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世界石油争奪戦が始まった
1バレル(159L)=100ドル時代がやってくる
http://www.bund.org/editorial/20051015-1.htm
国際原油価格の高騰に伴い、日本の灯油価格は13週連続で値上がりし、10月から電気料金や都市ガス料金も一斉に値上げされる。市民生活への影響は絶大だ。南米の産油国ベネズエラのチャベス大統領は9月15日、向こう2年間で1バレル=100ドルまで原油価格が上昇を続ける可能性を示した。そうなれば、石油に依存した産業構造が一挙的に崩壊しかねない。破局にいたる前に石油依存型社会からの脱却を急ぐべきだ。
石油戦略備蓄を緊急放出
原油の高騰は、イラク戦争、中国・インドの需要増、ハリケーンの影響など様々な要因があげられる。だが、それだけではない。
グランワークショップ2005冬(主催・同実行委)で講演する石油問題の専門家・石井吉徳(東大名誉教授)氏は、現在の原油高騰は世界の石油生産がピークを超えたことの当然の帰結だと指摘している。世界の石油発見量はすでに1964年にピークを超え、生産量も2004年にはピークを超えたというのだ。こうしたピークオイル論が今、欧米では石油専門家やエコノミストの間で大問題になっている。
9月29日開催されたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)では、原油高騰が世界経済に深刻な影響を与えかねないという問題が改めて議題に上った。G7では、産油国の供給力拡大を主張する米国と、先進国が率先して消費抑制に努めるべきだとするEU諸国が対立。当初予定されていた原油高への「特別声明」は見送られた。最終的な共同声明では、産油国に対し持続的な供給増を要請する一方で、原油生産・精製能力への大幅投資と技術革新の必要が強調された。
だが、石油を増産するといっても、油田のバルブを開けば原油が噴き出してくる時代ではない。残り少なくなった原油を汲みだすためには、海水を注入したり、井戸を横に掘ったりする必要がある。それには膨大なコストがかかる。
またG7のいう原油精製技術の向上というのは、オイルサンドなどの重質原油の精製方法の改良・強化のことだ。従来、石油化学製品やガソリンなどの生産には、それに適した軽質原油が利用され、重質原油は重油やアスファルトなどの生産に使われてきた。それを精製技術のイノベーション(技術革新)によって、地球上に大量に存在する重質原油から、石油化学製品やガソリンなどを精製しようというのだ。
だが重質原油は、揮発成分を失った石油が粘着性を増して砂に含まれたもので、原油のような液体ではない。重油の含まれた砂を処理して油分を抽出するのに、かなりのエネルギーが必要となる。EPR(エネルギー利益率)で考えると、とても有望なエネルギー資源とはいえない。揮発オイルの副産物としてならば割安だが、とうてい軽質重油の代替え品にはなり得ないのである。
石油減耗の21世紀、いくら石油生産・精製への投資を増大して技術革新を進めても、「安くて豊かな石油の時代」はかえってこない。むしろ石油生産や精製に投資すればするほど、原油価格はさらに上昇する。石油エネルギーにしがみつくために膨大な投資を続けるのではなく、脱石油・持続可能な社会への転換に向けた投資をこそ行うべきだ。
結局、G7は、石油戦略備蓄の放出という湾岸戦争以来の非常手段以外、実効性のある方策を打ち出すことができなかった。規模は日量200万バレル相当で、期間は米南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」による供給途絶が回復するまでとされた。日本は全体の約12%を分担し、米国に次ぐ放出を行う。これにより、原油高騰は一端収束し、かろうじて横ばいへと転じた。しかし、いつまで持続できるのか。北半球が冬になれば、その需要に応えられる保証はどこにもない。
石油輸入国に転落したインドネシア
一方、石油輸出国機構(OPEC)は、9月20日の定例総会で原油生産枠を現行の日量2800万バレルに据え置くことで合意。同時に、石油消費国が求める増産については、必要に応じて日量200万バレルの余剰生産能力を、「10月1日から3か月間」という期限付きで活用する方針を示した。OPECは昨年7月に生産枠を日量200万バレル引き上げて以来、今年7月まで5回にわたって生産枠を引き上げている。すでにOPECの生産能力自体が上限に近づいており、増産余地が乏しいというのが石油業界の支配的な見方だ。
OPECは、世界の石油確認埋蔵量の4分の3、石油産油量の約4割を占める。OPECは、原油相場を安定させるため、各国の産油量を政策的に調整する役割を担ってきた。だが、石油減耗という現実のなかで、OPECは石油価格調整機能を失いつつある。
OPEC加盟国インドネシアの石油純輸入国への転落という衝撃的な事態も起きている。東南アジア最大の産油国インドネシアは、最近の原油価格高騰で潤うどころか、逆に、そのあおりを受けて苦境に立たされている。
スハルト政権末期の1998年当時、インドネシアの石油生産量は1日当たり160万バレルだった。ところがその後、油田開発の停滞、生産量の減退から、最近では100万バレルを割り込み、今年7月の産油量は97万バレルにまで落ち込んでいる。一方、ガソリンはじめ石油消費量は経済の拡大に伴って急増。国営石油会社のプルタミナは国内生産減少分を輸入で補い、インドネシア政府はプルタミナに対して輸入補助金を支給してきた。
この補助金は05年予算で1バレル当たり45ドルの想定価格を設定していた。ところが、最近の原油価格高騰で補助金が急膨張。財政支出の急増に見舞われたインドネシア政府は、補助金の撤廃を打ち出す一方、石油燃料の値上げを実施。9月30日、3月の30%値上げに続いて石油価格を大幅に引き上げることを発表した。
その結果、ガソリンの公定価格は2倍の1リットル=4500ルピア(0・44米ドル)。家庭用の灯油はおよそ3倍増の1リットル=2000ルピアとなった。これほどの一挙的な値上げが市民生活ばかりでなく、産業構造に決定的なダメージを与えるのは必至だ。
首都ジャカルタでは、2日間にわたり、値上げに反対する抗議行動が続き、暴動的事態に至り、警官隊との衝突が頻発した。こうした混乱の中で、10月3日のバリ島での爆弾テロ事件もおきている。インドネシアの今は、石油減耗の世界の未来となりかねない。
首都ワシントンで15万人がデモ
アメリカ国内では、石油のためのイラク戦争に反対し、駐留米軍の即時撤退を求める運動が広がっている。9月24日、全米から集まった15万人がホワイトハウス周辺など首都ワシントン中心部をデモ行進。イラク開戦以降、首都での反戦デモとしては最大規模だ。
いまだに14万人の米軍が展開するイラクでは、米軍の死者は2000人に達しようとしている。デモには、息子をイラクで失い、ブッシュの牧場の前で座り込みを行って反戦運動のシンボル的存在となったシンディー・シーハンさんらも合流。シーハンさんは、ホワイトハウス付近で「あと何人の子供を(イラクの戦闘で)犠牲にしたいのか」とその思いを訴えた。警官隊は、シーハンさんを「指示に従わない」と拘束したのをはじめ、2日間で270人を不当逮捕した。
反戦気運の高まりにブッシュ大統領は「後一押しで勝利がくる」とテレビ演説を行ったが、多くの米国民が、ブッシュの軍事的冒険に未来がないことを気づき始めている。
こうしたブッシュ政権に付き従うことでしか日本の進路を示すことができないのが、ほかならぬ小泉政権だ。10月中にも郵政民営化法案は可決される見通しだが、米側の要望に応じて、郵貯・簡保の350兆円もの資産を、米系外資および米国政府に売り渡す「亡国の選択」こそ、この法案の意味するところだ。石油依存文化のアメリカから離れ、自然エネルギーに依拠した持続可能な社会への転換を真剣におしすすめるべき時が来ている。大量生産・大量消費の時代は終わったのだ。12・11グランワークショップに集い、日本の未来について論じ合おう。
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Information
グラン・ワークショップ 2005 WINTER
戦後60年この先日本はどうなる
■オープニングライブ PANTA(頭脳警察)
■沖縄からの報告 辺野古で続く反基地の闘い 仲宗根盛秀さん
■ユーゴ劣化ウラン弾被害調査 谷沢健二(STOP!劣化ウラン弾キャンペーン)
■講演 高くて乏しい石油時代がやってくる 石井吉徳さん
東京大学名誉教授。元国立環境研究所所長。富山国際大学教授。著書に『地殻の物理工学』『エネルギーと地球環境問題』『国民のための環境学』『豊かな石油時代が終わる-人類は何処へ行くのか』など。
■バトル・トーク:司会 荒岱介 今の日本に私はこう言いたい
西部邁さん
東京大学教授を経て、評論家。保守思想家として活躍中。東大在学中は自治委員長をつとめる。著書に『無念の戦後史』『大衆への反逆』『幻像の保守へ』など。
二木啓孝さん
「日刊ゲンダイ」編集局ニュース編集部部長。全共闘世代の代弁者。著書に『手に取るように政治が分かる本』『永田町の通信簿』『殺人心理』『宗男の言い分』など。
田原牧さん
東京新聞特報部記者。元カイロ特派員。中東問題に詳しい。同志社大学一神教学際研究センター客員フェロー。著書に『イスラーム最前線』『ネオコンとは何か』など。
荒岱介さん
グラン・ワークショップ実行委。出版社を経営。早大時代は第二次ブント社学同委員長。著書に『環境革命の世紀へ』『破天荒伝』『大逆のゲリラ』など。 12月11日(日) 開会:13時 開場:12時30分 場所:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11階) 入場カンパ:1500円(前売り1300円) グラン・ワークショップ実行委員会
(2005年10月15日発行 『SENKI』 1192号1面から)
http://www.bund.org/editorial/20051015-1.htm