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日経産業新聞
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文化や雇用保護、前面に
米ペプシコによる仏ダノン買収を阻止せよ――。フランス政府はペプシコが何も発表していない「うわさ」の段階で、大々的に買収反対キャンペーンを繰り広げ始めた。米社の買収による人員整理などを懸念する首相は「国家利益の保護」を理由に買収反対を表明。シラク大統領も二十一日、自らこの問題に関与する意向を示しており、波紋が広がっている。
買収観測が広がり始めたのは今月上旬。業界紙シャレンジの記事が発端だった。その後経済紙レゼコーなども報道し、憶測が広がった。ペプシコは「あらゆるオプションを検討中」と繰り返し、観測をかえって勢いづけている。ダノンのフランク・リブー会長は二十一日付経済紙レゼコーに登場し、「ペプシコから公式・非公式の打診は何もないが、提案があれば現在の経営モデルを維持するため会社を守る」と拒否姿勢を鮮明にした。
「ダノンはフランス人にとってシャルトルの大聖堂のようなもの」――。同社は世界遺産に指定されている有名教会に比肩されることもある。代表的製品のヨーグルトはチーズと並ぶデザートの定番。飲料水ブランドも持ち、日常文化と直結した世界に誇れる企業とみなされている。対するペプシコはフランス人から見るとコーラやハンバーガーなど「ジャンクフード」のイメージが強い。国をあげての反対の背景には、そうした企業にダノンがのみ込まれることへの嫌悪感がある。
もともとフランスでは市場万能の自由主義(リベラリズム)への拒否反応が強い。英米流の企業経営モデルや厳しい競争が広がることに警戒がある。巨大企業ペプシコがリベラリズムの旗をひっさげ踏み込んでくる印象を多くの仏国民が抱く。
ドビルパン首相は二十日、雇用、産業、研究開発の保護を理由にダノンを守る意向を示した。欧州連合(EU)憲法が国民投票で否決された後に事実上更迭された前首相に代わり、六月に就任した同首相にとってリベラリズムと一線を画す姿勢は不可欠。フランスの失業率は一〇%前後で推移し、雇用対策は最重要課題。ダノンがペプシコ傘下に入り人員が削減されれば、政権の一層の弱体化につながりかねない。
一昨年、カナダのアルミ大手アルキャンが仏ペシネー買収に動いた際には政府は手を打てず、買収が実現。その後、同社は事業分割に追い込まれ政府への批判が噴き出した。仏に多くの拠点を持つ製薬大手アベンティス買収にスイスのノバルティスが名乗りを上げた際には政府は一転して防戦、仏サノフィ・サンテラボによる買収の道筋をつけた経緯がある。
ダノンに対しては、これまでにスイスのネスレも買収に意欲を見せた。フランスでは「ネスレが白馬の騎士としてダノンを買収してくれれば」との声まである。リブー会長も「ネスレは欧州企業などで文化もそんなに離れていない」という。ペプシコの買収を退けられても、いずれ再びM&Aの対象になると予想しているようだ。
ダノンは日本のヤクルト本社に二〇%出資しており、ダノンの将来はヤクルトの経営も大きく左右する。ヤクルト株を取得したダノンが今度は巨人ペプシコにのみ込まれるのか。世界の食品メーカーがペプシコの一手をかたずをのんで見守っている。
(パリ=安藤淳)
【表】ペプシコとダノンの比較
ペプシコ ダノン
売上高 292億ドル(8%増) 166億ドル(137億ユーロ、4%増)
純利益 42億ドル(18%増) 3億8500万ドル(3億1700万ユーロ、62%減)
時価総額 914億ドル 288億ドル(237億ユーロ)
(注)業績は2004年12月期、カッコ内は前年同期比、時価総額は直近ベース