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http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kaigai/news/20051002k0000m020080000c.html
低インフレ下の成長を続けてきた世界経済に、再びインフレがしのび寄ってきている。原油高の長期化で消費財にも値上げの波が及んできたためだ。「物価は上がり続ける」との見通しもじわりと広がり、消費活動にも影響が及ぶ兆しが出ている。低インフレのおかげで低金利を維持し、景気浮揚に専念できた主要国の中央銀行のかじ取りは、難しくなりそうだ。
米国内のインフレ圧力の高まりを最も警戒しているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)である。ハリケーン被害を受け、「利上げ休止」の観測もあったが、FRBは9月20日、「景気減速は短期的」と判断し、11回連続の利上げに踏み切った。
実際、ニューヨーク市場では、インフレ先行指標であるCRB商品指数(原油や貴金属、穀物などで構成)が、ハリケーン直後の8月末に25年ぶりの高値をつけた。
8月の米消費者物価指数も、前年同月比3.6%上昇と4年3カ月ぶりの高い伸びを示し、原油高が消費者レベルに波及しつつあることを示した。変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数が、まだ同2.1%増なので、FRBは今のところ、「比較的落ち着いた動き」との認識だ。だが、バンク・オブ・アメリカのリン・レイザー氏は「企業がコスト上昇を価格に転嫁する動きが広がり、コア指数も上昇圧力が強まる」と指摘。「FRBは利上げを続けざるを得ない」と予測する。
利上げは、経済活動を抑制する働きがあり、人件費の安いアジア企業の攻勢を背景に原油高を価格転嫁できない企業には、ダブルパンチとなる。利下げで景気を下支えしたくても、物価高で下げられないという困難な状況にFRBが置かれる恐れがある。【ワシントン木村旬】
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欧州でも、にわかにインフレ懸念が台頭してきた。9月30日に発表された9月のユーロ圏の消費者物価指数の上昇率は前年同月比2.5%に上り、04年5月以来の高さだった。ユーロ圏最大のドイツの同上昇率も2.4%と、01年6月以来の水準だった。原油高騰と衣料品・履物の値上げが主な要因だった。
問題は原油高を最終製品に上乗せする動きがどこまで広がるかだ。欧州連合(EU)統計局が製造業対象に行った9月の調査では、販売価格を引き上げると回答した企業が、急増した。金価格も上昇し、17年ぶりの水準。また8月のユーロ圏の金融機関の民間向け与信は約9兆1900億ユーロ(約1255兆円)で、前年同月比8.5%増となり、01年5月以来の高い伸びとなった。インフレの“状況証拠”は次第に増えつつある。
こうした中、ルクセンブルク中銀のメルシュ総裁は、「原油高が、インフレと賃金を押し上げる可能性が出てきた」と警告を発した。総裁は同時に成長率の低下にも言及した。ユーロ圏経済の成長率は米国に比べて低く、欧州中銀(ECB)は、「景気かインフレ抑制か」の難しい選択を迫られそうだ。【ロンドン藤好陽太郎】
▽コメルツ銀行エコノミストのピーター・ディクソン氏の話 原油価格が高止まりし、市場でインフレ懸念が高まってきている。企業は原油高による追加コストを負担しているが、原油価格が今後急落するとは思えない。負担が限界に達し、製品への価格転嫁や賃金の引き上げに連鎖していけば、経済成長率も低下する可能性が高い。
これまでは、グローバル化の進行で中国などとの競争が激化した結果、企業は簡単にはコスト転嫁できなかった。労働者の賃上げ交渉も容易ではない。このため、原油高が経済全体に与える影響は限定的だった。
しかし、今後は要注意だ。製品への価格転嫁でインフレが進む可能性があるのと同時に景気も腰折れしかねないためだ。世界経済にとって難しい事態が続きそうで、金利を決める中央銀行の判断も難しくなる。【塚田健太】
毎日新聞 2005年10月1日 21時06分 (最終更新時間 10月1日 22時38分)