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国際通貨・金融問題への政治経済学的接近 加野 忠
スイーブルックの分析がもたらす政策的な含意が不明確に思える。
米国がウエーバーの言う寄生的な金融資本の優位な社会
(Rentの Gewinに対する勝利)になることを、組み込まれた相互作用構造への影響を除き、
格別懸念してはいないようだ[37]。それでは米国の構造的権力の求める証券化、
直接金融化で各国の金融・資本市場の同質化が進めば、国際金融システムは安定し、
資源の最適配分上好ましい結果となるというのだろうか。実態は競走上優位にある
米国金融機関が、中途半端に自由化が進む各国市場で一種の「制度的裁定取引」
を行って巨額の利益を享受するなどの跳梁をゆるし、寄生的利潤の追求を可能にすることで、
市場の不安定化・不健全化を助長するのではないか。日本でも過去に日経平均の裁定取引や、
企業の粉飾決算を隠蔽するデリバティブ取引などで米国金融機関は巨額の収益をあげたし、
今後の不良債権処理をめぐる投資ファンドの活動でも似たようなことが起きよう。もちろん自由化政策の整合性のなさ、緩慢さなどを利用されただけで、責任は専ら無能な日本の政策当局者や業界関係者らにあると反論するだろうが、このような現象まで自由な取引のもたらす経済厚生の増進と呼べるのだろうか。
米国の構造的権力による国際金融市場の支配の行き着くところは何だろうか。
今後も自由主義市場経済をイデオロギーの基盤として、国際資本移動の自由が世界経済の厚生を高めるという確信の下で「国際的受動主義」のスタンスは維持されるだろう。
しかし貿易の自由化と異なり、自由な国際資本移動擁護論については、
バグワティ[38]がウオール街=財務省複合体の利害を反映したイデオロギーに過ぎないと
批判したこともあり、経済学者間での大きな見解の相違がある。
しかも国際資本移動の巨大化とスピードの加速は、外国為替・金融市場の変動性を高め、
金融危機を続発させている。
http://homepage3.nifty.com/kanotadashi/political%20economy%20of%20money%20and%20finance.htm
彼女によれば戦後の国際通貨体制の変遷は、米国が覇権国として衰退する歴史ではなく、
資本移動の自由をもたらす金融市場の世界的統合の歴史として把握すべきなのだ。
この流れは米国の構造的権力を強化するが、その他の国々には選択の自由を制約するという
非対称的な作用を及ぼす。なぜならばその他の国々に対しては、
金融のグローバル化が国家と市場の均衡を崩し、民間企業や個人は自由に富を海外に
移転できるようになるから国家の力を弱める効果をもつからだ。
これに対して米国は自国通貨建てで過剰支出のファイナンスが可能なために、
他国、とくに日本の貯蓄を利用できる。その意味では八〇年代の米国の双子の赤字は、
構造的権力の指標でもある。日本の債権国化は進んだが、これで米国の構造的権力の基礎を
侵食することにはならない。日本は安全保障面と経済面で脆弱な立場にある。
輸出市場を大きく米国に依存し、巨額な対外資産がドル建てであることにそれが現れており、
自立した金融上の指導力を制約されている。
http://homepage3.nifty.com/kanotadashi/fx%20policy3%20files.htm
その覇権の下に構築されたブレトンウッズ体制のゲームのルールを
自ら破ってドルを切下げた米国は、むしろ「民営化」された国際金融システムの中で、
新たな優位性を獲得した。田所[二〇〇一]も指摘するように、経済の実態面での
巨大さに加えて金融市場の圧倒的な優位性は、米国の「構造的権力」を構成する[111]。
基軸通貨国の特権を駆使して、国内外の利害対立を緩和・吸収を図るために
成長重視のマクロ経済運営を追求する中で、周期的に訪れるドル危機に際して、
そのコストを他国へシフトできたのは、その力の行使の結果と言えよう。
http://homepage3.nifty.com/kanotadashi/fxpolicy2.htm