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移住して地球の反対側から祖国日本を見ていて不思議に思うことがよくあります。「何故だろう」と考え込んでしまいます。日本への作者の思いを綴って行きます。
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49・自由貿易協定 (2003年10月18日)
最近、自由貿易協定の動きが盛んになっていて、欧米を中心に次々に協定が締結されています。協定が締結されますと排他的になり、それ以外の国や地域は通商上不利になる、要するに囲い込みを行っている訳です。ガットからWTOを通じて世界は世界共通のルールを模索して来ましたが、世界中の国が納得する合意するというのは至難で、ほとんど進展出来ずにいます。自由貿易協定はこれに対して国もしくは地域間の交渉なので、合意点が見出せ易い特徴があります。日本は戦後一貫して政経分離の外交政策を採り政治的な色彩抜きで経済の交流を推進する事を目指していますが、本来政経の分離などはあり得ず、むしろ最近は政治的な意図を持って経済政策を行っているケースが多いように思います。官民一体となり戦い、市場を開拓するたくましい欧米そして中国の姿を見ていますと実害が出ない内に対応しておかないと日本が世界の市場から締め出されてしまうのではないかと危機感を抱きます。
欧米は欧州はEUという形で欧州を取りまとめ、歴史的に関係が深いアフリカ地域を経済的には傘下に収めています。そして米国は南米を含めた米州全体にインフラの共通化などを進め、経済的な一体化を目指しています。当地のニカノル・ドゥアルテ大統領が就任後、米国を訪問した際にブッシュ米国大統領が今まで無いほど丁重にもてなしていましたが、これなどしたたかな米国の意図の表れであると思います。要するに欧米は欧州、南北米州、アフリカの巨大市場を作り、中国・日本などのアジアを締め出しにかかっている訳です。一方中国はアセアンとの交渉を進め、アジア地域での中心的な存在を確固たるものにするべく邁進しています。中国で行われる国際見本市などでは政府の要人自ら力を入れ、官民全体で貿易の振興を図っています。このまま放置しておきますとアジアでも日本の入る余地は全く無くなってしまうように感じます。
最初自由貿易協定の事を考えた時に「自動車」「家電」などの分野では世界の市場から日本製品が締め出されてしまうのではないか?そのような心配をしました。しかしながら自動車メーカーや知名度の高い家電メーカーはさほど困っていないようなのです。トヨタもソニーも日本だけで製品を造っている訳ではないので心配は無いということのようです。例え欧米・南米のトライアングルが出来ても企業としてはその域内で生産した製品を売れば良いという訳で、何も日本で造ったものを売らなくても良いという訳です。このような事態になりますとますます日本の空洞化が進行することになるのでしょう。日本発祥の国際企業の意図と日本の国益とのずれが大きくなっているのかも知れません。
現在まで日本が締結した自由貿易協定はシンガポールだけです。これはシンガポールは都市国家であり、「農業問題が無い」からだと言うのです。日本が協定を協議する場合に一番守ろうとする権益が農業部門のようなのです。外から見ますとこの点はよく分からない事でしょう。日本は製造業が主力、そして現在ではサービス部門、アニメなどのコンテンツ産業が伸びており、経済全体での農業の割合というのは非常に小さいものになっています。これの小さな利益を守るために大きな権益・利益を放棄するのは到底理解出来ない事でしょう。
メキシコとの自由貿易協定の交渉が行われていますが、焦点は豚肉のようです。メキシコの安い豚肉が入ると日本の養豚業界は壊滅するので日本としては到底認める事が出来ないという訳です。メキシコから見ますと協定を締結すれば日本が強い製造業等で大きなメリットがある訳なのだから、自分が強い農業分野では譲歩、それも豚肉など量的にも貿易全体の中で占める割合も小さいものなのだから認めて欲しいと思っているのでしょう。日本の現政権が都市住民の利益を代表するものでは無く、伝統的な産業、農業や建設業などドメスティックな産業を基盤とした政権なのでメキシコの要求は到底受け入れる事は出来ないでしょう。これから本格化するアセアンとの交渉でもフィリピンは労働市場の開放、タイは米を要求して来るでしょう。先行している中国にどこまで食い下がれるのか危惧します。
ここメルコスール(南米共同市場:パラグアイ・ウルグアイ・アルゼンチン・ブラジル)もEUや北米と自由貿易協定の話が進行しています。そして中国、韓国などが話し合いを呼び掛けているようです。このまま放置しておきますと日本は南米から締め出されてしまう事になるでしょう。南米に関係している人々は日本が立ち遅れている現状を憂いていますが、現在日本の政策の中枢に居る人達がどこまで問題の重大さを理解しているのか疑問です。
国際的な競争力を無くして衰退してしまった産業や将来消滅が予想している業界を保護しても結果は余り変わらないと思います。日本は戦後一貫して自国のエネルギー確保の為、石炭産業を手厚く保護して来ましたが結局は産業は完全に消滅してしまいました。しかしながら「食」の世界は奥が深いものであるとも思います。オレンジ自由化の際には「日本の柑橘類は壊滅する」と大騒ぎになっていましたが、現在、八百屋の店頭には米国産のオレンジでは無くミカンは様々な日本国内産の柑橘類が並んでいます。農家と関係者の方が品種改良や生産コストの削減等に懸命に取り組まれた結果であると思います。このような例からも試練があると努力して乗り越えて行くものなのかも知れません。豚肉に関しても門戸を開放しても例えば安いカレー用の肉などは全て輸入品に置き換わるかも知れませんが、良質な黒豚などは残って行くことでしょう。第二の開国と余り恐れてはならないように思います。
農作物を即時、全面的に自由化しろとは言いませんが、従来のように関係団体や族議員を使って、声高にひたすら「絶対反対」を連呼するだけではもう既に通用しない時代になっていて、最近は政策でもマニフェストが示されるようになって来ていますが、このような問題についても「ある期間でこの対策を施すのでそれまでは関税は据え置いて欲しい」というような具体記な数値・方針を示して行く必要があるように感じます。競争力を失っている産業の中で何を残し再生を図るのか、国益は何かという事を官民一体となって検討し、国民全体で問題意識を持って外交の場で戦って行く必要に迫られており、そしてその為に残された時間は余り無いように感じます。