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今週の日本債券:もみ合い、米金利上昇や円安警戒−潜在需要が下支え (ブルームバーグ)
2005年7月4日(月)03時00分
7月4日(ブルームバーグ):今週の債券相場はもみ合いを予想する見方が
多い。米債相場下落や為替市場でのドル高・円安に加えて、5日には10年国債の
入札を控えており、週初の取引では金利上昇圧力が強まる公算が大きい。ただ、
6月調査の企業短期経済観測調査(日銀短観)は、景気の先行き不透明感を残す
内容だったことから、投資家の潜在需要が相場を下支えするとみられている。
新発10年国債利回りは前週も低下基調が続いた。原油価格の高騰やこれに伴
う米国の株安・債券高を受けて、27日には1年10カ月ぶりの低い水準となる
1.180%を記録。その後いったんは1.210%まで上昇する場面もあったが、30日に
は1.165%までさらに水準を切り下げた。日銀短観が予想より強めとなるとさすが
に手控えムードが広がったが、それでも1.2%手前で押し目買いが入ったもようで、
結局は24日の終値より3ベーシスポイント(bp)低い1.170%で引けた。
市場参加者の間では今週の10年債は1.2%を挟む推移が見込まれている。1
日の米債相場が急落したこともあり、週初には10年債入札に備えたヘッジ売りで
1.2%台前半に上昇しそうだ。ただ、日銀短観では景気の踊り場からの脱却が後ず
れする可能性が示されただけに、上期の折り返しに当たって投資家の需要が示さ
れれば、入札通過後には再び1.1%台に低下しての取引となりそうだ。
10年債の入札前にヘッジ売り
1日の米国市場では景気好調を示す指標発表を受けて債券相場が急落し、10
年国債利回りは前日比14bp高い4.05%付近となり、一方でドル・円相場は昨年8
月以来の高値圏となる1ドル111円台後半まで上昇した。
日銀短観では景況感の改善傾向が示されたこともあって、前週の半ばにか
けて金利低下が進展していた当時と比べて外部環境が悪化しており、6日の10
年債入札を前に週初の取引ではヘッジ売りが優勢となりそうだ。
新発10年債の表面利率(クーポン)は前回債より0.1ポイント低下の
1.2%が有力で、この場合は2003年8月債が1.0%をつけて以来の低い水準と
なるだけに、投資家の慎重姿勢を見込んで証券会社の売りが膨らむ。
もっとも、金利は6月半ば以降に予想以上のピッチで低下したため、投資
家の多くが買いそびれただけに、良好な需給関係はなお維持されており、こう
した潜在需要が相場を下支えするとみられている。
実際、「10年債入札ではクーポン引き下げの公算が大きいが、これだけ需
要が強いと時間をかければ消化されてしまうと見るべき」(トヨタアセットマ
ネジメント調査部・浜崎優シニアアナリスト)とも言い、入札に伴う金利上昇
は一時的なものとなる可能性が高い。
景気の踊り場脱却は後ずれ
日銀短観では業況判断指数(DI)が予想以上の改善となったうえ、設備投
資計画も上方修正されるなど、景気が自律的な回復途上にあることを裏付けたが、
先行きはDIが悪化するなど不透明感を残す内容となった。
このため、短観自体が債券相場に及ぼす影響は限定的となり、むしろ6月29
日発表の鉱工業生産指数で生産の横ばい長期化が示されていただけに、市場は夏
場にかけての景気の踊り場脱却は困難との見方を強めている。
市場では、「日銀短観は見通しと比べると強めだったものの、金利が上昇に
転じるには力不足の感が否めない」(ABNアムロ証券・市川達夫チーフ債券ス
トラテジスト)と指摘されており、投資家の売り圧力も限られそうだ。
今回の短観からは景気動向を判断しづらかっただけに、当面は株価の動きを
見極めようとの雰囲気も広がっている。
日経平均株価は昨年7月1日の短観発表後に低迷が続き、市場では今年も同
様の推移をたどるのではないかと指摘される。「米国の株価が利上げ休止をはや
した反動で下げているため、日本株も去年と同じで2番天井の印象が強まるよう
だと、10年債の1.2%台では着実に押し目買いが入る」(みずほ証券・上野泰也
チーフマーケットエコノミスト)と、株安が債券相場を支えると予想する。
10年債の1.2%台では需要
今年度に入って投資家は債券の残高積み増しが遅れており、金利の上昇局面
での買い意欲は強いとみられている。
新発10年債利回りは今年度はじめに1.3%台後半をつけたものの、その後は
段階的に水準を切り下げて、前週には1年10カ月ぶりの低水準となる1.165%ま
で低下する場面もあった。4月、5月には外国人投資家が大きく買い越す一方、
大手銀行は売り越しとなるなど手控えモードを強めていただけに、景気の踊り場
脱却が後ずれしそうとの観測もあって10年債の1.2%台では需要が見込める。
前週には最大の注目材料であった日銀短観を通過したうえ、上期も折り返
したことで投資家の焦りも出てくる。市場では、「さすがに中短期の金利はこ
こから下げ渋る。ただ、入札通過で10年債利回りは再び低下余地を探る」
(三井住友海上火災保険投資部・高野徳義グループ長)との指摘もある。
予想レンジとコメント
7月1日の午後5時までに集計した、市場関係者の今週の予想レンジは以下
のとおり。10年国債利回りは270回債。
◎岡三証券・坂東明継シニアストラテジスト
先物9月物=140円70銭−141円40銭
10年債利回り=1.22%−1.15%
「週前半は入札を意識してもみ合う可能性もあるが、後半は買いに支えら
れてしっかりしそう。短観改善でも少し売られた程度で、その後は買い戻しが
入った。入札前にヘッジや持ち高調整売りが出ても、入札が通過すれば買い戻
されそうだ。買い方は十分に手当てできていないとみられ、しばらく需給相場
が続こう。これだけ押し目を待っている投資家が多いと相場は下げない」
◎トヨタアセットマネジメント調査部・浜崎優シニアアナリスト
先物9月物=140円75銭−141円50銭
10年債利回り=1.23%−1.15%
「高値もみ合い。金利がちょっとでも上昇すると買いが入るので、多少の
ネガティブな材料でも相場は下がらないだろう。10年債入札ではクーポン引き
下げの公算が大きいが、これだけ需要が強いと時間をかければ消化されてしま
うと見るべきだ。短観への反応が鈍かったのは、好需給に加え、米インフレ懸
念で利上げが続いて景気にマイナスというイメージが強いことが挙げられる」
◎大和住銀投信投資顧問債券運用部・伊藤一弥ファンドマネジャー
先物9月物=140円80銭−141円40銭
10年債利回り=1.20%−1.13%
「短観を通過して材料難。景気に対する解釈は強弱感が対立したため、金利
市場も方向感を探りあぐねるのではないか。10年債の入札も投資家の潜在需要を
見込んだ業者の応札で無難にこなすとみる。一方、米債市場では一段のフラット
(平たん)化がきつくなるとみており、これに追随している円債市場にもいずれ
悪影響が及ぶ。モメンタム系ファンドなどの手仕舞い売りには警戒が必要」
◎三井住友海上火災保険投資部・高野徳義グループ長
先物9月物=140円80銭−141円50銭
10年債利回り=1.21%−1.14%
「入札前は先物141円挟み、10年債利回りも1.2%挟み。さすがに中短期
の金利はここから下げ渋る。ただ、入札通過で10年債利回りは再び低下余地
を探る。景気が上向くとの確信が依然として得られないうえ、世界フラット化
の流れもある。資金がだぶつくなか、絶対水準よりイールドカーブから見た買
いが入りやすい。長期債は株価との相関性が薄れ、需給の世界で動いている」
◎日本投信委託・山田聡運用第二部長
先物9月物=140円60銭−141円50銭
10年債利回り=1.23%−1.14%
「相場の堅調地合いが続く。曲がりなりにも足元の景況感は改善方向にある
だけに、10年債の利率の引き下げは慎重ムードにつながりかねないが、買いそび
れていた向きの需要は根強い。海外の市場と比べても国内債は相対的な割安感を
失っていない。ただ、7月に国債入札が続くことは投資家にとって買い手控えの
理由になるため、好需給とはいえ10年債の販売に時間を要する可能性はある」
◎UFJつばさ証券投資戦略部・鹿野達史チーフマーケットエコノミスト
先物9月物=140円75銭−141円55銭
10年債利回り=1.21%−1.13%
「いったん調整が見込まれるものの下値も限られる。10年債の入札は1.2%
クーポンを予想。水準的な妙味は乏しく、イールドカーブ上の割高感も気がかり
だが、長期・超長期債の入札が6月16日の20年債以来のため無難に通過できる。
米国景気は夏場に減速が明らかになるとみられ、国内景気も早期再加速の期待が
小さくなるため、長期金利は秋にかけて基本的には低位安定が続くとみる」
◎ABNアムロ証券・市川達夫チーフ債券ストラテジスト
先物9月物=140円50銭−141円50銭
10年債利回り=1.25%−1.15%
「10年債は1.2%を挟んでのもみ合い。日銀短観は見通しと比べると強めだ
ったものの、金利が上昇に転じるには力不足の感が否めない。10年債の入札に向
けてヘッジ売りが先行して、その後は一進一退の展開が続くのではないか。その
入札でクーポンが1.2%となれば売れ行きに不安が残るが、先物やスワップ対比で
は割安になっているため、業者はヘッジをかけながら落としていくと予想する」
記事に関する記者への問い合わせ先:
東京 赤間信行 Nobuyuki Akama akam@bloomberg.net
谷合謙三 Kenzo Taniai ktaniai@bloomberg.net
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