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天下り 経団連『受け入れ停止』検討報道の衝撃
「日本経団連は、天下りの受け入れ停止を検討している」−。こんなニュースが流れた。奥田碩会長の強い意向だといわれる。官庁街の東京・霞が関には“激震”に違いない。今後の展開は不確定だが、官庁と民間の癒着の温床ともされてきた「天下り」だけに、余波は静かに広がる。経団連がなぜ−の背景を探る。
「本当なら、困ったことだと省内でも持ちきりですよ。一気に(天下りを)なくすことはできない」
国土交通省の幹部は、当惑気味にこう言う。
経済産業省の官僚も「民間側はこれまで『(天下りを)やめてくれ』と正面切っては言えなかったが、受け入れ側のトップの意向の波及効果は絶大だ。役所側に与える心理的効果は大きく、民間側との天下り窓口の官房長が協力要請しにくくなるのでは」。
日本経団連が「天下り」の受け入れ停止を検討しているとの報道が流れたのは二日のことだ。奥田会長が十一日に開かれる会長・副会長会議でこれを提起して、賛同が得られれば、約千五百社の会員企業に要請するとの内容だ。
背景には、日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件がある。天下りの元公団理事らが中心的役割を果たしたとされる。
ただ、長年の慣習を打ち破る一大事だけに、経団連の広報担当者は「橋梁談合で、天下りに問題があるとの認識はあるが、何も決まっていない。十一日に話し合われるかどうかも未定」と慎重な姿勢を崩していない。奥田会長の決断次第という状況のようだ。
橋梁談合の当事者、三菱重工業は、一部報道で新規の天下りの受け入れを取りやめる方針とされた。しかし、その後同社が発表した再発防止策では「その委嘱趣旨及び業務範囲を明確にし、透明性を確保する」との条件つきで、受け入れ続行を打ち出した。
経団連が実際に受け入れ停止要請を出した場合については「そこの時点で判断せざるを得ない。少なくとも今の時点では必要との判断だ」と話す。
企業統治(コーポレートガバナンス)に詳しい青山学院大学の八田進二教授は「これまで経団連の企業行動憲章の倫理規則が実効性を持って使われた例はほとんどなかった。今回の談合事件では、企業の代表を呼んで活動自粛処分を伝えるなど、見える形で動いている。今回はある程度、本気なのではないか」と話す。
「天下り」のあり方を見直す動きは、経済同友会からも出ている。五月、局長級以上の幹部職員に民間人を登用する「政治任用」制度導入、官民人材交流基本法制定など、公務員制度改革に向けた提言を発表。この中で「『天下り』と称される退職公務員の再就職に関する大きな問題は、受け入れに伴う便宜供与などの癒着である」としている。
ただ、「単なる官からの『転職』に関しては肯定的にとらえる方向で考えるべきだ」とも。経済同友会企画部の担当者は「悪いことをするという前提で、官から民への人材移動を禁止するというのも違うと思う。優秀な人材は官にも民にも必要だ」と話す。
橋梁談合事件で奥田会長は当初、「独占禁止法ができる前から談合があり、すぐなくすことはできない」と発言していた。
「法令順守、自由で公正な市場、透明なルールという観点から、談合は必要悪ではなく、絶対悪と認識、談合をやめさせるには、天下りの受け入れを停止することが決定的と判断したのではないか」
こう指摘するのは、元特殊法人労連事務局長でジャーナリストの堤和馬氏だ。
だが、前出の国交省幹部は「今回の橋梁談合事件の根っこに、天下り実態があるという問題認識があるのは分かる。しかし、民間で活躍したい気持ちと再就職を民間に頼らざるを得ない現実がある。退職年齢を少しずつ引き上げるということはできるが…」と言う。経済産業省官僚も「天下りをストップさせるには、公務員の第二の人生をきちんと考える仕組みを整えることが必要だ」と指摘する。
というのも、キャリア官僚の場合、五十歳過ぎになると同期がどんどん退職していき、最後まで残った者が事務次官になるという早期退職勧奨という人事慣行があるためだ。
国交省の場合も現在、審議官クラスの五十一歳が勧奨年齢で、民間の再就職先がなければ、年金が支給されるまで十数年間の生活が保障されなくなるという危機感がある。
八田教授は「現行の公務員制度では、天下って人生の帳尻を合わせるという現実がある。能力を持った官僚を活用できるよう国の側が仕組みを変えない限り、天下りを完全になくすことは難しいだろう」と言う。
旧建設、運輸、農林水産各省を中心に天下りを数多く受け入れてきたゼネコン業界。今回の動きをどう受け止めているのか。
中堅ゼネコン幹部は「橋梁談合事件で、有力企業から逮捕者を出した、ということは、財界トップとして無視できない。立場上、天下り停止は言わざるを得なかったでしょうが、公務員全体の人事制度の枠組みができない中、実行に移せば霞が関は大混乱に陥る」と指摘する。
同時に「建設業界もこれまでお付き合いとして天下りを受け入れてきたのは事実だが、受注環境が年々、悪化していく中、いつまでも高給で天下り官僚を養っていく時代でもない」と心境を吐露する。
公務員制度の改革は五年以上前から論議されてきたが、天下りや争議権、能力主義の導入などをめぐって人事院や総務省、労働組合の意見が対立し、法案さえ提出できない状態が続いている。早期退職勧奨制度の見直しなどがなされないなら、天下りの停止が一気に進むことは不可能に近い。
こうした中、経団連は今年四月、「さらなる行政改革の推進に向けて−国家公務員制度改革を中心に」を発表し、「早期退職慣行の是正」と題していう。
「民間へのいわゆる『天下り』への押しつけがなされないようにするため、役職定年制を導入した上で、公務員として残ることを希望する者は、スタッフ職として定年までの雇用を選択できる複線型人事制度を設けるべきだ」
堤氏は「これまで天下り問題は、政府も財界も必要悪として事実上、野放し状態にあったが、財界としても同時に、公務員制度改革の必要性を打ち出している点は画期的。その延長線上での奥田会長の意向ととらえるべきだ」と指摘する。
東北公益文科大の北沢栄教授(公益学)は「財界トップの奥田氏だけに、非常に大きな意味がある。単なる天下りの受け入れ停止だけでなく、公務員制度改革の必要性も視野に入れたもので、これまでより一歩踏み込んだ内容」と高く評価し、こう予測する。
「天下りの送り手側の省庁に、一時的にブレーキをかけるだけでなく、天下りを含む公務員制度改革に拍車がかかる。早期退職勧奨や特権的なキャリア制度を見直す大きなきっかけになる」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050708/mng_____tokuho__000.shtml