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http://www.jlp.net/letter/051015c.html
俺は、派遣労働者。トヨタに自動車部品を納入する関連企業で働いている。月給は十四万円余りだが、幸か不孝か、トヨタの「カンバン方式」のおかげで毎日毎日残業を強いられ、税込みで十七、八万円になる。しかし、手取りは十五万円ほどにしかならず、その上、ボーナスはゼロ。年収で二百万円に手が届くかどうかである。これで一家四人を養っている。年に一度、家族旅行でも行ければもうけものだ。
* * *
ある日、上司から「トヨタの生産ラインで数日働いてくれ」と言われ、いやいや承諾してラインで作業することになった。
トヨタの工場に入ると、「実績台数○○○台、達成率○○%、残業一時間○○分」の電光掲示板が目に映る。見渡すと、二十四、五歳の青年たちが黙々と自動車の組み立て作業をしている。体力仕事なので男性ばかりかと思ったら、ポツポツと女性の姿も見受けられた。みんな黙々と作業をしている。
ラインは完成車に近いところだ。一台の車が流れてくると、一人が三つくらいの作業をこなしている。たとえば、まずエンジンのネジをつけて、次に車の中に入ってシートベルトを取り付け、次に後ろのブレーキランプを取り付けるといった具合だ。班長と思われる人がラインで目を光らせているので、気を抜くヒマなどまったくない。
作業開始から二時間余り、ラインが止まった。ラインで作業していた労働者の顔が一瞬ほころんだように見えた。やっと十分の休憩だ。だが十分といっても、この間が大変だった。トイレに行って、タバコを二口か三口吹かす間もなく、ラインの前に立つ。作業開始五分前だ。またラインが動き出した。黙々と作業につく。そして昼休みの四十五分を挟んで、ラインはまた動き出す。そしてまた…。
電光掲示板に目をやると「残業○○時間」のサイン。「もう少しだ」と自分に言い聞かせてラインが止まるのを待った。
この日は、もう若くない俺にとっては苦痛だった。現場のラインで働いているのはほとんどが青年だが、年配者ではとても続けられないだろうなと思う。
* * *
この工場の労働者の半数近くは、正社員ではなく俺と同じように不安定雇用、つまり派遣労働者で占められているのだ。みんなトヨタの作業服を着ているので見た目ではわからないが、待遇の差は歴然としている。安い労働力を求めて海外生産を追求する多国籍大企業にとっては、いつでも使い捨てることができる派遣労働者は、便利な存在なのだ。
日々、働いている労働者にとっては当たり前の光景なのだろうが、俺にとっては、これがトヨタの実態なのだと体で知った一日だった。労働者を搾りに搾って、ばく大な利益を上げている日本の多国籍大企業トップ「世界のトヨタ」の裏を垣間見た思いだ。
休憩時間、同じ郷土出身のトヨタ関連関連会社の労働者と話す機会があった。「一応、トヨタカレンダーで仕事をしているが、まったく関係ないよ。トヨタが休みでも俺たちは部品の納入で休みもろくにとれないし、下請け企業を犠牲にして大もうけしている。俺たちにその利益の少しでもまわしてくれればうれしいのにナァ」ともらしていた。
明日もまた地獄の仕事が待っている。トヨタのためにではなく、労働者の未来のために、「よし、やるぞ!」。
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