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ガソリン１３０円、際立つ高騰 デフレ脱却遅れ、他の石油製品値上げできず
時機うかがう企業
石油情報センターが七日発表した給油所におけるレギュラーガソリンの店頭価格（全国平均、五日時点）は一リットルあたり一三〇円ちょうどとなり、前週比で一・三円上昇した。一三〇円台に乗るのは平成四年一月以来、十三年八カ月ぶり。ハリケーン「カトリーナ」で製油所が被害を受けた米国では国際エネルギー機関（ＩＥＡ）が備蓄原油を協調放出する事態に至ったが、デフレ脱却の遅れる日本ではガソリン価格のみが際だって高騰し、消費者が物価全体の上昇を感じにくい構図が続いている。
《一流メーカーのトイレットペーパー（十八ロール）＝四百七十八円、洗濯用洗剤（一・一キロ）＝二百五十八円…》
先週末、東京都と神奈川県の新聞に折り込まれたホームセンターのチラシに載った特売品だ。製紙メーカーや家庭用品メーカーは「まちがいなく赤字」と、激安価格に言葉を失う。原油高騰を受け、レギュラーガソリンの店頭価格は年初から１０％上昇したものの、石油製品を除くと、身近な商品価格の下落に歯止めはかかっていない。石油を全量輸入に頼る一方、ガソリン以外の最終製品への価格転嫁が進んでいないためだ。
昭和四十八年の第一次石油危機当時、買い占めにあった商品価格と比較すると、改めて異常さがうかがえる。トイレットペーパー（当時四ロール約百八十円）は先のチラシ商品の方が四割近く安く、洗濯洗剤（同家庭用大箱約六百九十円）に至っては約六割も安くなっているのだ。品質向上や消費税分を加味すれば、実質価格がさらに低いのは間違いない。
大手製紙会社の幹部は「研究開発で品質を上げて価格は下がる」とぼやくものの、値上げすれば「他社にシェアを奪われる」。終わりのみえない過当競争の悪循環に陥っているともいえる。
ただ、ここへきて、ライオンが販売店の安売り原資となる洗剤の販売促進費を削減するなど、新たな動きも出始めた。藤重貞慶社長は「販売店との関係悪化によるシェアダウンも覚悟している」と語る。同社製品は四月から前年比プラスで推移しているが、洗剤価格全体の価格はまだマイナスを続けている。
◇
「値上げ要求が通らなければ供給停止もありうる」。原油高の裏で激しさを増しているのが、プラスチック原料の樹脂を作る素材メーカー、それを中間製品にする素材加工メーカー、さらにその先の最終製品メーカー間による緊迫した価格引き上げ交渉だ。
原料から最終製品まで多くの過程をたどる化学製品は、価格に跳ね返るまで「時差」がある。このため、値上げ要請はままならないのが普通だったが、総合化学大手の三菱化学は「原油高が予想を超えた」と食品包装に使うポリエチレンなど汎用樹脂を十月から平均２０−３０％の値上げに踏み切る。原料のナフサが一キロリットル＝三万五千円程度から秋に四万五千円程度に高騰する見通しだからだ。値上げは昨年二月から数えて六回目で、今後の波及効果は大きい。
これに対して、石油化学製品を使う自動車、電機、食品といった消費者と密接なメーカーは「値上げできる環境にない」と、内部努力でコスト上昇を吸収する構えだ。
政府・日銀は先月、日本経済は企業収益の回復で家計（所得）への波及を理由に「踊り場脱却」を宣言した。しかし、デフレ脱却はまだ先の話で「力強く回復する形ではない」（竹中平蔵・経済財政担当相）とも指摘している。
所得が上向いて多くの消費者が景気回復を実感できて初めて、個人消費も本格的に動き出す。そのタイミングまで消費者への価格転嫁を待とうというわけだ。
家庭用品のデフレに悩む花王の尾崎元規社長は「原材料費の高騰を理解してもらうには景気浮揚が一番だ」と話す。製品価格の値上げができる環境になってようやく、日本経済は本当の健全さを取り戻したといえるのかもしれない。（樋口教行）
http://www.sankei.co.jp/news/morning/08iti002.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。