★阿修羅♪ > 国家破産42 > 768.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
10月13日(ブルームバーグ):米国の国際収支が、危険な「転換点」に近づいている可能性がある。
2004年末時点で、海外から米国への投資は、米国から海外への投資を2兆5000億ドル(約290兆円)上回った。つまり、投資収支は米国側の入超だった。にもかかわらず、米国勢による海外投資の収益は、海外勢による米投資を300億ドル上回った。つまり、米国の投資収益は黒字だった。
米国の投資収支の不均衡は、財政収支の不均衡(赤字)とは異なり、利払い負担を高めることはなかったわけだ。
その状況が、今年になって変わった。米国の投資収益は第2四半期(4−6月)、4億5500万ドルの赤字に転じた。この傾向は続く公算が大きいが、そうなれば米国が海外に支払う額は着実に増加し、経常赤字をさらに拡大させることになる。
最近発表されたピエールオリビエ・グランシャス氏(カリフォルニア大学バークリー校)とエレーヌ・レイ氏(プリンストン大学)の研究論文によると、この状況は米国にとって重大な結果をもたらす可能性がある。
両氏は、「米国の投資収益が第2次世界大戦後初めて赤字に転じる『転換点』を迎えることは、ドルへの信認に対する大きな打撃とみなされるだろう」と書いている。両氏によると、過去半世紀にわたって米国勢による海外投資は海外勢による米国投資よりも多くを稼いできた。つまり、米国の投資収益はプラスだった。
米国が今まで、経常収支の赤字を海外からの投資によって埋めることができたのは、米ドルが世界の主な準備通貨であり基軸通貨だったからだ。
法外な特権
8月に全米経済研究所(NBER)によって発行された両氏の論文の題は「世界の銀行から世界のベンチャーキャピタルへ:米国の対外調整と法外な特権」。
「法外な特権」という言葉は、当時フランス財務相だったジスカールデスタン元仏大統領が1965年に使用した。この言葉は「最終的にはドルを発行することによって」海外投資を賄うことができる米国の能力を指したものだったと論文の筆者らは指摘する。「海外の中央銀行が、ときには不本意ながら」基軸通貨であるドルを保有していたからだ。
しかしながら、ドルが世界の基軸通貨であるからといって、米国の経常赤字が永久に支えられるとは限らない。「転換点」が訪れ、ドルの信認が揺らいだらどうなるのか。
激しい反動
「海外の貸し手は、ドル資産からユーロなど他通貨の資産に乗り換えるかもしれない。あるいは、その安全性がもはや保証されなくなった米国の資産について、相応のリスクプレミアム(リスクに見合った投資収益)を求めるかもしれない。いずれの場合にも、ドル下落、米国内の金利上昇、世界的リセッション(景気後退)など、相当に激しい反動をもたらすだろう」と両氏は警告する。
「現在の世界で、米国は国際通貨であるドルを自由に発行し、海外の資産に投資することができる。しかしそこには、ドルへの信認が失われるリスクが存在している」と両氏は指摘する。
信認が失われれば、ドルは暴落しかねない。その後には世界的な金融危機が待っている可能性もある。そうなれば、米国もついに、分不相応にぜいたくな消費をやめざるを得なくなるかもしれない。
(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:U.S. Investment Income Close to `Tipping Point': John M. Berry (抜粋) {NXTW NSN IOA5WV07SXKX 更新日時 : 2005/10/13 15:11 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html