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衆議院選挙での「大勝」を受け、小泉政権は郵政民営化法案の衆院再可決など、改革加速化を進めている。中でも、公務員削減や社会保障制度改悪と併せて焦点化しつつあるのが、政府系金融機関の大合理化である。これは、多国籍大企業の利益のために、中小商工業者や農業者など、従来保守政党の支持基盤であった層をさらに切り捨てるものである。政府系金融機関の統廃合の狙いなどについて述べる。
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小泉首相は十月六日、政府系金融機関について「一つにできるんだったら、一つがいい」と、統廃合に踏み切る考えを示した。小泉の「盟友」と言うべき竹中経済財政担当相も、「政策金融を今の半分ぐらいにする」と、政府による金融政策の縮小を打ち出している。
政府系金融機関とは、日本政策投資銀行、国際協力銀行、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、公営企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫の八機関を言う。住宅金融公庫は、すでに〇七年度から独立行政法人に移行することが決まっている。
改革は多国籍大企業の要求
これらの機関の原資は、郵便貯金や簡易保険など国の「信用力」を背景に、国民から受け入れた(事実上収奪した)資金である。政府系金融機関は、従来、この原資と政府の交付金などを背景に、比較的「低利・長期・固定」の融資を行うことで、戦後の経済成長に一定貢献した。
それとともに、保守政党にとっては、政府系金融機関の主な融資対象である中小商工業者や農民を支持基盤として確保するという意味で重要であったし、利権による「うま味」もあった。さらに、財務省(旧大蔵省)を中心とする所轄官庁にとっては、重要な「天下り先」でもあった。
だが、多国籍化したわが国大企業にとっては、国際的大競争に勝ち残るべく、安あがりで効率的な政府を求めるようになった。さらに、「官から民へ」を合い言葉に、公的機関が行ってきたさまざまな事業を民間に開放させ、新たな「もうけ口」にすることももくろんでいる。
国の深刻な財政危機も、政府によるこれら金融機関への補助金を継続不可能とした。加えて、政府系金融機関自身の抱える不良債権(合計約八兆五千億円とされる)もまた、「隠れ赤字」として深刻な問題になっている。
こうして、政府系金融機関の存在と機能は、「改革」の対象となるに至ったのである。一九九九年、日本開発銀行と北海道東北開発公庫を統合して日本政策投資銀行に、日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合し国際協力銀行が設立された。
だが、これらは、改革をあせる財界からすればまったく不十分なものであった。
「出口」の改革急ぐ小泉政権
二〇〇一年、「聖域なき構造改革」を掲げて登場した小泉政権は、そうした財界の「不満」と「期待」に、忠実にこたえた。
小泉政権は、当初から「政府系金融機関の合理化」を掲げ、石原行政改革相(当時)の私的諮問機関「行革断行評議会」は、政府系金融機関を「国内向けと海外向けの二機関」に統合するという提言をまとめた。政府の経済財政諮問会議も、〇二年十二月に政府系金融機関の「廃止・民営化」など「見直し方針」を決定した。
これは、(1)リスク評価が難しい分野以外は撤退か民営化(2)貸出残高が国内総生産(GDP)に占める割合を将来半減(3)〇七年度末に特殊法人形態を廃止し、後継組織は統合集約というもので、政府系金融機関の役割を劇的に縮小させようというものである。
だが、大銀行など民間金融機関の貸しはがし・貸し渋りが激化、中小企業を中心とする反発が強まり、議論が先送りされたのである。
そしてこんにち、総選挙に勝利した小泉政権は、一気呵成(いっきかせい)に改革を進めるべく、再度、政府系金融機関の統廃合を打ち出しているのである。
政府系金融機関を統廃合することの最大の狙いは、郵政民営化案とセットになっての金融改革である。
従来、郵貯・簡保などが資金の「入口」とされるのに対し、政府系金融機関は資金の「出口」と言われる。
マスコミは郵貯・簡保や政府系金融機関が「民業圧迫」であると言い、民間大銀行系のシンクタンクは、政府系金融機関の役割は「創業時の小企業か、宇宙開発のような大プロジェクト」程度でよいとし、それこそが「健全な資本主義国家を建設するため」に必要だとまで言い切っている。
要は、郵政民営化(「入口」の民間開放)に加えて「出口」をも開放(統合、民営化)することで、総額三百四十兆円とされる金融資産(国民の汗に結晶)を最終的に大銀行や外資系金融資本に明け渡し、食い物にさせそうというのである。
さらに、公務員労働者の削減、行政改革という狙いもある。
そしてそれらは、増税による本格的な国民収奪に対する地ならしでもある。
国民諸階層を犠牲にするもの
小泉政権は改革加速化をもくろみ、政府の経済財政諮問会議に作業部会を設置、〇六年にも関連法案を提出することで、政府系金融機関の統廃合を急ごうとしている。
だが、政府系金融機関の統廃合は、国民諸階層に何をもたらすか。
これら機関で働く公務員労働者はリストラの対象となり、あるいは待遇や労働条件が悪化するだけではない。
政府系金融の機能が縮小・統合、民営化されれば、中小商工業者や農林水産業、あるいは地方の事業への融資は、「採算性」や「不良債権処理」を口実に縮小されざるをえない。まさに、大銀行が行った過酷な貸し渋り・貸しはがしの再来である。
中小商工業者や水産業者などはこれまで以上の資金難に陥り、倒産・転廃業に追い込まれることとなろう。地方商店街の「シャッター通り」化はますます進み、地域経済の崩壊はいっそう進む。もちろん、中小の下で雇用されている膨大な労働者も犠牲となる。
だからこそ、日本商工会議所などの中小団体は政府系金融機関の廃止・縮小に反対し、逆にその「強化」を求めているのである。日本商工会議所が実施したアンケート調査によれば、借り手である中小企業の六七%が、中小向け政府系金融機関統合に否定的な回答をしている。
全国一の高失業率が改善しない沖縄県も、沖縄振興開発金融公庫の統廃合には抵抗を示している。
まさに、中小や地方にとっては切実な課題なのである。
政府内でさえ、岩永農相が「民間では融資が困難だと言われる(農業への)長期低利の資金をどこに求めるかとなると、農林公庫が果たしている役割は大変大きい」と指摘するほどだ。
もちろん、高級官僚による政府系金融機関への「天下り」などは、直ちに禁止しなければならない。だが、そうした政官財のゆ着や腐敗の是正を口実に、国民諸階層を犠牲にすることは許されない。
国民生活・国民経済を守るため、政府系金融機関の改革に反対する運動が求められている。社会保障制度改悪や増税攻撃と闘う運動と結合し、幅広い闘いを巻き起こすことが求められている。
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