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6月2日より12日まで、9泊12日間にわたって、8社の物流センター、2店舗の公式訪問、セミナー1回、計11箇所を視察した。特に今回は大手企業の物流を受託するヨーロッパ大手のサードパーティロジスティクスと小売業におけるIT革新、RFID利用の現状について多くの時間を費やした。
☆ 自然と共存 通信販売 OTTO Versand
まづ最初に訪問したのはドイツ、ベルリン郊外のオットー社中央物流センターである。同社は創業者のオットー氏が第二次世界大戦の廃墟の中から立ちあがり、靴の通販をはじめてから半世紀を越えている。取扱商品はハイファッション、ハイテク商品、家具、家電、インテリア、アクセサリー等、あらゆる生活用品を高い品質の商品を幅広く品揃えをしている。年商160億EUR(約2兆2,400億円)、従業員56,000人、進出国は21カ国に及んでいる。
OTTO物流センター
オットーの本社はハンブルグにあるが、私が訪問したのは1994年に開設したベルリン郊外、ハルデンスレーベンにある物流センターである。このセンター設置の目的は東西ドイツの統合による東ドイツの市場拡大と、東ドイツの雇用増大のためであり、政府と地方自治体から多額の補助金を得ている。
緑と水の素晴らしい豊な自然環境にあり、鳥のさえずりと蛙の声が聞こえる世界に珍しい物流センターである。床面積は17万u、従業員2,300人、1日に60万ピースを出荷する。120万ケース収容のダンボールケースの自動倉庫には4億2千万EUR(約600億円)が保管されている。
オットーのピッキング方式はバッチピッキングである。バッチピッキングとは多数のオーダーを一括りにして、バッチを作り、そのバッチのアイテムを総量ピッキングし、オーダー(顧客)別に仕分ける方式である。日本はシングルピッキングが多いが欧米の通販物流の大部分はバッチピッキングである。バッチピッキングには自動仕分機が必要である。オットーには2種類のクロスベルトソーター(自動仕分機の種類)があり、1日に18万件のオーダーを処理している。通販の物流センターとしては世界最大と思う。なお、オットーの物流戦略の特徴は、3PL時代にも関わらず、物流センター業務をアウトソーシングしないことである。配送はHERMESという物流子会社が担当している。理由は顧客サービスの維持向上とコストダウンである。
☆ オープンブックの料金改定・ウォルマート
ドイツのウオルマートのRDC(広域物流センター)はデュッセルドルフにある。物流はチベット&ブリテンと云うサードパーティロジスティクスにアウトソーシングしている。チベット&ブリテン・グループは1958年イギリスで、ジョン・ティベット氏によって設立され、イギリスでハンガーにかけるアパレルの輸送を開発した。現在は年商16億3400万ポンド、約3400億円である。ヨーロッパも日米同様、物流はアウトソーシングする傾向が強い。チベット&ブリテンはハンガー輸送に優れ、C&A、マークス&スペンサーのアパレルの物流を受託している。
日本と欧米の物流の違いは、日本がピースの物流であるのに対し、欧米はケースの物流であることです。1980年代までは、日本が非在庫・通過型に対して、欧米は在庫型だった。最近の日本の物流センターには在庫が目に付くようになり、逆に欧米の物流センターからは在庫の減少が目立つようである。ドイツのウォルマートの物流センターはイギリス軍の兵站基地を転用したもので、パレットラックの在庫が目に付いたが、クロスドッキング(通過)が65%と言うことである。店舗数はドイツ国内の92店、年間扱いケース数は1,200万個、保管は12,000パレット、保管効率は96%の高い効率である。受注から出荷まで24時間、取扱商品は主としてグロサリー、他に季節商品、家電がある。商品は60カテゴリーに分かれており、ここでは1412アイテムを扱っている。パレットラックの高さは1100mmと2000mmの2種類あり、商品回転によって、保管場所を使い分けている。物流機器はフォークリフトとラックだけで、以前あった自動仕分機を外していた。クロスドッキングには自動仕分機は欠かせないと思うが、既存の建物で、トラックの接岸場所が2階に相当する高さにあり、使いにくいので外したそうである。機械らしいものの無い、「シンプル・イズ・ベスト」のWMS(倉庫管理システム)だが、日本の卸売業のレベルの高い物流センターを見た人には物足りないと思う。このセンターの運営は、チベット&ブリテン社のドイツの子会社で、SCMという社名である。ヨーロッパも日本同様アメリカ生まれの経営新語がお好きなようだ。
チベット&ブリテンが強調していたのは「料金決定」の仕組みである。チベット&ブリテンではこれを「オープンブック方式」と呼んでいる。毎月1回会議を持ち、コストを、明快にし、これに適正利益を加えて、料金を改定する。日本流に言えばオープンブック方式は「腹を割って話す」パートナーシップということだろう。
☆ 在庫の多いイギリスのウォルマート(ASDA)
イギリスのアスダは日本で云えば西友の様な知名度の高い大手スーパーマーケットであったが、ウオルマートに買収された。物流センターは自前であるが、ほぼ、ドイツと同じWMSである。ピッキングもドイツと同じで、フォークリフトにパレットを刺し、庫内を巡回して、ケースにラベルを貼ってピッキングする方式である。
これはアメリカの卸売業に多いWMSである。欧米の小売業ではクロスドッキングが増加傾向にあるが、ドイツのウオルマートのクロスドッキング65%に対し、イギリスは40%であった。イギリスもドイツも我々が訪問した物流センターの取扱商品はドライグロサリーで、イギリスの物流センターでは89店に商品を供給していた。全店舗256店に23箇所の、機能とカテゴリーの異なる物流センターがあることが印象的であった。
ウオルマート:ASDA
イギリス・ASDAの課題はクロスドッキングの増大とセンターの集約だそうである。 ウオルマートの成功は物流だという識者が多いが、輸配送、センター運営を含めたトータルロジスティクスで、日本のサードパーティも卸売業もウオルマートを超えている。ウオルマートの成功はローコスト経営の体質の内に、EDLP(Every Day Low Price)で、販売量=仕入れ量をマスにし、低価格戦略を根つかせことによる。日本の識者は物流を過大評価している。物流は「安く、早く、正確」であればよい。よいそれ以上のものは物流やロジスティクスではなく経営そのものである。
☆ 典型的な3PLの巨人・カテナッシェ”
“Katoen Natieカテナッシェは流通加工とハイテクサービスのパイオニアであり、世界規模のネットワークを持ち、トータルサービスのロジスティクスを提供するサードパーティロジスティクスである。ハイテク化した物流サービス、 格納、パッケージ、輸配送、カスタム設計、品質管理、アセンブリ(ピッキング)、通関、および輸送と幅広いロジスティクスサービスを提供ししている。営業倉庫にVASと輸送(付加価値サービス)を加えた総合物流サービスの3PLである。アントワープ港に次ぐ、ベルギー第二のゲント港の物流団地にあり、ヨーロッパに進出する外国企業のEDC(欧州物流センター)として売り込んでいる。敷地の巨大さ、取扱商品の多様さに驚かされた。一つの棟でアパレルの流通加工をやっていると思えば、ある棟では自動車部品の組立工場であったりする。30メートルの高さのサイロからバキュームでトレーラーにプラスティックのペレットがバキュウムで運ばれる光景も見られた。多角経営の3PLと言えるといえるだろう。
☆ EUのHUB “Honda Europe NV”
本田技研工業鰍ヘ1978年にベルギー・ゲント市と港頭用地を長期に賃借する契約をした。 これにより当社はヨーロッパ各国からの調達業務を更に強化し、現地部品装着作業の拡大とパーツ供給を強化することにした。これらの機能及び施設の運営を行うために、「ホンダヨーロッパN・V」を資本金8億円で設立した。契約した用地は約40万uである。総投資額は、約30億円と予想されている。
現地法人ホンダ・ヨーロッパで扱うパーツの種類は登録で29万SKU、実質は22万SKUである。1日の入荷量は1,300㎥、日本からは1日600㎥、金額では55%である。大型商品の入出荷はトウベヤというチェーン駆動の牽引車を使い、保管はマニュアルのパレットラックと平置きである。小物部品の入荷は青色コンテナ、出荷は赤色コンテナで明確に区別されている。小物の商品はバッチピッキングでハンディターミナルで一次ピッキングし、クロスベルトソーターで72オーダーに分け、ハンディターミナルで検品、梱包し、EUとアフリカのディラーに直接送り届けている。
ベルギーHONDA
IT利用のWMS(倉庫管理システム)は世界の上位に値する。1日の処理件数は6千件。ホンダ・ヨーロッパNVは自前の投資と自前の運営で社員は300人、日本人は10人である。製品の自動車だけでなく、ロジスティクスでも海外企業と互角以上に戦っている姿に感動した。米・独における日本車の売上げの伸びが外国車を凌駕している一つのポイントは部品供給による顧客満足度が高いことにあると思う。
☆ 3PLのBuddy運動“TESCO” 日配品センター
ロンドンの南西部Didcotの日配品センターを視察しました。センターの運営はヨーロッパでは上位のランクされるExel社である。テスコの年商は280億£(2003)約3兆円になる。建物は英国最大の元冷凍倉庫を転用しているためか天井が十数mと高く、温度管理倉庫としてはエネルギーコストが気になる。室内温度は惣菜12℃、精肉・鮮魚は1℃です。ここでも物流機器はフォークリフト、パレットローダー、かご車、WMSには無線ハンディターミナルが使われている。日配品でも取扱単位はプラスティックコンテナで、シンプルそのものである。取扱商品は日配品、青果、精肉、鮮魚、冷凍食品などです。乳製品は見られなかったが時間帯が違うのでしょうか。
商品は店舗別にコンテナに入れられ、ドーリーに載せられて入荷する。商品のEAN(JANと同じ)をハンディターミナルのスキャナーで読み取る。庫内の近くのプリンターから店舗別ラベルが発行される。天井から下げられた店舗名のカードの下に空のかご車が置かれている。コンテナにラベルを貼って仕分ける。実に単純です。仕分けミスは3/1000。日本では考えられないレベルの低さです。これでも欧米では標準に近いのです。配送時間は店舗ごとに決められており、指定時間の+−15分以内で配達する。
ここで注目されたのは3PL、エクセル社の社員教育であった。こちらは、「オープンドア方式」を採用し、従業員をBuddy(仲間)と呼び、上下の風通しを良くする運動をしていた。半世紀前アメリカから日本に来た「Human Relations」人間関係改善運動である。
また、社内資格試験制度があり、ND9という資格を取ると、無学歴でも幹部に登用されるということである。
☆ アパレルのシュリンク輸送“Marks & Spencer”
マークス&スペンサーの国外向け物流センターで、日配品、美容健康商品、アパレルと幅広い商品を扱っている。ここでは、世界的ガス製造業BOC社の物流子会社GIST社が担当している。社名GISTは”Logistics”の両側のスペルを取った残りである。国内向けの日配品の物流はテスコとほぼ同じである。物流ではないが、ランチボックスを扱っていることに興味を引かれた。昼前に仕出屋(イギリスではなんというのでしょうか)から納品された弁当をビル別、会社別、部課別に、升目の棚に仕分け、コンテナに入れて運んでいる。
CTスキャンのようなシュリンク包装
M&Sの国外店に送るハンガーもののアパレルは、専用のポリ袋に入れ、CTスキャナーの様な装置を通すと空気が抜かれ、アパレルが圧縮され、体積が減少する。これにより、運賃が低下するということです。日本の収納袋のアイデアであり、十数年前に開発したものです。なお、GIST社の親会社は世界的なガスの大企業BOCである。
3PLの各社は4PLという言葉を使っている。この4PLはECRと同じようにコンサルタント会社によって商標登録されている。4PLという言葉は大部分がコンサルタント業務の意味に使っているが、実際はビジネスになっておらず、」物流を業務を受託する手段と企業のイメージアップだと思う。
☆ 日本に学んだか ドラッグストア“Boots”
1877年、J. C. Boots氏が,ロンドンから北へ、200kmのノッティンガムに薬局を開いたのを、始めにして、日用品、写真用品、めがね、子供用品、食品、家電とアイテムを拡大、併せて、医薬品の製造、卸売業を展開し拡大、成長した。年商53億2700万£(約1兆円)店舗数1750店である。
Boots社が1966年に建設した物流センターは超機械化、高度IT利用の物流センターであった。
30年前といえばコンピュータのハードもOSも未成熟だった。
ブーツのAフレーム
自動倉庫の中にGathering Towerというスタッカークレーンがあり、そこに人が乗ってピッキングするシステムでケース用とピース用があった。1985年、新しいケースピッキングのセンターを建設した。このセンターは「床と屋根」があるだけで、マテハン(物流機器)はフォークリフト、パレット、ロールボックス(かご車)だけだった。1990年代から欧米のWMSは、マニュアル志向に移っています。今回、我々が視察したのはロンドン郊外ノッチンガムの本社と同じ敷地内にあるセンターです。ここには目新しいものはなかったが高度に機械化したセンターである。トート(コンテナ)用自動倉庫は4万個の収容能力である。ピッキングにはAフレームといわれる医薬品・化粧品の小物の自動ピッキング装置が導入されている。入荷から出荷まで高度なWMSを構成し、省力化と高品質なセンターであった。日本のドラッグストアと同水準か、それ以上である。日本のドラッグストアより優れているのは自動ピッキングのA−フレームとカートン用自動倉庫があることである。この物流センターに近いものとしては、花王システム物流のイトーヨーカドー専用センターが上げられる。
☆ 厳しいRFIDの現実
今回の視察の主要テーマーはRFIDとSCMです。メトロのFuture Store(未来店)のRFIDの利用はDVDの万引き防止の機能であり、それ以外のRFIDの効果は認められない。メトロ未来店の見学には胸が高鳴った。また、メトロ側も多数のスタッフを揃え、我々を迎えてくれました。プレゼンテーションルームが用意され、RFIDの付いた商品棚に置かれ、陳列棚にはRFIDのスキャナーが付いている。商品を取ったり、置いたりすると在庫の変動 や棚割の変化がモニターに表示される。また、商品を手に取ると、商品説明がモニターに出ます。
メトロのPSA(Personal Shopping Assistant)
しかし、参加メーカーはジレット、クラフト、P&Gとチーズの4社であり、ジレットはたったの3アイテムである。POSは依然としてEANコードである。プロモーション用のビデオCDと日本で流れている情報と、現実の隔離は大きかった。特に、物流面では何もしていないと言ってよいだろう。説明では、今年10月からベンダー10社の商品を270店に導入するとのことだが、ICタグのコストは30k〜80k(1k1.4円)では平均単価の安い日用品、食品にはムリだろう。DVDについては万引き防止の機能で採算に合うが、それ以外のRFIDの効果は期待できないでだろう。今年の秋に本格的実施が行われるかどうか楽しみである。
むしろ目を引いたのは60台のPSA(Personal Shopping Assistant)と呼ばれるセルフチェックカートであった。使えそうだが、人間性善説に基づいたものであり、抜き取り検査をやらなければ、万引き防止は出来ないと思う。このPSAはEANバーコードで作動するので、RFIDとは何の関係もない。
イギリスではテスコのホーブ店に行きました。ジレットの一部の商品に万引き防止の磁気タグとRFIDのチップが両方付いていた。客が商品にタッチすると防犯カメラが作動すると、日本で報じられていることを店長に聞いたら、「私は知らない」とまじめな顔で答えたのには驚いた。
高度情報化社会とはいえ、重要な情報は自分の目で、自分の耳で確かめなければならないことを確認した研修ツアーでした。RFIDについてはさらに詳しく報告したい。