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西武も狙う村上ファンド 株買収し、大仕掛け
(2005年3月14日号)
ニッポン放送株でも話題を呼んでいる「モノ言う株主」村上ファンドが、西武鉄道に照準を合わせていた。その大仕掛けは果たして成功するのか。
◇ ◇
ニッポン放送株をめぐって、ライブドアの「陰の軍師」とも言われる村上世彰氏は、主宰する投資ファンド「M&Aコンサルティング」でひそかに西武鉄道株を買い集めてきた。いまやコクド、西武建設などに次ぐ大株主(持ち分1.4%)である。その村上氏が西武鉄道・コクド側に独自の改革案を突きつけ、水面下で激しい綱引きが演じられている。
◆「みずほ色」の改革委案
ここでまず、西武鉄道を巡る経営再建策をおさらいしておこう。
株主偽装問題で西武鉄道の上場廃止が決まった後の昨年11月、約1兆4000億円の有利子負債を抱えるとされる西武・コクドグループを立て直そうと、メーンバンクのみずほコーポレート銀行が主導して「経営改革委員会」が設けられた。委員長は、同行前身の旧日本興業銀行出身の諸井虔太平洋セメント相談役で、みずほコーポレートの幹部が委員に就くなど、「みずほ色」の濃い陣容である。
その経営改革委が1月末にまとめた中間報告には、西武鉄道株の約70%を持つコクドを、堤家の資産管理会社(コクドA)と事業会社(コクドB)に分け、コクドBを西武鉄道と合併させる案が盛り込まれた。同時に2000億円規模の増資をし、旧コクドを支配していた堤家は持ち分数パーセントの少数株主に転落。コクドBと合併した新・西武鉄道は株式を再上場し、新たな増資先を含めて株主は上場益を得る、というシナリオだ。
西武鉄道は約8000億円の負債はあるが、単体決算は黒字の優良企業だ。一方、約4000億円の負債があるとされる親会社のコクドは、非上場のため詳細な経営内容は不透明だが、バブル崩壊後の地価下落などで資産はかなり傷んでいるとみられている。そのコクドと西武を合併させて再生させようというわけだ。
それを村上氏は批判する。
「改革委は西武、コクドの資産が複雑に絡み合っているので『一体再生』と言いますが、本当でしょうか。西武は、プリンスホテルが立つ赤坂、高輪、品川などの不動産を持っていて、これらの都心の不動産価値を私は1兆5000億〜2兆円と見積もっています。不良資産のあるコクドを優良資産を持つ西武と一緒にするのは、西武の株主から見ておかしい」
2000億円規模の増資計画で、みずほが持つ西武・コクド向け債権を株式に転換する手法がとられれば、みずほはニューマネーをつぎ込まずに、将来の上場益を手にすることができる。
このため、金融界ではこんな見立てもささやかれている。
「ゴールドマン・サックスは三井住友銀行で儲けた。サーベラスは国際興業で儲けた。みずほは西武の優良資産を狙っている」
◆西武側も一時「了承」
村上氏は数年前から西武に注目していた。少しずつ株を買い集めて好機をうかがい、西武鉄道株の偽装問題で堤義明コクド会長がグループ全役職を退くと、さっそく動き出した。
関係者によると、当初は、箱根開発の権益で対立してきた東急電鉄などと提携する手法を考えた。これは不首尾に終わったが、村上氏はあきらめなかった。
村上氏の提案は、まず西武買収のための特定目的会社(SPC)を設立する。厳格な資産査定(デューデリジェンス)をし、上場廃止時に485円だった西武株を、SPCを通じて最低1000円で公開買い付け(TOB)し、コクドが保有していた西武株の大半を購入。コクドは西武株の売却代金によって借金の大半を返済する。買収後の西武は公共性の高い鉄道部門(新西武)と、それ以外の事業(旧西武)に分け、新西武を再上場させ、キャピタルゲインを得るという流れだ。
関係者によると、この村上氏の提案は昨年12月半ば、ある有力者を通じて、堤前コクド会長に伝わり、前会長側から、
「検討に値する提案です。それで進めてください」
という感触を得ることに成功したのだという。
村上ファンドへの資金調達は、欧州の金融機関クレディ・スイス・グループがアレンジし、クレディ・スイスや、みずほ以外の国内メガバンクが5000億円を融通する方向で検討を進めていた。
◆「1月中旬に一変」
12月下旬以降、コクドの大野俊幸社長、プリンスホテルの山口弘毅社長、後に自殺した西武の小柳皓正社長の3人と、村上氏らの協議が始まった。村上氏側の関係者によると、1月初めには、堤前会長から「M&A仲介会社をアドバイザーにしてほしい」という注文もあり、順調に進んでいるかに見えた。
それが1月中旬、一変する。
「大野さんと電話で話したのですが、雰囲気が違いました」
と、村上氏は振り返る。経営改革委の中間報告発表の約1週間前のことである。
関係者は、このころ、みずほのライバルのメガバンク首脳と会食した村上氏が同行首脳から、
「1月10日時点までは、村上さんのプランが有利だったのに……。反乱がおきたみたいだね」
と言われたことを明かす。
「1月中旬に、みずほが猛烈に巻き返した」
「コクド幹部が、みずほに寝返ったようだ」
この間の事情を知る複数の関係者は、そう口をそろえる。
村上氏自身はこう振り返る。
「西武・コクドグループの幹部の皆さんとお会いして、このまま行くかなと思ったのですが、突然一転して、『何が起きたんだろう』と、びっくりしました」
村上氏は2月4日、みずほコーポレート銀行の斎藤宏頭取と諸井委員長あてに自身の改革案を提示していたことを対外的に発表した。
「仮に私の案が選ばれなくてもいいです。改革委員会は、西武やコクドの資産査定をきちっとやって、資産と負債の関係や合併比率など前提となる数字を明らかにすべきです。公平性や透明性が大切なのに、それが非常に曖昧になっている。私以外にも有力な外資系証券会社が名乗り出ているようなので、それぞれの案をなぜ公平に審査しないのでしょう」
◆村上氏の「宣戦布告」
かたや経営改革委の諸井委員長は3月4日になって、こう明かした。
「委員会発足時に堤さんから全権委任する念書をもらってました」
今後、焦点となるのは、旧第一勧銀の「改革派4人組」の一人で、西武の新社長に就く後藤高志元みずほコーポレート銀行副頭取の采配ぶりだ。
人望の厚い後藤氏は、斎藤氏ら旧興銀系が仕切るみずほコーポレートから、「体よく追い出された」(旧一勧の中堅行員)と言われている。
「後藤さんは信念の人。消費者や利用者の視点に立った改革をしてくれるはずです」
と、一勧時代の同僚は見る。
村上氏はこう宣戦布告する。
「後藤さんからは『大株主の村上さんに、いずれ会ってお話ししたい』とうかがっており、期待しています。でももし、みずほ主導のいまの案が強行されるなら、株主総会や裁判で対決を挑みます」
対する経営改革委側は3月25日に、西武・コクドの詳細な再建策をまとめる予定だ。
(AERA編集部・大鹿靖明)
http://www.asahi.com/business/aera/TKY200503160402.html