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上海市の概要
上海はよく知られているように中国経済の中心をなし、国際的金融センターの役割を担っている。人口は中国最大であり、またGDPは914億ドルで台湾と比較するとその3分1の規模まで成長してきた。一人当りGDPは5,500ドルと中国平均の5倍となっている。
【上海市の基礎データ】
項目
データ
備考
常住人口
1,674万人
2000年、2位の北京市は1,382万人
面積
6,340km2
人口密度
2,700人/km2
澳門・香港特別行政区に次ぎ第三位
GDP
7,400億元
04年、約9.6兆円、914億ドル、前年比13.5%増
一人当りGDP
44,205元
約57.5万円、5,500ドル
一昨年には世界初のリニアモーターカーが浦東空港から市内の地下鉄龍陽路駅まで開通。市内の至るところで老朽家屋は撤去され、高層かつ大規模な商業施設、ホテル、オフィス、マンションに生まれかわり、公園などの公共スペースもふんだんに供給されている。2010年開催の万国博覧会まで街は大きな変貌を遂げていくだろう。
昨年4月のインサイトでは以下に書いた通りだが、更に急進的発展を遂げている。このように変貌を続ける上海は、中国の縮図でもあり、中国全土の近未来を告げる見本市会場とも言えよう。今後の中国市場を占う意味でも、その変化を注視し続ける必要がある。
『GDP総額が最大の都市は上海市で6,250億元、前年比11.8%と、中国全体の5.4%を占め、ニュージーランド一国の規模に相当する。常住人口一人当りGDPは4,600ドルと、中進国並みの高さである。
台湾においては一人当りGDPが1,000ドルを超したときに百貨店が、3,000ドルでスーパーマーケット、6,000ドルでCVS、1万ドルでハイパーマーケット、ウェアハウスストアが、1万2,000ドルを超えたときにSCが現れた。それと比較すると中国の方が各業態の出現が早いが、今後は更に上海においてCVSやフルラインのDS業態が、それより後れた地域ではSMの店舗展開が加速されていくものと予測される。』
上海における外資系小売業の進出
このような肥沃なマーケットに対し外資は早くから着目し出店を行ってきた。
カルフールは95年に曲陽店を開設後、ハイパーマーケットを次々に出店。古北店、金橋店など繁盛店を展開している。また、03年には聯華超市との合弁で、スペインに本社を置く傘下のDS、ディアを開店してチェーン化を図っている。
メトロも95年に上海錦江集団と合弁で、キャッシュ&キャリー業態で進出。閔行店、龍陽店、虹口店など主要拠点を抑えている。
タイの大手食品事業集団であるCPグループが経営するロータスは97年に進出。浦東店、虹橋店など超繁盛店を営業している。また02年には上海屈指のSCであるスーパーブランドモール(正大広場)も開業した。投資4.5億ドル、延べ床24万u、核店舗は同グループの正大百貨とロータス(2層型のハイパーマーケット)である。
台湾の頂新グループも楽購(店名ハイモール)を経営。昨年、これをテスコが買収した。
ウォルマートは今年上海に進出する計画である。同社は米国同様、地方を重点的出店エリアとしており、都市を積極的に攻めているカルフールと対照的であるが、いよいよ上海において激突する。
以上は総合小売業であるが、HCのB&Q(英国のキングフィッシャー)、OBI(ドイツのテンゲルマン)やホームファニシングのイケアなども進出している。
対抗する国内資本
これらの外資系に対し、中国の国内企業は国営企業であったため、また民営化して日も浅かったため、市場の変化に対応できず、後手に回った。
そんな中にあって、国内最大手の聯華超市は91年に第一号のSM「曲陽店」を出店。その後、カルフールなど外資との合弁によりノウハウを吸収し、2002年には売上高183億元(前年比30%増)、1921店(前年比57%増)と急成長を遂げた。
更に03年4月、聯華超市の親会社である上海友誼集団のほか、華聯集団、上海一百集団、上海物資集団の4社が合併し、企業集団「上海百聯集団」として発足した。4社の売上高はこの時点で合計約810億元(約1兆2000億円)に上っている。
今年4月には、聯華のSSM港匯店をイズミヤが商品調達や店舗運営のノウハウを持ち込む形で改装する計画が進んでいる。(1)
出遅れた日本の小売業
積極的な欧米やアジア諸国の小売業に比べ、日本企業の中国進出は後れをとっている。
香港で成功し、中国本土進出の先陣を切ったヤオハンは倒産し、合弁相手の上海第一百貨店が「上海第一ヤオハン」として引き続き経営に当たっている。03年には売上高は16億元、営業利益は8,100万元と好調に推移している。(2)
90年代に上海市場に参入した西友、イオン、ニコニコ堂は早々に撤退した。ユニクロも当初の多店舗展開を大幅に下方修正している。
百貨店では、伊勢丹が中型店を2店舗経営しているのみである。
本格化するCVS競争
上海は人口密度が高くまた若年層が多いので、CVSにとっては魅力的なマーケットである。この業態は日系が攻勢をかけている。
96年に進出したローソンは現在200店舗を展開しているが、今後直営からFC店に切り替え出店を加速し、2010年に上海に1,000店、周辺都市に1,000店を目指している。
ファミリーマートは04年に進出、08年には上海、北京、広州などで2,000店の出店を目論んでいる。セブン−イレブンは現在は北京市内のみの展開であるが、将来的には当然進出も予想される。
市内には好徳、可的、快客、良友便利などのチェーンがあるが、その多くは、狭い、暗い、汚い、品揃え・接客が悪いと、日系の店舗に比べると明らかに格差があり、顧客本位に転換を図らない限り、早晩淘汰されていくことが予測される。
これからの上海市場において
以上みてきたように上海の小売業は、@外資の進出、A国内資本の各種対抗策、B日系企業の不振、といった構図にあるが、ここにきてGDPが伸長し、日系CVSの発展、ファッションブランドの専門店を中心としたSCや百貨店の開業、日本ブランドの人気などの背景を受け、大きな転機を迎えているといえよう。
中国は今、日本の70年代から80年代にかけての店舗の急速な大型化と、90年代における規制緩和が一気に訪れている。日本ではその後バブルの崩壊に伴い、上位企業の倒産や専門店化の加速など、既存の流通秩序が一変したが、中国・上海においても同様の現象が予測される。
日本企業はここ半世紀、そのような歴史的変遷を体験している。また、第一次上海進出に失敗したことを他山の石とすることができれば、「地の利」を生かし、新たなチャンスを掴めるといえよう。 (清水正博)
[出典]
(1)サンケイ新聞2005年2月5日
(2)チェーンストアエイジ2004年4月1日