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ニュージーランド郵政公社傘下の国有キウイ銀行が、設立三年目で初めて年間黒字になる見通しとなった。顧客は毎週二千人ずつ増え、住宅ローンや預金は半年で二割伸びた。好調に成長路線を走る新参の公的銀行に刺激され、他行もサービス向上に動き出した。(ウェリントンで、野沢康二)
首都ウェリントンから車で一時間あまり。人口二千人のフェザーストンは羊や牛の放牧地に囲まれた典型的な田舎町だ。郵便局とキウイ銀の看板を並べた窓口には、高齢者が次々とやって来る。デーブ・バウムフィールドさん(73)は「ATMを使うより、やっぱり近所の銀行に来た方が便利だな」と話す。
一九九〇年代半ば、この町では唯一の銀行が合理化策で閉鎖された。住民は車で二十分かけて銀行へ行かなければならなくなり、地元での商売をやめる店もあった。
キウイ銀の支店は二〇〇二年の開設。近さと手数料の安さが人気を呼び、周辺住民ら千二百人が口座を開いた。責任者のブレンダ・ベネッツ・グリーンさん(50)は「今も毎日のように口座開設がある」という。新しいカフェなどもオープンし、町に活気が戻ったという。
ニュージーランドは郵政事業改革の先駆けだ。政府は一九八〇年代半ばからの行政改革で郵政事業の郵便部門を公社化し、郵貯に相当する銀行部門を外銀に売却した。金融の規制緩和もあって同国の銀行はすべて外国資本となった。その後の競争激化で各行が相次ぎリストラに乗り出し、同国内の銀行支店数は九五年の千四百余りから八百五十まで減った。
金融サービスの低下への危機感が広がったことから、政府は二〇〇二年、郵政公社の一〇〇%子会社として個人向け取引を中心にしたリテール銀行を立ち上げた。それがキウイ銀だ。郵便局を間借りする形の支店は当初百七十だったが、現在では三百以上ある。
二〇〇四年下半期(七―十二月)には、純利益が二百五十万ニュージーランドドル(約一億九千万円)と、開業以来初めて半期で利益を出した。今年六月までの通期でも黒字になる見通しだ。
郵便局を使ってコストを抑え、ローン金利を低くし、口座開設料も課さない。支店によっては週末も営業するなどマニュアルに頼らない工夫を重ね、顧客数は三十五万人と、一年前より十万人増えた。個人向けに限っていた業務は、中小企業にも広げる方針だ。
銀行業界でのシェアは資産規模で一%以下。大手行幹部は「小さすぎて脅威にはならない」と言う。しかし他行も料金を下げたり、支店を増やすなど、対抗する動きをみせつつある。
徹底した規制緩和を続けてきた同国では、税金を使った銀行経営に疑問の声もある。マッセイ大学のデビッド・トライプ銀行研究センター長は「郵便局を使った銀行のアイデアは悪くないが、政府ではなく民間がやるべきだ」と話している。
【図・写真】店舗の近さと手数料の安さが人気を呼んでいるキウイ銀の窓口