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第1部ブームを越えて(1)潤う湾岸、投資の主役(沸騰中東マネー)
株や不動産、地球規模
歴史的な原油高を背景に、中東のオイルマネーが世界での存在感を急速に高めている。域内の株式や不動産投資だけでなく、日本の株式市場や欧米、新興国にも流入し、世界を動かす要因になり始めた。第一部では中東マネーの行く先や影響力を追う。(中東マネー取材班)=オイルマネーは2面「ミニ辞典」参照
中東で野村アセットマネジメントの隠れたヒット商品がある。運用する中国株ファンドを七月にサウジアラビアの有力金融機関サンバ・フィナンシャル・グループに販売委託したところ、一カ月余りで約三百億円も売れた。「しかも一カ所にどかっとではなく、幅広い投資家が買った」と野村の担当者は驚く。
中東マネーが域内や主要市場はもとより、アジアなど新興市場にもあふれ始めた。「投資はブームを通り越して新段階に入った」(米誌)。政府から民間への公共工事代の支払い滞りが原油高で解消され、民間企業の投資を後押しする。
クウェートで今話題の新しい投資会社がある。中国などアジア企業に約三億ドルを投じる専門会社クウェート・チャイナ・インベストメント・カンパニー。地元投資会社などが設立し、個人向けに会社の株式を売り出した。「中国は間違いなく有望市場だが、個別株はまだ不安。これならばリスクが軽減される」。地元食品会社マネジャーのファイサル・アルバデルさんは投資に前向きだ。
アラブ首長国連邦(UAE)を構成するドバイ首長国の有力デベロッパー、エマールは約四十億ドルかけて中東、北アフリカ、インド、パキスタンなど百カ所で高級商業施設を建設・運営する。
同じイスラム教国のパキスタンには投資案件が目白押しだ。サウジのアルトワイルキ・グループのトワイルキ会長は八月、民営化が進む旧国営鉄鋼会社への投資を表明。UAEの大手電話会社エティサラートはパキスタンテレコム株の二六%を約二十六億ドルで落札し、同国史上最大の単独案件の投資額となった。
「直接投資は欧米諸国や在外パキスタン人よりアラブ諸国の方が多い」と民間有力シンクタンク、パキスタン政策研究所のフルシード・アフマド会長は指摘する。
「分散投資は中東では政府・民間に共通する基本姿勢」(クウェートの石油アナリスト、カメル・ハラミ氏)。アジアへの投資拡大の一方で、日欧米諸国への投資も衰えていない。
ニューヨークの名門ホテル、エセックス・ハウス買収を今月上旬発表したドバイ政府系企業ドバイホールディング。米コンサルティング会社のオクスフォード・ロッジングを指南役に、サンフランシスコの有名ホテル、サー・フランシス・ドレーク買収や米各地のマンション投資も進める。
今夏、通信業界を驚かせたエジプトの携帯電話会社オラスコム・テレコムのサウィリス会長によるイタリアの携帯電話会社ウインド買収。総額は百二十億ユーロ。同会長が組成した投資会社にはサウジアラビア、クウェート、イラクなど主要産油国の企業や投資家も名を連ねている。
活況が続く東京株式市場でも「オイルマネー流入」観測は根強い。二十八日は後場に欧州の投資家から大口の買いが入り、造船や重機、鉄鋼株の上昇に弾みがついた。「背後にあるのは産油国の資金」との見方は多い。ある運用担当者は「現在は主に政府系の資金で、王族系マネーはまだ入っていない」と明かす。
原油収入2000億ドル増
運用も高度化
中東マネーの源泉は原油価格の高騰による収入増だ。湾岸産油六カ国の二〇〇五年の原油輸出収入は三千億ドルと、日本の一般会計税収の八割に達する見通し。〇三年までの年平均一千億ドル以下に比べ、年二千億ドルも所得が増えた。
サウジ通貨庁などは外貨資産を米国債などで運用しているとみられる。米同時テロ以降、米政府による資産凍結などを懸念し減少傾向だった中東産油国の米証券の購入は、昨年から買い越しに転じた。米財務省によると英国とカリブ地域の六月末の米国債保有額が昨年末比七百九十億ドル増。「相当額が英金融街シティや租税回避国のヘッジファンドを経由して流れ込んでいる」とされる。
投資対象は多様化・広域化している。クウェート投資筋によると同国政府が海外運用する公的資金約千八百億ドルは、同時テロ前に米国が六五%前後を占めていたが、現在は五〇%前後に低下。半面、アジア投資が二割を超え、日本投資も一〇%弱に伸びたようだ。
個人の投資も同様だ。米コンサルティング会社キャップジェミニによると、中東の富裕層(金融資産百万ドル以上)の〇四年の資産は一兆ドルと前年比二九%増。世界平均(八%)を上回る。一方、富裕層人口は約三十万人と一〇%増にとどまり、一人当たりの資産の伸びが大きい。ヘッジファンドや商品ファンドなど代替投資が多いのが特徴。資産の二七%と世界平均(一四%)の二倍に上り、機関投資家に近い高度な手法を駆使する投資家が増えている。
中東詣で各国競う
今年二月、シンガポールのゴー・チョクトン上級相兼金融通貨庁長官はサウジアラビアで砂漠のテントを訪れた。テントの主は世界有数の投資家ワリード・ビンタラール王子。二人はアラブ式にほおにキスをした後、底冷えする夜の砂漠で車座になり、ラクダの丸焼きを食べて親交を深めた。
シンガポールは最近、中東マネーをアジアにつなごうと活発に動いている。その仕掛け人がゴー上級相。昨年八月の首相退任時に「今後は中東との交流強化を担当したい」と宣言、すでに十カ国以上を訪問した。同国政府系で東南アジア最大の不動産会社キャピタランドが五月、バーレーンの投資銀行アルキャピタ銀行と共同で日本の賃貸マンションへの投資会社を日本に設立するなど、成果も出始めた。
四月、中国政府の肝いりでスタートした投資基金「海湾(ガルフ)・中国基金」。中東の投資家からも出資を募り、資産は当初二億ドル。香港の投資会社と中東の証券会社が共同運営し、両地域のホテルや道路などインフラ整備に投資する。
きっかけは胡錦濤国家主席が昨年一月の中東歴訪で関係強化を打ち出したこと。中東からの対中直接投資額は約一億ドルと五年前に比べ五倍に増えており、今後さらに資金を呼び込むパイプと期待されている。
新興国の債券で運用する英アッシュモアの幹部も「米国債からの資産分散ニーズが強い」と、年数回の中東訪問を欠かさない。
=次回から国際面に掲載します。
【表】中東諸国の最近の域外投資(計画含む)
投資主体 投資先 金額
ドバイホールディング(アラブ首長国連邦のドバイ首長国政府系投資会社) 米名門ホテルのエセックス・ハウスを取得 公表せず5000万ドルで全面改装
英タッソー・グループ買収 約14億6000万ドル
独ダイムラークライスラー株2%取得、第3位株主に 約10億ドル
ムバダラ・デベロップメント(アブダビ首長国政府系投資会社) 伊フェラーリ株5%取得 約1億4000万ドル
タイブ銀行(バーレーン) 英不動産運用会社と共同でロンドンでオフィスビル購入 2億5000万ドル
ウエザー(エジプトの携帯電話最大手オラスコム・テレコム経営者らが出資) 伊電力公社傘下の携帯電話会社ウインド株の62.7%取得 約29億ユーロ(債務肩代わり分などを含めて120億ユーロ)
アブダビグループ(アブダビの王族系投資会社) バングラディシュの通信、インフラ観光、医薬品などで投資覚書 約10億ドル
アルグレア・グループ(ドバイ) パキスタンで商業施設、宅地開発、発電所建設など 20億ドル
エマール(ドバイ) インド、パキスタンなどで商業施設 中東諸国も含めて総額40億ドル
キングダム・ホールディング・カンパニー(サウジアラビア、ワリード・ビンタラール王子傘下) ガーナの高級ホテル買収 不明8000万ドルで改装
英銀行と共同でアフリカ諸国企業に投資 2億ドル
【図・写真】ドバイの政府系企業はニューヨークの老舗ホテル、エセックス・ハウスを買収した=AP