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団塊、どんな定年後 高齢社会の試金石に 【朝日新聞】
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投稿者 愚民党 日時 2005 年 8 月 15 日 03:29:33: ogcGl0q1DMbpk
 

(人の時代に向けて:4)団塊、どんな定年後 高齢社会の試金石に

団塊世代の波は…


「元気なうちは働かんと。家でぶらぶらしていても仕方ないもん」。休憩時間にくつろぐ猪塚次男さん=茨城県守谷市の前川製作所守谷工場で

 「団塊の世代」の大量退職が07年に始まる。人減らしに走ってきた多くの企業がそれを好機と受け止めているかと言えば、そうばかりでもない。

●380万人が減少

 川崎重工業は4月、社員の定年を1年延ばし、61歳にした。労働組合から要求されていないのに、会社側が提案して実現した。今後も2年ごとに1歳ずつ引き上げ、09年度には63歳まで延ばす。60歳からの賃金は半分近く減るが、生涯賃金は約1千万円増える。

 「60歳定年制のままでは毎年600人程度が退職していく。新規採用で補いきれない規模だ」と成松郁広・人事労政部副部長は話す。放っておけば生産現場の社員数は5千人から10年後に4千人まで減る。定年引き上げでそれを5年ほど先延ばしできるという。

 47〜49年生まれの団塊世代は約680万人。前後世代より2〜4割多い。6600万人の日本の労働力人口はこの世代が抜けることで、10年後には380万人減少する見通しだ。

 この層の給与は年功序列で高くなっており、大量退職で企業の人件費は軽くなる。半面、少子化で若者の雇用が段々と難しくなると見込まれ、急激な人員減は避けたい。多くの企業がそんなことを悩んでいる。

 大学紛争、ニューファミリー、住宅ブーム……。団塊世代はこの半世紀、新しいうねりを起こす原動力となってきた。そのエネルギッシュな人々は自らの定年後をどう描いているのか。

 東京都の調査では、60歳を超えても何らかの形で働きたいという団塊世代の男性は8割を超す。「老後の安定のため」「社会貢献、生きがいとして」などが理由だ。厚生年金の定額部分の支給開始年齢(男性)は現在62歳。それが団塊世代では、大半の人が64歳以降になる。その空白期間の収入を自ら稼がなくてはならないと考える人も多い。

●94歳の顧問も

 冬季長野五輪のスケートリンク作りで知られる冷凍機器メーカーの前川製作所(東京)には「定年」が事実上ない。本人に意欲があれば60歳になっても活用センターに再就職し、そこから元の職場に派遣される形で働き続けることができる。国内のグループ社員2千人のうち60歳以上は約150人、うち70代が35人いる。最高齢の顧問は94歳だ。

 「昔の職人は自分で『仕事ができなくなった』と判断した時が定年だった。長年の経験があるからできる仕事も多い」と活用センターの加茂田信則常務理事(74)はいう。

 同社の茨城県守谷市の工場で働くベテラン旋盤工の猪塚次男さん(65)は、若手の教育係も兼ねる。「図面をみればどこから削ればいいか、ぱっと分かるようにする。5年計画で覚えてもらおうと思っています」

 団塊世代の退職を控えて高年齢者雇用安定法が改正され、企業は来年4月から、(1)定年年齢の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制廃止、のいずれかの雇用延長制度をとることが義務づけられる。

 厚生労働省の04年の企業調査では、定年後の雇用の場を用意しているのは7割。ただ、希望者全員を対象とするのはその4分の1で、会社が選んだ対象者などに限られるケースが4分の3を占めている。

 定年後の雇用継続は中小企業の方が熱心だ。従業員300人未満の企業では定年到達者の6〜7割が何らかの形で継続雇用されている。ところが、企業規模が千人以上の大企業では3割弱にとどまる。

●NPOに参加

 定年退職者の能力を勤めてきた会社以外で生かすことはできないのだろうか。「退職したばかりの人は知的好奇心が旺盛。その能力を眠らせてしまう手はない」と力説するのは、特許・知的財産の評価事業を手がけるベンチャーラボ(東京)の山中唯義社長だ。

 同社は発明の対価をめぐる青色ダイオード訴訟で技術評価を請け負ったり、地方自治体から地場企業の技術評価を委託されたりしている。現在、元技術者ら350人を登録して必要に応じて仕事を発注している。団塊世代の大量退職をにらんで登録者を千人規模に拡大する計画だ。

 自らベンチャー企業をおこす手もある。携帯電話などに搭載する超小型ハードディスクのモーターを開発するシーアールディー(川崎市)もそんな会社の一つだ。平均年齢は60歳近い。

 岩田俊夫・取締役開発部長(61)はシチズン時計のフロッピーディスク部門の技術部長だった。「加工技術という根っこは同じ。大企業と違ってすべてを見渡して働ける点も魅力だ」

 企業活動とはひと味違う生き方もある。大阪府寝屋川市のNPO「寝屋川あいの会」は高齢者や子育ての支援に加え、市民会館管理などを市から請け負う。松下電器産業のOB、三和清明さん(67)らが4年前に設立した。会員約130人の4割が定年後の男性だ。

 「地域とつながりがないまま、ぬれ落ち葉になりたくはない」と市の政策懇談会に参加し、そのメンバーで立ち上げた。お年寄りから頼まれる庭の草刈りや大工仕事、車での送り迎えは「1時間800円」。支払いは市内の商店街で使える地域通貨だ。総収入は今や7千万円にのぼる。

 三和さんは「NPO活動には企業時代の経験が役立つ」と話し、次世代の参加にも期待する。

 団塊世代の大量退職と軌を一にして日本の人口は減少に転じ、本格的な高齢化社会を迎える。団塊世代が定年後に、どう働き、地域とどう結びついていくのか。その後に続くすべての世代にとって、試金石となる。(田中郁也)


http://www.asahi.com/paper/business.html

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