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再編加速 米証券市場
NYSE→株式会社化 ナスダック→電子市場買収
米証券市場が再編・統合を加速させている。ニューヨーク証券取引所(NYSE)が電子証券市場と経営統合し、非営利の会員組織から株式会社化することを決めたほか、競合するナスダック・ストック・マーケットも大手電子市場を買収する。背景には上場、公開企業数の伸び悩み、電子取引の台頭による取引所の収益低迷がある。(ニューヨーク 北山 文裕)
■再編の背景
NYSEは米主要企業の資金調達の場として、米国資本主義を支えてきた。しかし、取引所収入を左右する上場企業数は1998年をピークに減少基調にあり、出来高も伸び悩んでいる。非営利の会員制組織としての「企業価値」も示す会員権価格も、今年1月には100万ドルの節目を割り込む水準まで下落した。ライバルのナスダックはNYSE上場企業の“誘致”を積極的に進め、コンピューター大手ヒューレット・パッカードなど有力企業をNYSEとナスダックに「重複上場」させている。
「経営統合と株式会社化は国際競争力の強化、優位を確保する第一歩だ」
NYSEのジョン・セイン最高経営責任者(CEO)は、生き残りのために再編が不可欠なことを強調する。
有力企業を囲い込むためには、投資家が求めるすばやい決済を実現し、さまざまな取引を一か所で行えるようにする必要がある。NYSEは自ら株式会社となることで、巨額の資金が調達しやすく、迅速な意思決定を行えるようにした。電子証券市場を運営する「アーキペラゴ」との統合も、取引所の「電子化」「多角化」戦略の一環だ。
■「電子化」合戦
NYSEが経営統合するアーキペラゴは96年設立の新興勢力で、立会場を持たず、人手を介さない電子取引で急成長してきた「電子取引ネットワーク」(ECN)の草分け。提携関係にある米西海岸の証券取引所の買収も決め、低コストの市場運営と迅速な取引で機関投資家の支持を集めている。
アーキペラゴによる電子取引は、ナスダック公開株の取引量の約25%に達している。NYSEはアーキペラゴを介してナスダック公開株のほか、オプションや派生商品の取引にも新規参入する見通しで、ヘッジファンドなど機関投資家の資金を呼び込む。ナスダックも、米大手ECN「インスティネット」の買収で、NYSE・アーキペラゴ連合に対抗する。
■変わる取引所
NYSE、ナスダックによる統合・買収劇は、米証券市場の姿を大きく変えそうだ。
NYSEは人手を介した伝統的な立会場取引と電子取引を組み合わせた「ハイブリッド市場」(セインCEO)を目指すが、今回の再編は旧来型の取引手法の衰退につながるとの予想が多い。
NYSEには「スペシャリスト」と呼ばれる値付け業者が取引を円滑に進める独特の制度がある。スぺシャリストは取引が薄い株式に対して自己資金での売買も行い、急激な株価変動を回避する機能も果たす。ただ、こうした取引は電子取引に比べて経費や時間がかかり、取引の匿名性を脅かす恐れもあった。
NYSEとナスダックの電子化競争が激化すれば「技術革新と市場間競争で取引コストが下落に向かう」(オハイオ州立大のイングリッド・ワーナー教授)。取引の透明化に加え、投資信託などの利回りが向上する効果も期待できる。
取引所の株式会社化は、日本では東京、大阪の証券取引所がすでにすませ、欧州では国境を超えた取引所の統合・再編が具体化している。経営改革や電子化ではむしろ他の主要取引所より遅れていたNYSEが株式会社化に踏み切ることで、商品、先物市場を巻き込んだ国際的な市場再編・統合の加速を予測する声もある。
ECN
電子コミュニケーション・ネットワーク(Electronic Communications Network)の略。証券取引所と同じ機能を持つが、取引所としては登録せず、コンピューターによる取引を営利目的で行う。
90年代から「隠れた市場」として取引を拡大してきたが、取引の透明性などへの懸念も指摘され、最近では取引所に近い規制が整備されてきた。
(2005年5月9日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20050509mh03.htm