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『年次改革要望書』というものがある
http://night-news.moe-nifty.com/blog/2004/08/post_9.html
『年次改革要望書』というものがある。そういうものがあるということを、関岡英之著『拒否できない日本』文春新書(2004)を読んで知った。『年次改革要望書』とは、日本の各産業分野に対してアメリカ政府が機構改革や規制緩和などの要求事項を通達(「提出」でも、「要望」でもなく「通達」が正しい)する文章である。ただの外交文章ではない。ここでアメリカ政府から要求されたことは、日本の各省庁の各担当部門に割り振りられ実行されていく。そして、この要求が実行されたかどうか、日米の担当官が定期的に会合を持ち、チェックする仕組みになっているという。さらに、この文章を毎年、日本政府に通達するアメリカの通商代表部は、毎年アメリカ議会から勤務評定を受ける。つまり、通商代表部としては、日本政府が実行しないと自分たちの評価が下がるので、いかなる圧力をかけても日本政府に実行を求めなくてはならない。
例えば、最近各大学で創設された法科大学院制度は、この『年次改革要望書』の要求内容のひとつであった。司法制度の改革とは、アメリカの基準に合わせるということであり、やがてアメリカの弁護士資格でも日本で弁護活動ができるようになるだろう。アメリカの大手弁護士事務所が日本でも法律事務所を開くことができるようになる。会計制度や商法もアメリカを基準に改定されることになる。公取委員会もアメリカの都合のいいように変えられていく。今の日本政府が言う「改革」とは、この『年次改革要望書』のことであると言ってもいいだろう。なにしろ、『年次改革要望書』は、実行時期は別としても、今後必ず行われる「改革」のリストなのだから。これからの日本はどうなるのかの一面は、この文章を読むのが一番手っ取り早い。
『年次改革要望書』を読むと、よくもまあ、これだけ、細々と他人の国に介入できるものだなと思う。そして、徹底的に日本を調べている。まるで、GHQの日本占領統治時代のままである。この『年次改革要望書』が毎年提出されることは、1993年の宮沢首相とクリントン大統領の首脳会談で決まったことだという。アメリカが外圧を日本に加えるためにクリントン政権が作ったものであった。以後、クリントン政権からブッシュ政権に変わっても、この制度は受け継がれた。さらに言えば、1993年以前の1989年の「日米構造協議」から、アメリカが日本に具体的な改善要望を突きつけるということが行われていた。
この「日米構造協議」は、日本改造プログラムとでも呼んでいいものだった。1980年代の後半に、対日赤字の原因は日本側の閉鎖的な市場制度、不可解な商慣行や流通機構、政と民の癒着、系列等といった経済システム、社会システムに問題があるとし、それらの根本を改革しなくてはアメリカ企業の競争力を高めることができないと考えた。内政干渉をしてでも、アメリカの自由貿易(つーか、アメリカの国益)を維持しなくてはならないとした。そこで行われた「日米構造協議」は、もはや第二の占領政策であり、主権国家間のまともな交渉ではなかったという。そもそも、「日米構造協議」というコトバが苦心の意訳であったという。英語ではStructural Impediments Initiativeであり、正しく訳すと「構造的障害イニシアティブ」となる。Initiativeとは、辞書で見ると「主導権、議案提出権、発議権」とある。誰が「主導権、議案提出権、発議権」を持っているのかというとアメリカである。つまり、「アメリカが日本市場に参入する際に障害になるものを、アメリカの主導で取り除こう」という意味である。「日米構造協議」というものではない。
このInitiativeのままで、現在の『年次改革要望書』もある。これほど重要な『年次改革要望書』のことをマスコミは報道したことがあったであろうか。例えば、NHKスペシャルとかでやってもいいものだと思うが、そうした番組がなかったのはなぜか。僕はそれなりに今まで日米関係の本を読んできたが、この『拒否できない日本』という本を読むまで、どの本にもこのことはまったく載っていなかった。
では、この『年次改革要望書』はどこで入手できるのかというと、在日アメリカ大使館のホームページで簡単に入手できるのだ。
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html
アメリカのワシントンDCに行かなきゃ見れないとか、極秘文章なのでフツーの人には見れないとかではなく、誰でも自宅でインターネットで見れるのである。それも、ご丁寧なことに日本語訳で。これほど露骨な内政干渉をしていても、堂々と公文書としてあけっぴろげに公開しているのである。つまり、アメリカは当然のことをやっているだけだと思っている。
当然と言えば、確かに当然のことで、アメリカ政府がアメリカ企業の利益を要求してなにが悪いのかというと、悪くないというしかない。他国をそういうふうにしか見れないアメリカという国は、どこか欠落したものがあるなと思うが、これが現実なのだからしかたがない。アメリカって、そーゆー国なのだ。
問題なのは、日本側が日本国民にこの事実を隠しているということだ。