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今週の金融市場展望(2005年8月15日) 【植草一秀が提供する国際政治経済情報】
http://www.asyura2.com/0505/hasan41/msg/911.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 8 月 18 日 04:11:08: ogcGl0q1DMbpk
 

今週の金融市場展望(2005年8月15日)

http://www.uekusa-tri.co.jp/column/index.html


衆議院総選挙は9月11日に投開票が行なわれる。小泉首相は、郵政民営化法案が参議院で否決されたことを受けて、衆議院解散の暴挙に打って出た。「郵政民営化法案賛成」を改革推進者、「郵政民営化法案反対者」を改革抵抗勢力と位置付け、この点のみを争点として選挙戦を演出しようとしている。偏向傾向を著しく強めているテレビ、新聞の主要メディアが、小泉政権に迎合する偏向報道を繰り返しているために、世論調査結果などにも非常に歪んだ世論動向が表われている。

自民党議員で郵政民営化法案に反対した議員は、自らの良識と良心に照らして法案に反対したのであって、自民党内の手続きを見ても党議拘束がかかっていたのかどうかについても見解は分かれる状況にあった。参議院での否決は国民の意思を代表したものであり、このことを理由とした衆議院の解散は正当な説明を付与できるものでない。

総選挙に際して、小泉首相は郵政民営化法案に反対した自民党議員に公認を与えず、対立公認候補を刺客としてそれぞれの選挙区に擁立する方針を示しているが、常軌を逸した対応である。「自由民主党」を「不自由非民主党」に名称変更することが必要ではないかと思わせる対応である。「多数決原理」と「少数意見の尊重」は民主主義運営の基本である。国会での議決は選挙を通じて国民の意志が表示されたものであり、十分に尊重されなければならない。郵政民営化に対して党内に反対意見が存在することも、民主主義のもとでは、抹殺の対象ではありえない。

2003年11月の総選挙に際しての自民党のマニュフェストには、郵政民営化について、「2004年秋までに国民的論議を踏まえて結論を得る」と記述されており、選挙民に対して「郵政民営化の実現」は公約とはされていない。

今後、時間の経過とともに、現在の極めて歪んだ偏向報道は徐々に是正されてゆく可能性が高い。総選挙は「政権選択」の選挙との位置づけが明確にされてゆくものと考えられる。改革に反対する国民は少数であると考えられるが、「真の改革」を実現してゆくための政権の体制について、国民が自民党政権を選択するか、民主党政権を選択するかが最大の争点として浮上してゆくことになると考えられる。

民主党が「真の改革」を国民にアピールするためには、「天下り制度の廃止」を前面に押し立てる必要がある。「小さな政府」を実現するために最も効果のある施策は「郵政民営化」ではなく、「天下りの廃止」である。民主党から、このようなこのようなインパクトのある政策が提示されるのかが焦点である。

選挙結果としては、自民党、公明党が両者合計で過半数に達せず、一方、民主党も単独では過半数に届かない可能性が高い。この場合、小泉首相の公約により、小泉政権は崩壊することになる。政権樹立には、公明党、自民党郵政民営化反対議員、共産党、社民党がキャスティングボートを握ることになり、いずれにしても、連立による政権樹立となることが予想される。

先週、日経平均株価は、郵政民営化法案否決後に、大幅に上昇した。約4年間しっかりと抜くことのできなかった1万2000円の壁を突破して、株価が上昇した。その最大の背景は、小泉政権崩壊の可能性が生じてきたことであると考えられる。小泉政権の下では、企業収益が大幅に増大しても株価が上昇しなかった。経済成長誘導の政策スタンスが存在しないため、企業収益が大幅増加しても、先行きに対する不安が強く、株価上昇が強く抑制されてきた。

小泉政権消滅となれば、日本経済の最大の制約要因が取り払われることになる。株式市場は、小泉政権消滅の可能性を探りつつ、株価上昇の機会を強く窺がう展開を持続するものと考えられる。

先週発表の2005年4−6月期の実質GDP成長率は年率1.1%と微増を示した。生産指数の動向から判断しても、日本経済は昨年央以降の生産横ばいを依然として維持している。「踊り場からの脱却」はまだ確認されていない。ただし、米国、中国を中心とした海外経済の堅調が持続しており、日本経済の急減速を招来する要因は当面見当たらない。政権交代が実現し、日本経済本格浮上の可能性が広がれば、株価本格上昇の可能性が高まってくる。
海外の投資資金も政権交代による日本経済本格浮上の可能性を探る市場動向を念頭に入れ始めている。政治状況が変化すれば、日経平均株価が短期日に1万4000円台に上昇する可能性も高い。

今週、16日(火)に7月米国消費者物価指数が発表される。5、6月統計が極めて低い数値として発表されて、米国のインフレ懸念が一時的に後退しているが、5、6月と比較すれば、やや高めの数値が発表される可能性が高い。原油価格が史上最高値を更新する動きを続けており、米国株式市場はインフレ懸念と金融引締め政策強化の懸念が上値を抑制する展開が持続する公算が高い。

為替市場では、米国のインフレ懸念がくすぶり始めるなかで、ドルの上昇力が鈍る状況が見え始めている。円は、日本の株価上昇期待が潜在的に強く、海外からの資金流入による円支持傾向が徐々に強まっている。米国短期金利引上げ方針が維持されており、ドル急落の可能性は低いが、日本の株式市場、米国の景気減速、米国のインフレ懸念をにらんだ推移が予想される。

内外の長期金利は6月以降、予想通り緩やかな上昇傾向を示している。米国10年国債利回りが4%を割り込んだ際、グリーンスパンFRB議長が長期金利の低水準に疑問を呈したが、それ以後、緩やかな水準修正が進んでいる。米国10年国債は4%台後半の水準に緩やかに上昇してゆく可能性が高く、連動する形で日本の長期金利にも、緩やかな上昇圧力が生じることを想定しておく必要があろう。

9月11日の総選挙に向けての政治状況の変化に最大の注意が必要であるが、「郵政選挙」が「政権選択選挙」へと徐々に状況が変化してゆくにしたがい、世論の風向きが変化してゆく可能性に注目しておくべきである。

2005年8月15日
植草 一秀

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