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「官製市場」の裏側
香川県の成果主義の試みは
「公の施設」の管理運営を民間企業などに開放する指定管理者制度で、一定以上の成果を上げれば、委託料の増額分として報奨金を支給する仕組みを導入する自治体がある。管理者側のモチベーションを高めるため香川県が採用した試みだ。今のところ“成果”はまずまずのようだが、民間に運営を任せた途端、自治体側が強いる成果主義の是非は。 (吉原康和)
瀬戸内海に面する高松港周辺の再開発地区「サンポート高松」。その中核施設として、二〇〇四年春にオープンした四国一の高さ(百四十一メートル)を誇る高層ビル「高松シンボルタワー」の四、五階部分に情報通信交流館がある。香川県が運営業務に導入した報奨金制度の第一号だ。
同館は、情報通信に関する展示スペースやパソコンのレンタルスペースなどを備える県民利用施設として、香川県が民間活力を導入して整備した。
〇二年に同県が管理・運営を手がける事業者を決める入札を実施した結果、凸版印刷やエヌ・ティ・ティ・ドコモ四国など十社からなる「凸版・ドコモグループ」が選ばれた。
実際の運営主体は、同グループが設立した特定目的会社「かがわ県民情報サービス」で、昨年四月から、指定管理者として情報通信交流館の運営を始めた。
同県が報奨金制度の採用に際し、成果のモノサシにしたのは年間来館者数。来館者数に応じ、委託料である約四億円の「基本サービス料」の支払い額を増減させる仕組みだ。
報奨金の具体的な内容はこうだ。
同館では、年間来館者数が十万人以上十三万人未満は基本サービス料に変動はないが、十三万人以上十六万人未満は五百万円アップ、十六万人以上に達すると一千万円を増額。逆に八万五千人以上十万人未満は五百万円、八万五千人未満は一千万円減額する。
来館者数を成果の目安にした理由について、同県は「同館の目的の一つがサンポート高松のにぎわい向上に寄与することにあったため」と説明する。
■初年度は基準値達成し500万円増
初年度の〇四年度の来館者数は約十三万千人で、基準値をクリアし、管理者側に五百万円の報奨金が支給された。
「かがわ県民情報サービス」事務局次長の横田喜勉氏は「(報奨金の)増減幅はそれほど大きいとは思わないが、十年ぐらいの長期展望で見ると、年間約四億円と決められた委託費総額は厳しい数字だ。IT分野は技術革新の激しい世界だけに、二、三年先が見えないというリスクも大きい」と指摘し、「一年目は物珍しさできている人もいる。勝負は二年目以降」と分析。「リピーターを増やせるかどうかが今後の課題」と話す。
こうした報奨金制度は、同県では情報通信交流館以外にもある。県営駐車場や大型展示施設「サンメッセ香川」の二施設だ。
高松市内には、県庁近くの番町地下駐車場(収容台数三百三十九台)と、県民ホール隣接の玉藻町駐車場(同三百四台)の二つの県営駐車場があるが、県営駐車場の成果のモノサシは、この二つの駐車場の〇二、〇三年度の駐車場収入額などをベースにはじき出した基準額だ。
〇五年度の場合だと、基準額(年間一億五千四百−一億五千九百万円)よりも、百万円増加するごとに二十万円分の報奨金を支払う。逆に、基準額より百万円減少するごとに十万円分を県に返還する仕組みだ。
県営駐車場はこれまで、管理運営を県の外郭団体である同県駐車場管理財団に委託してきたが、同県の行政改革方針で同財団が廃止される方針を受け、指定管理者制度を導入。〇三年十二月に公募したところ、市内外から八社が応募し、その中から、地元のビルメンテナンス会社・西日本ビル管理が選ばれ、昨年六月から二つの駐車場の運営を始めた。
昨年、基準額より二百万円を上回り、委託費のほかに、四十万円の報
奨金を得た同社の小原康弘専務は「決められた額だと、これまでの請負と変わらない。報奨金制度は額の大小に限らず、あった方がいい。一定の努力目標にもなる」と制度を歓迎する。
また、財団の運営時代と比べ、サービスの違いも明らかだ。玉藻町駐車場の利用時間は深夜を含む二十四時間体制になったのに加え、番町駐車場も一日の利用時間が一時間半延長となった。小原専務は「財団時代は混雑に関係なく、一定の人員を配置していたが、時間帯などによっては人員配置を柔軟に対応するなどしてコストを低く抑えた。その分の経費をサービス向上に回した」と胸を張る。
他県や市町村からも視察や問い合わせも来ており、今後、指定管理者制度の導入に合わせ、報奨金制度を取り入れる自治体が増える可能性もある。
■「目立たぬこと美徳」の県運営
人口0・82%、事業所数0・91%、就業者数0・82%、県財政1・03%、病院数1・28%…。香川県が全国に占める割合を示した過去のデータから、「1%行政」と呼ばれる県政運営。無難で目立たないことが美徳とされ、「他の都道府県がすべてやってから最後にやる四十七番目行政」ともいわれる香川県が、指定管理者制度を導入したとたん、全国に先駆けて成果主義を導入したのはなぜか。
報奨金制度を採用した理由について、同県の担当者は「来館者が入っても、入らなくても管理者側の収入額が同じならば、民間事業者のインセンティブが働かない。頑張って、より魅力ある施設にするため、少しでも事業者側のモチベーションを高めることになれば」と説明する。
だが、県庁OBは「職員気質は、上司の命令には絶対服従で、争いごとを好まない滅私奉公型。誤りを認めようとしない典型的な無謬(むびゅう)性行政だ。直営または外郭団体での管理運営時代に、これまで成果主義的な発想がなかったのに、民間側に適正な成果目標を設定できるのか。上意下達のお上意識を感じざるを得ない」と指摘。そのうえで成果主義導入による弊害もこう懸念する。
「注意をしなければならないのは、成果主義が適する施設とそうでない施設の整理をしたうえで導入しないと、もっぱらコスト削減など、自治体側の都合で利用されかねない。数値目標だけを追い求めるあまり、商業的性格が強まることによって、公の施設の位置づけがあいまいになったり、官が民を『いじめる』構図になりかねない」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050626/mng_____tokuho__000.shtml