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7月28日(ブルームバーグ):中国の2.1%の小幅な人民元切り上げをめぐる興奮はどれも、ひどく見当違いだった。「予見し得る将来において」人民元相場を再調整することはないとの中国人民銀行の声明文が知らされる前でもそうだった。
総合的に見て人民元切り上げの発表内容は、人民元のドル・ペッグ(連動)制が無期限に維持されていた時のように、人民元の将来に不透明感を残した。最終的に人民元をドルではなく、通貨バスケットに連動させる計画は、人民元相場の軟調への転換など新たな問題を提起している。
本質的に、人民元をめぐる決定は常に政治的なものだ。民主的な国のような経済面での考慮がなされたとは限らない。中国にとって最重要目標は引き続き大量の雇用創出と、政情不安をコントロールすることだ。
輸出の大幅な拡大は中国の経済成長率、そして雇用創出の主な原動力だ。だから、貿易黒字急増を早期に抑制するような決定を当局が下す理由はない。
限られた影響
人民元切り上げを評価する際の第1のポイントは、中国の輸出額がドルベースで大きく変わる理由がないとみられることだ。ここ数年、ドルは他の主要通貨に対して大幅に下落しているが、米輸入物価や貿易動向への影響は非常に限定的だ。
例えば、円は2002年2月以降に対ドルで約18%上昇、インフレ調整後では約12%上昇した。米労働省の指数で見た日本の対米輸出品の価格はどうだろうか。先月は2002年前半を0.1ポイント上回っているだけだ。
競争の激しい世界で、中国の供給業者は人民元切り上げによる価格上昇を吸収するだろう。日本の輸出業者もそうだったとみられ、欧州勢も消費者にすべて転嫁するのではなく、相場変動の大部分を吸収してきたようだ。
中国の輸出額がドルベースで増加しないとすれば、貿易動向や中国政府が積み増すドルの規模に直ちに影響が出ることはない。これは、人民元切り上げ発表を機に広がった、米国債購入への影響とそれに伴う米金利への影響をめぐる興奮が誤っていた理由を示唆するものだ。
米国債購入
別の事態を想定してみよう。中国のドルベースでの輸出額が人民元切り上げに従って上昇し、かつ需要の価格弾力性も上昇したとしよう。つまり、2%の価格上昇で2%の需要低下が起こるとする。中国がドルベースで従来と同じ額を輸出した場合、中国の輸出量は減少する。この場合も、中国の米国債購入意欲が大きく変化する理由は見当たらない。
現実の世界では、既存の契約は数カ月先まで決まっており、他の要素も効果が切れるまで時間がかかるとみられる。この結果、米貿易赤字は短期的に増加する可能性がある。「Jカーブ効果」と呼ばれるものだ。
もう1つの疑問は、通貨切り上げで米国のモノとサービスの需要が中国で変化するかどうかだ。米輸出業者が製品価格を据え置けば、中国での販売価格は下落する。ただ、中国から米国への輸入は米国からの輸出を大きく上回るため、小幅な輸入減少を補うには大幅な輸出増加が必要になるだろう。
通貨バスケット
中国が人民元を最終的にドルだけではなく、通貨バスケットに連動させる可能性を示したことは新しい問題をはらんでいる。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、サイモン・ヘイリー氏(ロンドン在勤)は27日、ドルが他の通貨に対して上昇し続け、中国当局が人民元の貿易加重ベースの価値を維持しようとした場合に何が起こるか分析したところ、人民元はユーロや円に対する上昇を補うため、ドルに対して弱含まざるを得ないとの結論が出た。
ヘイリー氏は「これは、ドル・人民元相場が多くの人が想定するような一方向への動きにはならない点を強調するものだ。新たな制度は依然として、中国当局に大きな裁量を与えている」と説明した。
(ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:China's Yuan Decisions As Inscrutable as Ever: John M. Berry (抜粋) {NXTW NSN IKBKMO1A1I4H 更新日時 : 2005/07/28 15:20 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html