ひたすら経済成長を追求してきた日本社会は、今や「豊かさ」を失い、格差社会へと変貌してしまった。
-------------------------------------------------------------
消費税大増税で中小企業が潰れる
伊藤正雄
今年の5月、私が勤める会計事務所の忙しさは凄まじいものだった。多くの企業は3月を決算月としているため、2か月後の5月末に税金申告のピークがやってくるからだ。それに加えて今年は、消費税の納税義務を負う事業者の基準が売上高3000万円以上から1000万円以上に引き下げられたことにより、仕事量が大幅に増えた。
将来的には、課税対象を全事業者に拡大するとか、税率を20%台にまで引き上げるといった話もある。会計事務所は大繁盛となると思うが、物の値段が一挙に上がるわけだから、私たち庶民の日々の生活に直接影響が出る。さらに消費税増税は家計だけではなく中小企業にも大きな負担となる。会計事務所で税金に直接関わる仕事をしている者として、消費税増税について意見を述べたい。
消費税が払えない中小企業
消費税の計算と申告実務は、領収書や帳簿をきちんと保管しておくことが前提で、処理の仕方も煩雑だ。家族経営をしているような中小の零細企業では、なかなかそこまで会計の管理が出来ない。それで昨年度までは、売上高3000万円未満の中小零細企業は、課税事業者から除外する措置がとられてきたわけだ。
今年度から課税基準が売上高1000万円以上に引き下げられたことで、新たに課税事業者となった企業の数は136万社に上る。これは中小企業全体(=約600万社。ちなみに日本企業の99%は中小企業)の2割強にあたる。
会社が負担する税金は、法人税や事業税が主なものだが、「利益」に対してかけられる税金なので、赤字の会社はほとんど納める必要がない。一方、消費税は「売上げ」に直接かけられる税金なので、たとえ赤字でも取引した分だけ納めなければならない。加えて、会計事務所への報酬も新たにかかってくる。
政府は、課税基準の引き下げについて、「免税業者が課税業者を偽って商品価格に消費税分を上乗せして不当に儲けている。その分の不公平をなくすため」と説明している。だが、実態は全く逆だ。
今回新たに課税対象になった、比較的小さな規模の企業の場合、消費税をそのまま販売などの価格に上乗せ出来ている所は3〜4割に過ぎない。激しい価格競争のなか、競争力の弱い中小企業は5%も値上げしたら商売が成り立たない。結局、多くの中小企業は自腹を切って消費税を払っている。さらに税率アップとなれば、まともに消費税を納めていたらとても経営が成り立たない企業も多い。不払いや倒産する企業はさらに増えるだろう。
トヨタには1500億円の消費税還付
厚生労働省の予測では、年金などの社会保障にかかる支出は20年後には現在の2倍の176兆円になる。このうち税金で賄われるのは64兆円。「借金漬け財政の中、これだけの負担を補うには消費税を増税するしかない」というのが政府や財界の言い分だ。
消費税が導入されたのは89年で、97年に3%から5%に値上げされた。この間、消費税による150兆円近い税収があった。ところが、年金や医療費などの国民負担は減るどころか増す一方だ。消費税が社会保障に回っているなら、こんなことにはならないはずだ。今まで集めた消費税は、いったいどこへ消えてしまったのか。
実は、消費税の導入と並行して段階的な法人税の引き下げが行われてきた。その結果の税収の減収は145兆円に上る。消費税による税収150兆円のほとんどが、法人税の減税分を補填することで消えてしまった計算になる。法人税は1988年に大幅な値下げが行われた後、98・99年の改正で実効税率が約50%からアメリカ並の40%に引き下げられている。法人税引き下げの恩恵には、中小企業も与っているわけだが、法人税は、所得税のような累進課税制度ではない。減税分の利益の大半は、大企業のものとなっている。
こうした「法人税から消費税へ」という財源シフトは、大企業にとっては、さらなる「うまみ」を生み出している。トヨタやソニーなど、大企業ほど海外への輸出取引による収益が多い。消費税は国内取引にのみ課税されるため、輸出品には消費税がかからない。しかも消費税の納税額は、「売上げに上乗せした分」から「仕入れに上乗せして他の業者に支払った分」を引いて計算する。その結果、トヨタなどは納税するどころか、毎年1500億円以上もの消費税の還付を受けている。
2004年度の輸出大企業・上位10社では、計7727億円もの消費税が還付されている。消費税率が2倍になれば輸出企業への還付金も2倍になる。輸出企業は丸儲けなのである。
生活必需品は非課税に
自民党系の「日本経済復活の会」(代表・小野盛司)による「日本経済復活シミュレーション(2003年1月)」は、消費税・法人税・所得税をそれぞれ10兆円ずつ減税した場合、減税しなかった場合と比べて5年後の実質GDPがどれだけ増加するかを比較。消費税減税の場合3・2%、法人税減税の場合7・6%、所得税減税の場合4・5%とし、「法人税減税が圧倒的に効果が大きい」と結論している。
法人税が減税されると、企業は税金を気にすることなく利益を出すことができるので、それまで押さえ気味だった利益が増える。それに比例して配当金が増え株価が上がる。企業は直接金融でも資金調達が容易となり、投資拡大となり企業活動が活発化するというのだ。
一方、共産党は、「消費税が家計を圧迫し、国民の消費を手控えさせている。大企業の法人税率をもとに戻しただけでも、年間数兆円の増収になる」と、大企業の負担を増やすべきだと主張している。
消費税増税を主張する自民党と消費税廃止を求める共産党。一見正反対の主張をしているようだが、経済成長を価値としている点では変わらない。自民党が企業(とりわけ大企業)が儲かれば景気がよくなり中小企業や庶民の生活もよくなると言っているのに対して、共産党は「経済成長の分け前をもっとよこせ」と言っているだけのことだ。
現在の国の財政事情を考えるなら、単純に「消費税を無くせ!」と言っているだけですむとは思えない。もちろん、無駄な公共事業を減らしたり、米軍への思いやり予算を無くすなど、不要な歳出を減らしていくのは当然だ。しかし、今や日本は1000兆円もの借金を抱えている。来るべき少子高齢化社会では、社会保障支出が増大するのも確実だ。無駄な歳出を減らすだけでは、とうてい間に合わない。何らかの形で財源を確保しない限り、財政は立ち行かなくなる。
私は、ローマクラブの『成長の限界』で言われているような「経済成長至上主義からの脱却」という視点から、消費税などの税制改革についても考えていくべきだと思う。経済成長で生活の豊かさが測れる時代はとっくに過ぎている。数字の上での経済成長よりも、私たちの本当の「豊かさ」のために必要なことは別にある。
その点、EU諸国で行われているようなグリーン税制改革(環境に悪影響を与える産業活動に課税する)は、大いに参考になると思う。またEU諸国では、食料品などの生活必需品については税率を下げたり非課税とするといった政策がとられている。日本でも、社会保障の財源として、どのような国民負担のあり方がより公正で合理的なのか、国民的に議論するべきだ。
(会計事務所勤務)
--------------------------------------------------------------------------------
私立と公立、高校の階層分化が進んでる
保科湘子
私は、とある社会福祉法人で「生活福祉資金の貸付相談」という業務を担当している。「生活福祉資金」というのは、低所得世帯に対して一時的に資金を貸し付けて世帯の自立を支援する社会的セーフティネットの一つで、その窓口となって面接や審査手続きを行うのが私の仕事だ。これから迎える受験シーズンは、進学にともなう学費貸付の相談が増え、忙しくなる。
最近気になるのは、「子どもを進学させてやりたいが、公立高校ではなく私立高校に」という相談が増えていることだ。「絶対に公立高校には行かせたくない」と断言する親御さんもいた。「そんなこと言ったってお金ないのにどうするのよ」と思う一方で、親御さんの気持ちもわからなくはないのだ。
確かに、いわゆる偏差値ランクの最低ラインの公立高校だと、ひどい場合は卒業までに3分の2がドロップアウト(中退)してしまう。私が担当した生徒でも、せっかく貸付を受けて進学したのに、高校を途中で辞めてしまった生徒が少なくない。入学しても同級生は次々と中退。学業より学費稼ぎのアルバイトの方が位置づいてしまい、なんのために学校に行くのかわからなくなったりして、結局中退してしまうのだ。
私立高校に進学しても問題は起きる。貸付金だけでは私立高校の学費をまかなうことはできない。不足分は生徒自身がアルバイトして払うというのが貸付時の条件だ。周りの友達はみな、親からもらったお小遣いでおしゃれをしたり、遊びに出かけたりしているのに、自分だけは学費を稼ぐためにアルバイトに精を出さなければならない。周りの友達とのあまりの経済的格差にいたたまれなくなり、中退してしまう。
高校を中退しても、貸し付けた生活福祉資金は返さなければならない。高校中退では正規就労は難しい。私立の場合は借受金額も多いので、数十万単位の借金だけが残ってしまう。もちろんそういうケースばかりではないのだが、中退されてしまうと、貸付を担当した私としても、ちょっと空しい。
最近、日本社会の階層分化が加速している気がする。一定の所得がある世帯の子どもは、幼稚園「お受験」から塾通いや習い事をして「私立のちゃんとした学校」に通える。官僚や議員は、今や「金持ちの子ども」しかなれないことが統計的にも明らかになっている。医者や弁護士、公務員も然り。一方、塾通いをする経済的余裕のない世帯の子供は、公立高校に行くしかない。
少し前までは、「貧乏人の子」でも本人の努力次第で公立高校に合格すれば、少ないお金でちゃんとした教育を受けることができた。職業を選ぶこともできた。だが今や公立高校は、偏差値ランクの高い一部の学校を除いて、行くところのない生徒を収容する「箱」と化している。少なくとも親からはそうみなされている。ドロップアウトした生徒はフリーターになるしかなく、低所得層に滞留していくことになる。本人の努力以前に生まれた時点で「勝ち組・負け組」が決まってしまうのだ。
社会福祉の現場で、日々「貧困の再生産」を垣間見ているがゆえに、全ての子供たちに「機会の均等」を保障することの必要を痛感する。
(社会福祉法人職員)
--------------------------------------------------------------------------------
社会保険未加入の会社が増えている
戸田 登
業績悪化のため長年勤めていたダンボール関係の製造会社を退職した。それからハローワークに通い職探しの日々となった。求人票選択の基準としては、職種も重要だが、加入保険に注意した。以前の会社は、雇用・労災・健康・厚生年金に加入していた。やはり、きちんと各種保険に加入している会社が安定感があると思ったからだ。
ところが、職探しを続けてみて、健康保険・厚生年金に加入していない会社が少なくないことに驚いた。ある会社の面接では、面接担当者に社会保険について質問すると、「国保や国民年金でも大丈夫だよ。われわれもそれでやっているから」と言われ、その会社で働く気が失せてしまった。今までは、遠い未来のように考えていた「老後」だが、今回転職を機会に年金問題を急に身近な問題として意識するようになった。
すべての法人と、5人以上の常勤者がいる事業所には、厚生年金への加入が法律で義務づけられている。未加入の場合「6カ月以下の懲役または20万以下の罰金」が科せられる。労使折半の厚生年金は、企業が果たすべき社会的責任の一つだ。
だが実際には、厚生年金に加入していない企業が増えている。厚生年金に加入している法人・事業所は、1997年の170万カ所をピークに2000年には167万カ所に減っている。2002年度の新規法人のうち2割が厚生年金に未加入であり、厚生年金からの脱退も急増している。
雇用・労災・健康保険などの保険料の総計は、社員の年収と同じぐらいかかると言われている。バブルの頃は、銀行が好きなだけ企業に操業資金を貸してくれたので、保険料が高くても問題は無かった。しかし不景気が続く中で中小企業の多くは、正社員のパート化や労働時間の短縮などにより「常勤者」を少しでも減らして、厚生年金の保険料をカットし、人件費を節約しようとしているのだ。
社会保険料は、加入事業所が赤字でも滞納は許されず、保険料は「標準報酬月額」に従い払わなければならない。滞納すると社会保険事務所から社会保険労務士が派遣され、督促に応じない企業には強制徴収による資産の差し押さえという強制措置をとることもできる。社会保険料の「取り立て」が引き金で廃業に追い込まれる企業も増えている。
将来の年金給付について厚生労働省は、2100年に厚生・国民年金で給付する3070兆円のうち厚生年金で440兆円、国民年金で40兆円の合計で480兆円の財源不足になると予測している。
今後、厚生年金の保険料率13・58%から18・30%へ、国民健康保険料は1万3300円から1万6900円へと引き上げられていく。国民や中小企業の負担は増大し、更なる未納による社会保険制度の空洞化が危惧される。このままでは日本の社会保障制度は崩壊する。
(工場労働者)
--------------------------------------------------------------------------------
(2005年10月25日発行 『SENKI』 1193号5面から)
http://www.bund.org/culture/20051025-1.htm