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今や世界は大混乱に向かっている
ペンタゴンレポートの衝撃
田島五郎
http://www.bund.org/opinion/20051005-2.htm
日本で拡大する貧富格差
世界第2位の経済大国日本。現在日本は、かつてないほどの物質的豊かさを享受しているが、豊かさの配分には不平等が広がっている。経済協力開発機構(OECD)が、今年2月にまとめた所得分配と貧困に関する調査によると、日本の貧困率は15・3%で10年前の約2倍に増加している。「貧困率」は、国民の所得中央値の半分以下しか所得のない人の割合を示す。貧困率の最高はメキシコの20・3%で、ついでアメリカが17%、トルコ、アイルランドと続き、日本は第5位なのである。「一億総中流社会」などといわれたのは遠い昔の話、今では貧富の格差が急速に拡大しているのだ。
アメリカは世界一のGDP大国でありながら、貧困率は世界第2位と国内格差が大きいことで知られる。映画『華氏911』では、高失業率の影響で廃墟のようになった町が描かれ、貧困層が生活や進学のために軍隊に入隊し戦場に送り込まれていた。そうしたアメリカ社会のゆがみの告発がマイケル・ムーアがテーマとしたことだ。そしていまや日本の貧困率は、そのアメリカとほとんど差がなくなってしまった。10年間で貧困率が倍増した日本の現状を考えれば、近い将来アメリカよりも貧困率が高くなる可能性も否定できない。
格差が拡大している要因のひとつには、派遣社員やフリーター、パートタイマーなど非正規社員として働く人の増大があげられる。この5年間で、正規社員としての雇用が400万人減る一方で、非正規で働く労働者が368万人も増えたのである。
厚生労働省による「2003年就業形態の多様化に関する実態調査」によれば、従業員5人以上の事業所における非正規社員の割合は35%にのぼる。正規社員との賃金格差は男性で100対49、女性で100対65だ。30歳以下のフリーターの場合、同年齢の正規社員の4分の1しか年収を得ていないという調査もある。
非正規社員の雇用は不安定で、正規社員への道も閉ざされ、社会保障制度からも排除されている場合が多い。通学や職探しをしていないニートは85万人に達する。生活保護世帯は95年以降増加に転じ、現在100万世帯が保護を受ける。3万人がホームレスになり、自殺者は年間3万4千人と世界一の自殺率である。
リストラで企業は業績を回復し、日本経済も不況を脱しつつあるといわれるが、その裏では多くの労働者が不安定な状況におかれ、経済格差が拡大しているのが現実だ。いつ自分も「負け組」になるかもしれない、そんな不安が社会を覆い始めている。
なおかつ「自分が幸せだ」と感じている人の割合は、日本はベトナムやフィリピンよりも低く、世界で29番目だという(2000年「世界価値観調査」)。世界第2位のGDPを誇りながら、幸せを感じられない社会にもなっているのだ。
GDPだけでは真の豊かさを測れないという視点から、さまざまな指標で国際比較が試みられている。そのひとつに「真の進歩指標」(GPI)がある。GPIは、GDPから環境破壊や犯罪などのマイナス要因となる費用を差し引き、家事労働やボランティア活動など社会的プラスの要因をGDPに加算することによって示される。より生活実感に近い指標をめざして作られたものだ。
先進12か国での試算によると、いずれの国もGDPは右肩上がりで伸びているのに、GPIは横ばいか逓減傾向だ。アメリカでは1969年、オランダ、スウェーデンで79年、ドイツでは80年がGPIのピークで、以後はGDPの増加にも関わらずGPIの増加は見られない。
日本では、80年代半ばから2000年に1人当たりGDPは約1・5倍に増えたが、GPIは横ばいだ。先進国では、これ以上どれだけGDPが増えたとしても、GPIの増加にはつながらないということだろう。
現代の日本人は「どの時代の貴族よりも豪勢な食事をしている」(05年3月6日『朝日新聞』)ともいわれる。たくさん栄養をとっているから、さぞかし健康になっているのか。決してそうではない。文部科学省による子どもの健康調査では、子どもたちの健康状態が一番よかったのは1970年代であったという。今は食事が贅沢になりすぎて、小児肥満や小児成人病などが増え、アレルギーやアトピーも増加し、子どもたちの健康状態は昔よりも悪くなってしまっているのだ。
労働科学研究所は、収入の増加が生活レベルを向上させるのはある一定限度までで、それ以上の所得の増加は、健康状態や文化的生活の向上には結びつかないと指摘している。つまり健康を保持し、幸せを実感するのに必要な経済発展は、日本では20〜30年前にピークを迎えてしまったのである。
米国防総省秘密レポート
米国防総省(ペンタゴン)は、03年秋に地球温暖化の影響について秘密レポートをまとめたが、その内容は衝撃的だ(2004年、英国オブザーバー紙にすっぱ抜かれた。本紙1140号/2004年4月5日号に既報)。2010年代に欧州で干ばつと寒冷化が起こり、環境難民となった人々が大移動を始め、2025年にはEUが崩壊するというのだ。
温暖化にもかかわらず寒冷化が起きるとされるのは、暖流の流れが変化すると考えられるためだ。欧州周辺を流れる暖流は、赤道付近で温められて北上し、北極海周辺で冷やされて海底に沈み込む。それが冷たい深層海流となって赤道付近に戻っていく。
海流はベルトコンベヤーのように地球規模で循環しているのだが、温暖化はこの流れをも変えてしまう。北極海の氷は、すでに40%が温暖化の影響で溶けてしまったが、レポートではあと10年くらいで完全に溶けてなくなると予測している。加えて温暖化の影響で北極海周辺に雨がたくさん降るようになるため、北極海の塩分濃度が急速に低下する。塩分濃度の低下は、暖流を海底に沈み込ませる力を弱め、その結果暖流の流れが大きく変化し、欧州周辺を流れなくなってしまうというのだ。
現在、イギリスなど西欧諸国は、シベリアのような同緯度の地域と比べて温暖な気候だが、それはこの暖流が流れているおかげだ。暖流が流れ込まなくなれば、ヨーロッパはシベリア並みに寒冷化する。人々は極寒の地を逃れ民族大移動を開始し、食糧と水の供給をめぐって争いが起こり、EUが崩壊するということなのである。
同レポートではアジアでは干ばつや砂漠化が発生し、水や食料、エネルギーの不足が2020年頃に深刻化するという。そのため飢餓と暴動がおこり、欠乏する資源をめぐって核の脅威を振りかざした戦争が始まり、世界は無政府状態に陥るとシミュレーションしているのだ。
レポートをまとめた専門家は、地球温暖化はテロよりも脅威であるとして、「地球の人口はすでに地球が養える人口を大きく上回っており、2020年には水とエネルギー不足が決定的に解決困難なレベルに達する」「危機は、5年後か50年後か100年後か、いつ起こるかわからないが、いつ起こっても不思議ではない」と警告している。
ペンタゴンレポートは、起こりうる極端なケースを想定したものだ。だから、必ずしも予測どおりに進行するとは限らないことはつけ加えておくべきだろう。しかもレポートの核心は、難民が押し寄せ、世界中が無政府状態になった時でも、アメリカは国境線を防衛し、戦争に勝利しきるとなっている。レポート自体にある種のバイアスがかかっていることは否定できない。
だが、そうであったとしても、今や米国防総省がこのようなレポートを発表する時代になっているのは知っておくべきだろう。
もうすぐ食糧不足が深刻化する
現代文明を支えてきた石油の生産量は、すでにピークを過ぎた。水不足も深刻化し、食糧増産にも限界が見えてきた。日本は、石油だけでなく、食糧もその多くを輸入に頼っている。食糧自給率は先進国で最低の40%だ。そのため日本のフードマイレージ(食糧の輸送量に運搬距離を掛け合わせた数値)は世界最大。1人当たりのフードマイレージはアメリカの7倍、フランスの4倍にのぼる。しかも食糧の4分の1を食べ残しており、その額は政府試算で11兆円に達する。まさに「どの時代の貴族よりも豪勢な食事」をしているのだ。
だが、このような贅沢がいつまでも続けられるわけではない。食糧の生産には大量の水が必要だ。小麦1キロ収穫するのに水2トン、牛肉なら1キロあたり20トンの水が使われる。輸入される農畜産物をすべて日本で生産したとすると、年間630億トンの水が必要になり、国内の農業用水使用量(590億トン)を上回る。
この食糧生産に欠かせない水が、今、世界各地の穀倉地帯で地下水位低下や塩害による影響を受け始めている。アメリカ中西部に広がる大穀倉地帯を支えている、オガララ帯水層の地下水位低下は有名だ。オガララ帯水層は世界最大の地下水脈で、日本列島の7〜8倍もの面積を有する。アメリカではここで大量の水を汲み上げ、灌漑農業が行われているのだ。オガララ帯水層は氷河期に蓄えられた化石帯水層のため、外から水が補給されることはない。汲み上げた分だけ水位は低下する。石油と同様、汲みつくしてしまえば枯れてしまうのである。すでに4分の1が使用されたといわれ、あと50年で枯渇すると予測されている。枯れた井戸も出始めており、その地域は砂漠化の危機に瀕している。
過剰揚水による地下水の減少や塩害は、アメリカばかりでなく、中国の華北平原や北アフリカやインドなど、世界各地の穀倉地帯で起きている。
温暖化によると見られる異常気象によっても水不足が発生している。今年の夏はフランスやスペインなど欧州西部で水不足が深刻化し、フランスでは「過去50年以上で例のない干ばつ」だとして灌漑が禁止された。
知ってのとおり現代農業は大量の石油消費に依存している。ほとんど世界中で1970年代に「緑の革命」などと称して伝統的農業は破壊された。大量の水と化学肥料に依存する農業形態に変化したのだ。その結果、水や石油が不足すればただちに食糧価格の上昇、食糧不足に直結する。
人間が生きるために必要な自然資源量を土地面積に換算して表す「エコロジカル・フットプリント」という考え方がある。それによると1975年頃までは、なんとか世界人口(当時40億人)を養えるだけの土地が地球上に存在していた。それ以降エコロジカル・フットプリントは地球の生産能力を上回るようになり、現在では地球1・2個分を使っている計算になる。世界の人がアメリカ並みの生活をするためには5・3個の地球が必要で、日本のような生活をするにも2・4個の地球が必要なのである。
つまり自然の制約上、世界中の人がアメリカや日本のような生活をおくることはできないということだ。それを無理に続けようとすれば、世界の貧富の格差はさらに拡大し、一握りの富裕層だけが豪華に暮らし、それ以外の大多数は貧困化する。そんな社会は決して平和と安定をもたらさないことは、すでに歴史が実証している。
エコロジカル・フットプリント
人間の幸福感や満足度、そして地球のキャパシティを考えると、30年くらい前の生活水準に戻ることが、持続可能な社会に向けたひとつの選択肢だ。1975年頃の生活である。それならばエコロジカル・フットプリントも地球1個分でまかなえ、日本では子どもたちの健康状態が最もよかった。先進国のGPIはこの30年間ほとんど変わっていないのだ。
幸せに生きることを目的とするのならば、もうこれ以上の経済発展は必要ないということなのだ。このまま経済発展を追求すれば、さらに「勝ち組」と「負け組」の経済格差を拡大させる。ますます不安な社会になる以外ないのだ。地球温暖化や資源不足は加速し、持続可能性はどんどん失われていく。
愛・地球博では、昭和30年代の日本家屋を再現した「サツキとメイの家」が人気を集めた。少し前の生活の方が人間の感覚にフィットしているのだ。内閣府による「国民生活に関する世論調査」では、「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」を求める人が急増している。02年度には「心の豊かさ」を求める国民の割合は6割に達している。
日本では農業従事者の高齢化が目立ち、「食料・農業・農村白書(平成12年度)」によると、65歳以上の高齢者が51・2%を占めている。欧州諸国の高齢者の割合は、フランスで3・9%、イギリスで7・8%である。むしろ35歳未満の割合が、フランスで28・2%、イギリスで31・7%と、若年層が農業に従事している。日本では同年齢の割合は2・9%にすぎず、きわめて危機的な年齢分布となっている。このままでは日本の農業そのものが崩壊してしまうだろう。
さいわい日本にはたくさんの山林が残っている。きちんとした管理を行えば貴重な水を循環利用することができる。豊かな水を活かし、日本の風土に適した農業を再生していくことが必要なのだ。それは食糧自給率を高めるだけでなく、中山間地の農林業を活性化させ、水循環を育み、地球温暖化の防止にもつながる。
そのようにわかっていても一度味わった贅沢や、都会暮らしの快適さを人はなかなか捨てられないでいる。そこに環境問題の解決困難性がある。
今回の総選挙でも、経済改革ばかりが話題に上り、持続可能な社会に向けた大局的な議論はまったくといっていいほど聞かれなかった。国連のミレニアム生態系アセスメントでも、2050年には人間の生活自体が立ち行かなくなると警告している。そういったあらゆる警告をすべて無視して、郵政改革だけをわめきちらす小泉首相とその翼賛国会議員たちは、人間の愚かさを体現していないか。
(エコアクション名古屋)
http://www.bund.org/opinion/20051005-2.htm