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日経MJ(流通新聞)
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福島県議会が可決した大規模店舗の出店を規制する全国初の条例が小売業者に衝撃を与えている。とくに大手小売りは「大店法が地域単位で復活した」として強く反発。一方、消費者の見方はさまざまだ。地方自治体レベルの郊外出店規制は中心市街地活性化につながるのか、消費者の流出が続き地域商業衰退を招くのか――。(関連記事4、5面に)
計画段階での届け出義務化
福島県議会が可決したのは「商業まちづくりの推進に関する条例案」。売り場面積六千平方メートル以上の店舗を対象に、大規模小売店舗立地法(大店立地法)の手続き前に、計画段階での届け出を義務化する。市街地の空洞化など街づくりへの悪影響がないかなどを調整し、問題があれば店舗面積の縮小など計画の見直しを勧告する。施行は来年十月一日。
見直し勧告には強制力はないが、県はその内容をホームページなどで公表するという。小売業にとって最も重要な消費者の評価を損ないかねない「致命傷で刑罰に匹敵する」(イオン)と受け止め方は深刻だ。
だが、実は条例案は可決される前から大手の出店戦略にじわじわ影響を与えてきた。
伊達町誘致の
SC構想宙に
福島県北部の伊達町。国道に面した約二十万平方メートルもの農地に持ち上がったショッピングセンター(SC)構想が、宙に浮きつつある。
東北最大規模のSCを出店する計画を持つのは商業施設開発のイオンモール。約十年間、出店交渉をしてきたが、県との調整がつかないまま出店規制の街づくり条例が可決された。同社は二〇〇五年八月中間期に、約四百平方メートルの一部取得用地を「このままでは開発のメドが立たない」と減損処理した。
SC予定地から徒歩五分ほどにある伊達町役場の職員は「町としてはもろ手を挙げて(SC進出を)賛成しているのだが」。工場誘致などが望めなくなった地方自治体にとって、SCが出店すれば伸び悩む税収を補い雇用も確保できる。イオンモールの誘致は町あげての作業だった。
もちろんSC出店によって町内の商店が衰退するリスクはある。しかし「そもそも後継者難で個人商店の廃業が相次いでいた」(同町)。一九九一年には百一軒あった町内の個人商店は、二〇〇二年には六十三軒に減少。そのため同町は「むしろSCには町全体の集客力を高める効果を期待している」。
しかし、年間売上高二百億―三百億円規模の大型SCができれば、隣接する福島市などへの影響は大きい。福島市の小売業年間販売額(〇二年度)は約三千五百億円で、中心市街地に限ると約六百七十億円にすぎない。中心部の百貨店閉店などもあり、空洞化を恐れる周辺市町村の商工団体は、相次いでイオンのSC進出に反対した。
福島県の街づくり条例は、こうした市町村に横たわる利害関係を調整する目的がある。「店舗面積が六千平方メートルを超えるような大型店は影響が市町村レベルにとどまらない」(福島県)。出店計画を吟味する地元説明会には、税収などのメリットがない周辺自治体や商工会も参加して意見を述べることができる。
ただ、こうした出店規制が県そのものの商業の地盤沈下を促すリスクも否めない。
県境飛び越え
仙台で買い物
仙台中心地の商業施設「フォーラス」。百六十八店が集積するこのビルの前には、福島からの高速バスの停留所がある。「コムデギャルソン」など東北ではここにしかないというショップが八十二店もあり、フォーラスのあるテナントの週末の来店客は、三割超が福島など県外からだという。
高速バスの福島発仙台行きは一日約四十便。片道一時間強、往復料金千―千百円という手軽さで利用者が増加、〇四年度の輸送人員は往復約七十万人で前年度比三八%増えた。条例案が可決された十三日夕、仙台発のバスを降りた客の手には百貨店の紙袋が握られていた。消費者はいまや県域を越えて動く。
「郊外の主役はいまや専門店。大型店を規制しても空洞化は避けられないのでは」(大手スーパー幹部)という見方も小売業界にはある。郊外の幹線道路沿いにはドラッグストアやカジュアル衣料品店などが並び、大手スーパーの収益をむしろ圧迫しているという。
県などは大型店の郊外出店の規制は中心市街地活性化に向けた一歩と主張するものの、直接再生につながるわけではない。市街地に消費者をつなぎ止める魅力ある街づくりの実行力そのものが問われている。
地元の反応
▼秩序ある街づくりに期待
福島商工会議所の佐藤勝三会頭(66)
「対象施設が当初予定されていた面積より相当小さくなったことは喜ばしい。中心市街地のにぎわいを取り戻そうとしている中で、条例が効果的に機能し、秩序あるまちづくりが進むことを期待したい」
▼中心街集客の実効性薄い
福島市中心部の商店街、パセオ協同組合理事長の小関庄兵氏(64、宝石店経営)
「今回の条例は中心市街地ににぎわいを呼ぶビジョンが見えない。中心市街地に人を集めるには、まちの魅力作りが必要で、郊外の大型店開発規制では実効性は薄い。顧客と会話すると仙台に行けば心がときめく、あんな街が福島にもあれば、といわれるが、仙台にはない福島ならではの魅力を高めていく施策が必要」
▼大型店が出るなら駅前に
パセオ通りを歩いていた主婦(36)
「消費者としては多様な店の中から選べる環境が望ましいので、県条例で大型店の出店が規制されるような事態には違和感を覚える。しかし大型店が出店する場合は、郊外ではなく駅前の中心市街地に立地してくれたほうが、何かと便利」
▼郊外型SCに魅力感じる
福島サティに2週間に一度のペースで自家用車で買い物に行くという福島市内在住のパート店員、酒井佳子さん(49)
「駐車場代が無料なうえ、様々な商品が一カ所で買え、家族全員が一日過ごせるのが郊外型ショッピングセンターの魅力。条例で規制されることで新しい店が開店しにくくなるのは困る」
▼消費者ニーズ無視の規制
3人の子供と妻と一緒に車で福島サティに買い物に来た市内の会社員(43)
「条例の規制は消費者のニーズを無視したもの。食品スーパーは23時まで開いているし、サティ隣接地の幹線道路沿いにはメガネや大型書籍、衣料品などの専門店も集積しており、空洞化が進み魅力のない中心部より、郊外の大型店の方が消費者ニーズに合っている」
【図・写真】福島から高速バスを利用して、仙台に買い物へ行く消費者も多い(福島市)
【図・写真】福島県伊達町の田園地帯にはイオンモールがSC出店を計画していたが…
【図・写真】全国初の条例を可決した福島県議会