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(回答先: Re: 銀行預金だって自殺者増やすサラ金の資金源に使われている 投稿者 なおみん 日時 2005 年 6 月 17 日 22:34:25)
第5部米国で探る勝者の条件(3)潜在需要、先回りし発掘(IT金融の実力)2002/08/15, 日経金融新聞,
数学駆使し顧客動向解析
「買収マニア」と揶揄(やゆ)されるある銀行が、日本でも話題になっているカスタマー・リレーションシップ・マーケティング(CRM)を駆使し米金融界の台風の目となっている。東南部を地盤とするブランチ・バンキング・アンド・トラスト(BB&T)だ。
「クロスセル」
一九八〇年代にはノースカロライナ州内だけに店舗を持つ地域密着型の銀行だったが、八九年以降の規制緩和を背景に五十四の地方銀行、六十四の保険代理店、二十一のノンバンクを買収。十一州に千百店を展開するまでになった。資産規模は七百五十億ドルと十年で十倍以上に増やし、全米十三位まで駆け上がった。
単に買収で資産を増やしたわけではない。買収先の資産合計は現在の資産規模の半分以下だ。
買収で増やした個人顧客や中小企業に、他の買収で得た保険や消費者ローン商品などを提供。顧客一人当たりの取引額を二倍、三倍に増やす「クロスセル」という手法を徹底したことが急成長の秘けつだ。
効果的なクロスセルには「四十代男性」など漠然とした顧客の指定では不十分。データベースから一人ひとりのニーズを探るCRMが不可欠。
BB&Tは顧客との面談を通じて職種や年齢、家族構成、世帯収入、子供の就学状況、自動車・保険・クレジットカードの種類、企業なら従業員数や給与・年金制度など百項目以上の情報を収集してデータベース化、全行で共有する。
「扱っていない金融商品はない」(ポール・ジョンソン最高情報責任者)という同行は、基本的な当座預金や貯蓄預金の口座から多種多様なローンや投資信託、クレジットカード、保険などを網羅する。顧客データベースからそれぞれの商品を売り込む先として適した顧客を確率論などの数学を駆使して割り出す。
クレジットカードのキャンペーンなら、付与できる限度額やカードの種類を顧客ごとに記したリストを各支店の担当に送り、その担当者が実際に顧客を勧誘する。どういう属性の顧客が次にどんな金融商品を求めるか、顧客データベースを使って絶えず検証、法則化して販売につなげる作業を繰り返す。
大企業にも威力
顧客が大企業でもCRMは力を発揮する。
JPモルガン・チェースは昨年八月から数百万ドルかけて全面刷新した法人向け営業システム「リレーション・エクスチェンジ」を順次導入した。世界各地でバラバラに入手して対応していた多国籍企業の資金や決済需要を、世界五十カ国に配備した四万台の端末から一つのデータベースに入力、情報を一元管理して共有するようにした。
技術部門のバイスプレジデント、アミー・ヒアソン氏は「顧客企業の財務担当者が資金手当ての検討を始めるより早く、JPモルガンのあらゆる部署の担当者がニーズを発見して提案できるようになった」と自信をにじませる。
例えばシンガポールで日本の大手メーカー役員が講演した内容を現地で入力、資金需要を見いだしたニューヨークの担当者がシンジケートローンを組成。東京の担当者がその役員が帰国する前にメーカーの財務部に提案するといった連携も容易になったという。
アメリカン・エキスプレス、ウェルズ・ファーゴ、AT&T、AOLタイムワーナー――。
CRMは膨大な顧客リストを持つ企業にとって収益拡大の最大の武器となりうる半面、顧客へのダイレクトメール郵送などでコストの肥大化を招く両刃の剣でもある。最小の投資で最大の効果を上げるため、これらの巨大企業は旧ソ連でロケット軌道の計算を担当した数学者が開発したソフトを採用した。
ロケットの最適な軌道の計算には自らの推進力に加え、燃料残量とその重量、無数の天体からの重力などの要素を踏まえ、瞬時に最適な解を出す必要がある。数学者ユリ・ギャルプリン博士が導き出したのは、複雑な条件下で最適解を簡単に導き出す理論「非線形最適化のアルゴリズム」だ。
この理論を組み込んだソフトがマーケットスイッチ(バージニア州)が販売する「TRUEスイート」だ。
確率で順位付け
「購入確率=Aさん三七・三%、Bさん三六・九%、Cさん三六・五%……」。このソフトなら何十万人という潜在顧客を商品の特性に応じた購入確率で短時間に順位付けできる。
これまでのCRMは有望顧客層を収入や年齢などで大ざっぱに特定。例えば千人にダイレクトメールを送り、十人に購入してもらっていた。
TRUEスイートを使えば、ダイレクトメールの送付を購入確率が三五%以上の百四十三人だけに絞り、従来以上の成果が得られるという。マーケットスイッチは郵送費などマーケティングコストの大幅削減をソフトの売り物にしている。
「CRMの狙いは個々人の潜在需要を先回りし掘り起こすこと。顧客一人ひとりの行動を確率で示すことで究極のマーケティングが可能になる」とドリュー・エジントン会長兼CEOはいう。
日本でも銀行の総合金融サービス業化へ規制緩和が進む。国内金融機関もクロスセルに力を入れ始めた。
一歩先をいく米金融機関の徹底したデータベースの科学的分析とマーケティングの実践が、今後の日本の金融機関の目標になるだろう。
【図・写真】1100以上の支店網を通じた顧客マーケティングがBB&Tの強みだ