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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050917-00000012-san-int
独総選挙あす投開票 失業克服へ厳しい選択
復興進まぬ旧東独地域「痛み覚悟で一票」
ドイツ連邦議会(下院、基本定数五九八)選挙の投開票が十八日行われるが、一九九〇年の東西統一から十五年たった今も旧東独地域での復興は思うように進まず、国内には11%を超える失業者があふれている。有権者の多くは今、雇用情勢の行方に大きな関心を抱いている。(ベルリン 黒沢潤)
十日の世論調査によれば、シュレーダー首相の社会民主党(SPD)は、統一会派を組む野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に支持率レースで6ポイントの差をつけられている。首相は今年一月、職業訓練の充実や就職斡旋(あっせん)支援などの雇用改革を実施したが、失業者は四百七十万人に上り、現状を抜本的に改善できないのが原因とされる。
ドイツは統一後、国内総生産(GDP)の4%を毎年、旧東独の復興資金としてつぎ込んだ。だが経済は自立せず、失業率が30%を超える所もあり、住民の怒りは強い。
「四年間、仕事がないの」。失業者がずらりと並ぶベルリンの職業安定所前で元カーペット販売員のローズマリーさん(57)は、疲労のにじむ顔で悲鳴を上げた。
ハンブルクでは今年三月、失業中の両親がアルコール依存症となり、七歳の女児が自宅で餓死するという痛ましい事件も起きた。女児が餓死したときの体重は九・五キロ。独メディアは「大量失業が生んだ悲劇」と報じた。
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ドイツ初の女性宰相を目指すメルケル党首率いるCDU陣営は五月、SPDの“無策”を攻撃し一時、20ポイントもSPDを上回る支持を集めた。しかし、独経済の改革を掲げるCDUの経済・雇用政策は、SPDよりも厳しい。公約では新規雇用時の解雇規制を緩めて企業の活性化を促したり、企業が労働者と折半する失業保険料率を引き下げる財源として、消費税を引き上げる方針で、いずれにしても厳しい選択を迫られる。
メルケル党首が少女時代を過ごした旧東独の町テンプリンでは、洋服店のクリスティーナ・シュプリンターさん(43)が「選挙で『ペスト』(CDU)と『コレラ』(SPD)のどちらを選べというのか」と、はき捨てるように言った。
テンプリンは小規模な温泉施設があるだけで、21%の高失業にあえぐ。この町では、三百年の歴史を持ちながら、旧東独時代初期に閉鎖された教会を一九五〇年代以降に再開させたメルケル氏の父親、ホスト・カスナー牧師(79)への敬愛の念は強いが、政治家メルケル氏への期待値は低い。
旧西独を含め全国で失業問題に改善がみられない中、スキー場などがある観光立国スイスに職を求めて移住するケースが最近、目立つ。ここ一年間で移住した数は一万千三百人。スイスでホテルやレストランなど三千五百店舗を持つ「ホテラリスイス」の広報係、クリスティーナ・ホステトラさんは「母国語のドイツ語を利用できるのが彼らの利点」と語る。
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だが、若者とは違って中年層が容易に国境をまたげるわけではない。ドイツ統一の九〇年、西部デュッセルドルフからベルリンに移り、二年前に職を失った司法書士資格を持つクレン・ミュラーさん(50)はベルリンでの就職にこだわる。
ただ、現雇用制度では、失業者は通常の失業保険が約一年で切れた後、生活保護者が国から与えられる額と同じ三百ユーロ余の「第二失業手当」しかもらえない。しかも手当を受給中の失業者には、労働を忘れさせないための「一ユーロジョブ」(清掃など時給一ユーロ分の労働)も課せられる。
ミュラーさんは目を真っ赤にして話す。「先日、独北部の動物園でサルの糞(ふん)を処理する『一ユーロジョブ』を課せられた失業者の記事を新聞で読んだ。自尊心を捨てて、私も同じことをしなければならないのだろうか」。
“労働者の味方”を掲げるSPDは経済を好転させられず、大量失業を解消する力もない。「信じられないだろうが痛みを覚悟で今回はCDUに投票してみる。経済が良くならなければ仕事を得られないんだ−」。
戦後、「奇跡の経済復興」を成し遂げたドイツは選挙後、追い込まれた失業者たちに再び、「希望の光」を与えることができるだろうか。
(産経新聞) - 9月17日2時52分更新