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実は、朝銀近畿を初め各地の朝銀信用組合に金融庁の検査が入ったのは、
2000年5月が初めてで、それまでは信用組合の監督権限は都道府県にあった。
◎フリーの郵貯、いったいどんなものが出てくるのか今から楽しみでもある。
週刊新潮
2002年1月24日号
[深層レポート]
腐敗「朝銀」の公的資金6000億円は
こうして「北朝鮮」に流れた
ジャーナリスト・加藤 昭
破綻した朝銀信用組合には、すでに6000億円もの公的資金が投入されてい
る。だが、これほど杜撰な銀行を我々の血税で救済する必要があるのか。巨
額の不良債権と化した乱脈融資のほとんどは、朝鮮総聯の指示の下、北朝鮮
へ送金するために生み出されたものなのだ。ジャーナリストの加藤昭氏(57)
が、腐敗しきった朝銀の内幕をレポートする。
”北朝鮮の財布”とも称される朝銀信用組合の巨額不正融資事件に絡み、
「朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会=東京・千代田区)」の最高幹部のひと
り、康永官・元財政局長が昨年11月、警視庁に逮捕された。
容疑は、信組資金の不正流用および背任横領。総聯財政局の”金庫番”と
いう地位を利用して、8億3000万円を着服したというのがその内容だ。
朝銀信用組合の内部で使途不明金として処理されている額は、個別案件で
は1OO億単位、累計では年間1OOO億とも2000億とも指摘されているのである。
ここから考えても、犯行は康永官個人のものとは思えない。取材で一度、都
内にある康の自宅を訪ねたことがあるが、とても億単位のカネを横領した人
物の居宅とは思えなかった。近所の人からも、質素な生活との声が聞かれた
ものだ。
だとしたら、一体、この巨額不正融資事件を仕掛けた真の首謀者は何者な
のか。
「首謀者?朝鮮総聯の中でもあんな荒業を仕掛けられる男は、一人しか存在し
ない。
それは事実上、朝鮮総聯を牛耳っている責任副議長の許宗萬だ。許宗萬こそ
一連の不正融資事件の中枢にいて、密かに指令を出した張本人です。
康永官は単なる"番頭"にすぎない。朝銀が多額の不良債権を抱えて破綻した
のも、すべて許の責任と言っていい。
巨悪そのものだ」(公安関係者)
しかし、いかに許が総聯きっての実力者といえども、そうやすやすと1OO億
単位のカネを不正操作できるものであろうか。しかも、横領容疑で逮捕され
たのは康永官であって、許宗萬は未だ告発もされていないのだ。
私は取材を進めるうちに、朝銀の不正融資の実態を知る人物と接触でき
た。仮にその人物を鄭国男としよう。鄭は破綻した朝銀近畿の元幹部で、内
部で何が行われていたかを詳細に知り得る立場にあった。
「実は、旧朝銀近畿信用組合(本店・神戸市)を舞台に繰り広
げられた不正融資騒動は、共和国(北朝鮮)への送金目的に、朝鮮総聯・中央
本部が仕組んだ秘密工作だったのです。無論、その中枢で指揮したのは許宗
萬本人。逮捕された康永官は許宗萬の指示通りに動いたに過ぎません。不正
の元凶はすべて許宗萬にあるといってよいでしよう」
では、不正融資と送金資金の捻出方法はどのように結び付くのか。
「典型的な例は、旧朝銀京都を舞台にして行われた滋賀県の石部カントリー
クラブ(仮称)というゴルフ場開発に絡む融資の手口だ。朝銀京都の成漢慶理
事長(当時)は、これに1OO億ものカネを無担保で融資し、ぽぽ全額を焦げ付か
せたことで知られる。だが実は、この100億は融資が決った時点で既に不良債
権化すると判っていた」(鄭氏)
そもそも、金融機関が担保も取らずに、そんな大金を貸し付けること自
体、考えられない話だ。しかも、当初から返済の見込みナシとは……。
「この話を朝銀京都に持ち込んだのは通名がS、本名がPという在日朝鮮人
だ。Pは関西に本拠を置く広域暴力団に所属する構成員。成理事長や金東浩副
理事長ら朝銀京都の幹部は当初、無担保での巨額融資に難色を示していた
が、ある日突然、態度を豹変させ、Pの無茶な要求を受け入れ、満額融資に応
じてしまう。
実はこのカラクリの陰には、許宗萬が理事長らに掛けた”一本の電話”の
存在があった」
許宗萬は、電話口に出た成理事長に対し、「共和国のため、P同志の愛国事
業に協力してやって欲しい」と強い口調で主張したという。
「朝鮮総聯の最高実力者から直接要請を受けて拒否できる者はいない。その
場でPへの100億円融資の話が決ったのです。だが、許宗萬のもち出した”愛
国事業”云々は表向きの話。ウラではPから許に莫大な”口利き料”が支払わ
れている。私が耳にした話では、1OO億の20パーセント、すなわち20億が許の
フトコロに転がり込んだと言われています。総聯関係者の間では、融資額の
20パーセントが手数料としてバックされるとの不文律がある。彼はおそらく
そのカネを保身のため共和国に”献金”したのだろう」
許の周辺には、これと同じようなウサン臭い話が山ほど存在する。
記念金貨発行事件
そのひとつが87年に発覚した、朝銀愛知を舞台にした「巨額詐欺事件」。
許はこの時も今回同様、ある在日二世の経営者に「祖国のための愛国事業に
融資して欲しい」ともちかけ、結果的に17億5000万もの資金を詐取した。そ
の際この金の一部5億円が「東永一」名義の口座に送金されたが、この東永一
こそ逮捕された康永官なのである。こうしてみると、許宗萬の遣り口は当時
から、まったく変わっていないことがわかる。
もうひとつ、許が朝銀から巨額資金を吸い上げたとされるのが「記念金貨
発行事件」。
朝鮮総聯は88年、「共和国(北朝鮮)創建四十周年記念」
事業として記念金貨を発行、朝銀ルートで全国に売り捌こうと計画した。発
案者は無論、許宗萬自身。価格は大小4枚の金貨が1セット20万円だった。コ
インの表面には金日成”首領様”のレリーフが刻まれ、ゴマすりの意図はミ
エミエ。当時を知る朝鮮総聯の関係者が暴露する。
「値段は高いし、金貨といってもメッキだったから財産価値はなく、在日(朝
鮮人)の間でも悪評紛々だった。25万セット製造したらしいが、半分ところか
2割程度しか売れなかったと聞く。資産家の商工人の中には、一人で2セット
も3セットも買わされた人もいる。カネが無いと断わると、朝銀でローンを組
めと言ってくる。そうした場合を考え、朝銀を販売ルートに使ったのだ。彼
は本当に悪智恵が働く」
だが、500億の売上見込みが大幅に狂い、許宗萬をはじめ総聯幹部は全員、
真っ青になったという。
「というのは、平壌を訪れた総聯関係者の一人が”完売間違いナシ”と報告
していたからだ。そこで許は急遽、複数の朝銀に架空・借名口座を開設し、
そこから出金したように装い差額の400億円を吸い上げたのだ。無論、その
400億はそっくりそのまま、朝銀の不良債権として残された」
何のことはない、朝銀を”財布”がわりに使う構図は、今も昔も同じとい
うことだ。これでは、いくら公的資金を注入しても、朝銀の破綻は止められ
るわけがない。
さて、問題はこの後である。
100億もの大金を焦げ付かせた朝銀京都だが、その処理過程で大問題がもち
上がる。
97年、隣接する朝銀大阪信用組合が債務超過で経営破綻してしまう。処置
に困った金融庁は、苦肉の策として、同年、朝銀大阪を滋賀、奈良、和歌
山、兵庫、京都の各朝銀と統合させ、新たに近畿朝銀として再発足させる。
その際、3159億円もの公的資金が投入され、論議を呼んだ。ところが、その
近畿朝銀も2000年12月、3年余りで再度破綻に追い込まれてしまう。
朝銀京都の内実に通じた柳太治(仮名)が衝撃的な事実を打ち明ける。
「旧朝銀京都が近畿(朝銀)の二次破綻を招いたことは、疑う余地がない。な
にしろ、朝銀京都の預金量は2600億程度だったのに、なんと不良債権は預金
量の半分、1300億にも上っていた。当然、債務超過の状態だったが、監督官
庁である金融庁はもとよ
り、外部にもヒタ隠しに隠した。漏れれば、取り付け騒ぎが起こり破綻する
のは目に見えていたからだ。不良債権の中でも、元凶はゴルフ場開発への融
資。結局、これがそのまま朝銀近畿に引き継がれ、命取り(二次破綻)となっ
た」
これでは何のために3000億以上もの血税を注ぎ込んだのか、まったく意味
がわからない。ドブに捨てたのも同然といえる。
金融庁は、全預金量の半分が回収不能に陥った事態を、なぜ見抜けなかっ
たのか。
「実は、朝銀近畿を初め各地の朝銀信用組合に金融庁の検査が入ったのは、
2000年5月が初めてで、それまでは信用組合の監督権限は都道府県にあった。
朝銀近畿は本店のある兵庫県、先日摘発された朝銀東京は東京都といった具
合です。こうした地方自治体の検査は、監督官の人数も少ないし金融のプロ
もいないから”大甘査定”に過ぎない。
朝銀京都のように、第四分類(回収不能)の不良債権が預金量の半分を占めて
いるにもかかわらず、表向きの帳簿上は『不良債権ゼロ』となっている。無
論、帳簿の改竄を行ってのことだが、それを監督官庁に示しても、何らの指
摘も改善命令も出されないのです」(柳氏)
かねてから、都道府県など自治体の金融検査は問題視されていたが、柳氏
によると、全国33カ所の朝銀信用組合すべて同様だという。
発覚した「B勘」
具体的には、どんな方法で帳簿改竄を行い、不良債権の隠蔽工作をやって
いたのだろうか。
「手口は単純そのもの。『貸し噌し』という方法を取っていた。融資先の企
業や個人が経営破綻すると利息も払えなくなる。そこで朝銀は新たに資金を
融資し、その中から利息分を返済させる。これがいわゆる『貸し増し』と呼
ばれる行為だ。こうすることで融資が不良債権化していないように装う。朝
銀信用組合はどこでも、『B勘定」と呼ばれる裏帳簿を密かに作成し、実際の
融資先や貸出額、貸し増しの実態を記していたが、それを見ればいがに杜撰
な融資を行っていたか、一目瞭然だ」(柳氏)
2000年5月、朝銀近畿に金融庁・近畿財務局の検査が入った時、検査官と朝
銀側の責任者との間には、次のような遣り取りがなされたという。
検査官「貸出台帳など帳簿類をすべて持ってきて下さい」
朝銀側「ここにお持ちした帳簿がすべてです」
検査官「こんな表向きに改竄した帳簿類の他に裏帳簿があるはずです。それ
を出して下さい」
朝銀側「……当信用組合は裏帳簿の作成はしておりませんが……」
検査官「ではお尋ねしますが、この帳簿に記載された融資先の印鑑がすべて
同じ書体なのはどうしてですか。架空口座や借名通帳を設けるため、朝銀側
が同じ店に一括して印鑑を注文したのではありませんか」
朝銀側「……、……、……」
この遣り取りの後、朝銀側は裏帳簿の存在を認め、検査官の前に差し出し
たという。
当時、朝銀近畿信用紙含のある支店に在籍した元幹部らも、口を揃えてこ
う言う。
「金融庁の検査官はさすがに金融のプロ。一目で帳簿類の偽装・改霞工作を
見破り、B勘の存在を突き止めました。
帳簿を持って行くと、パラパラと見ただけで『ああ、これは朝鮮総聯への献
金の分ですね。そちらの方は既に調査済みですから結構です」と言われたの
です。」その言葉を聞き、”ああ、もう資金の流れはすべて捕捉されている
のだな”と、心底驚いたものです」
金融庁が今後、朝銀に対し、どのような処方箋を下すか、
極めて興味深い。
ところが、その後に漏れてきた情報によると、朝銀近畿も含め破綻した朝
銀は一組合も整理しないというのだ。
「日本政府は97年、破綻した朝銀大阪の受け皿として朝銀近畿を発足させた
際、約3100億余の公的資金を投入した。そして、昨年11月、破綻した9信組を
統合し朝銀北東(札幌市)、朝銀中部(岐阜市)、朝鎮西(岡山市)の3信用組合と
して再起させることを決定。これにも合計3129億円を注ぎ込む構えだ。さら
に、今回逮捕者を出した朝銀東京や朝銀関東、朝銀千葉、そして近畿にも合
計4000億にも及ぶ税金の注入が確実視されている。すべてを合わせれば、1兆
円をはるかに超える額になる。バカげた話だが、朝銀を救済するための、い
わば”統合・再建路線"が軌道に乗ってしまった、と言う以外にない」(大手
紙経済部デスク)
しかし、93年末の段階で羽田孜外相(当時)が「内閣調査室から『朝鮮総聯
から北朝鮮への送金は年間2000億円規模』という報告を受けている」と語っ
ているように、投入された公的資金のかなりの部分が”共和国”への送金に
回るだろうことは想像に難くない。
先出の柳太治もこう証言する。
「朝銀東京は新たに"ハナ信用組合”と名前を変えて再出発することが公表さ
れましたが、朝銀近畿は三分割され、各々『京滋信用組合』『未来信用組
合』『ヒマワリ信用組合』と商号を替えて営業を再開するそうです。名前か
ら朝鮮の文字を外したのは、北朝鮮のイメージを薄める狙いからだと聞きま
した。公的資金の投入額もすでに決定していて、京滋・未来信用組合には
各々、300億と500億が注ぎ込まれるということです」
もしこれが事実なら、あまりにも国民をバカにした話である。破綻した朝
銀信用組合の検査結果の詳細も公表せず、まず再建ありきでは国民は納得し
ない。
野中広務の弁明
誰が一体、こんな無茶苦茶な筋書きを用意したのか。
前出の経済部デスクはこう推測する。
「こんな強引なシナリオを押し進められるのは、自民党の元幹事長である野
中広務しかいないだろう。野中は、この8年間、日朝関係の改善に取り組んで
きたが、上手く行かなかった。どうやら日朝問題から手を引くようだし、最
後のご奉公として朝銀救済に走ったのではないか。ウラには当然、許宗萬が
いる」
今回の朝銀問題の取材では、数多くの朝鮮総聯や朝銀関係者に面会した
が、程度の差こそあれ、関係者は皆、”合言葉”のように、「野中先生は頼
りになる。いざ何か面倒なコトが起これば、野中先生が何とかしてくれると
思っていた」
と語っていたのが印象的だった。
当の野中はこうした声をどう受け止めているのか。
衆議院第二議員会館に彼を訪ねた。
―あなたの選挙区である朝銀京都の不正乱脈経営、そして今回の朝鮮総聯へ
の捜査をどう見ているのか。
「いや、それは僕の想像を絶することですよ。だけど僕は一切相談も受けて
いないし関知していない。金融庁には私の名前が出ても一切関知しないか
ら、ちゃんとやってくれと言っておいた」
問題の人物、許宗萬について野中はこう述べた。
―計宗萬氏とは親しい仲だと聞いているが。
「半年ほど前、本人から『会ってくれませんか』という電話があったが、
『今あなたに会うと誤解を生むから』と言って会わなかった。だから許宗萬
の方が勝手に吹聴しているかもしらんけれど、そうした事実はない。僕は、
彼は何かを考えている人だと思ってきたから」
―それはどういう意味か。
「韓徳銖(朝鮮総聯議長・故人)の座を狙うてるんじゃないかと感じた。だか
ら、そのために本国に点数稼ぎをしているんじゃないかと。あの男は勝手な
男ですよ。平素何も言わないし、頼もうと思ったら電話を掛けてきたりす
る」
家宅捜索から約ーカ月半。
事件の全容解明は未だなされていない。だが、関係者の証言によって、朝
銀の乱脈経営の実態が見えてきた。捜査当局は、巨悪への追及の手を断じて
緩めてはならない。
(文中敬称略)