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三井物産 DPFデータねつ造
ディーゼル車排ガスの粒子状物質減少装置(DPF)をめぐるデータねつ造事件。三井物産の元室長ら三人が詐欺容疑で逮捕されたが、事件の背後には、石原慎太郎・東京都知事肝いりの「ディーゼル車NO作戦」遂行に腐心する役人の焦りと、シェア拡大を狙う三井物産の野心が重なり合っていた。 (社会部・大野孝志、越守丈太郎)
◆魅 力
「DPFは将来性があり、魅力的だった。この技術が確立すれば、排ガス規制が厳しい米カリフォルニア州や、インドなどに大きな市場が開けることになる」。三井物産で初期のDPF開発に携わっていた元幹部は、こう振り返った。
DPFは都の適合指定に先立ち、有識者らの書類審査と都職員による面談が行われる。都関係者は「審査に落ちると、あれこれ注文や宿題が出され、申請し直すには数カ月間はかかる」と言う。
だが、審査はDPFの実物を確認するわけではなく、業者が提出した性能データの裏付けを行うわけでもない。逮捕された製造元ピュアースの元副社長豊田哲郎容疑者(47)らはこうした“抜け穴”に目を付けた。
三井物産は二〇〇一年九月、路線バスに限定した初期型DPFの適合指定を初めて受けたのを機に、排気量の大きなすべてのバスやトラック向けに量産できる汎用型DPFの開発に着手した。
しかし翌十月、都バスに取り付けていたフィルターの溶損事故が発生。十二月には、共同開発を目指した輸送関連機器メーカーが安全面などから撤退した。暗雲が垂れ込める中で「世界のモデル工場」を夢見た豊田容疑者らの暴走が始まった。
◆期 待
首都圏八都県市のディーゼル車規制のスタートを一年後に控えた〇二年秋ごろから都環境局には焦りの色が広がっていたという。
高速道路や一般道など多様な走行条件と、バスやトラックなどあらゆる車種に対応できる汎用型のDPFを都は求めていた。自動車部品メーカー数社が既に販売していたDPFは、大きすぎて普及していなかった。
元都環境局幹部は「早く装置をつくれという声が、部内で飛び交った。毎日が、DPFができた、駄目だった、の繰り返しだった」と言う。
三井物産のDPFが虚偽データを基に適合指定を受けたのは、そんな最中の〇二年十二月。三井物産製はコンパクトで、他社製よりも装着可能な車種が多く、運送業界を中心に売り上げを伸ばした。ある自動車整備業者は「三井物産のDPFは小さく取り付けが楽だった。『三井のが良い』と都から言われた人もいたようだ」と明かす。
都トラック協会関係者は「ディーゼル車NO作戦をぶち上げた以上、都は予定通りに進めなければならず、三井物産に対する期待は大きかったはず。三井物産は商売のうまみから子会社をつくって取り組んだが都と同様に焦っていた」と言う。
◆本 質
都にねつ造したデータを提出し、DPF六十二台分の代金をだまし取った詐欺容疑で、警視庁は三井物産の元社員ら三人を逮捕した。通常の詐欺事件なら、詐取した資金の行方などが捜査のポイントとなるが、今回は様相が異なる。
捜査幹部は「DPFの代金をだまし取った行為がこの事件の本質ではなく、虚偽のデータで、都の適合指定をだまし取ったことが犯罪だ。そのような詐欺罪の規定が刑法にはないので、財産犯として刑事責任を問うことにした」と話す。
なぜ都は判断を誤ったのか。ディーゼル規制の実施に焦る足元を見透かされた“落ち度”はなかったのか。
同社のDPFを取り付けたダンプカー運転手は「大きい会社だから信じたが、裏切られた思いだ。大手だからといって、都の審査が甘くなったのではないか」と憤る。
本当の被害者は都ではなく、税金をだまし取られた都民であり、メーカーへの信頼を裏切られたユーザーだろう。警視庁の捜査には、三井物産側の刑事責任の追及と併せて、都の姿勢を明らかにすることが求められている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050616/mng_____kakushin000.shtml