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政権を狙う政党が「増税」を看板に掲げて戦う選挙も珍しい。ドイツで九月半ばにも実施される総選挙に向けて、最大野党のキリスト教民主同盟(CDU)は、政策綱領(マニフェスト)に付加価値税(間接税)の引き上げを盛り込んだ。
国民が嫌うのを承知で増税を明言したのは、財政の悪化に歯止めがかからないからだ。最大の原因は景気不振である。経済成長率は一%台で低迷し、失業率は一一%台と高水準のままだ。税収は上がらず、失業問題が深刻な旧東独地域を支援する財政支出も減らない。
放置すれば、財政赤字の抑制を義務づけた欧州連合(EU)の安定・成長協定に、二〇〇七年まで六年連続で違反してしまう。EU中軸国としてのドイツの地位は揺らぎ、発言力は弱まるだろう。CDUは国民に「経済大国の没落という厳しい現実を直視せよ」と訴えたといえる。
与党の社会民主党(SPD)も政権維持のために、なりふり構っていられない。付加価値税率は据え置き高所得者の所得税負担を増すなど労働者寄りの綱領をまとめ、CDU案を「低所得者を直撃する」と批判した。これまで進めてきた構造改革路線は、雇用などで国民の痛みを伴うため大きく後退させた印象だ。
国民は景気不振に不満を高め、競争力回復に必要な構造改革にもついていけない。日本にも似たドイツ経済のジレンマがここにある。
五月の地方選ではSPDの牙城で与党が惨敗した。これを見てシュレーダー首相は、来年の任期切れまで待てば再選は不可能になると判断したようだ。七月に自らの信任投票を連邦議会で発議し、わざと否決して不信任にするという奇策に打って出た。議会解散と繰り上げ選挙に持ち込み起死回生を狙う作戦である。
だが世論調査では、旧東独出身の女性党首メルケル氏が率いる野党CDUが与党SPDの支持率を引き離し、七年ぶりの政権交代が現実味を帯びている。ただ両党とも単独政権には手が届かず、CDUとSPDの大連合の可能性もある。
日本の財政赤字はさらに深刻だ。景気と構造改革の悩みも共通する。大荒れのドイツ政局と、独国民が選挙で下す審判に目が離せない。