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2004年6月3週
〜FRBの利上げ決定と米国経済〜
ある機関投資家が、米国では住宅の需要はモーゲージ金利と「きれいな反比例」の形になっていると指摘している。これまでの連続した利下げで、モーゲージ金利も歴史的な低さとなっており、そのため住宅需要も強く、今日まで住宅価格は上昇し、消費も堅調に推移してきた。米国の世帯は、モーゲージ金利が下がるとリファイナンスして余った資金を消費に向ける。さらに、米国ではホームエクイティローン(住宅担保金融)も発達している。30万ドルで購入した住宅(住宅ローンの残高=25万ドル)があり、その評価が40万ドルに上がっている場合、40万ドルと25万ドルの差額の15万ドルが「与信」として自由に使える借入枠となり、現金化できる。住宅をもったまま現金が使える仕組みがここにある。住宅価格が値上りするとき、与信は増加し、その所有者にとっては家計に追加所得があったように見える。多くの米国世帯はこれを使い、耐久財や消費財を購入してきた。これが、GDPの6割を占める個人消費を押し上げてきた背景だと言う。
ところが、米連邦準備理事会(FRB)は、6月末に0.25%の利上げに踏み切る。金融市場は年内4回、計1%の利上げを織り込んで動いている。政策的な利上げを待たなくとも市中金利は上昇する。すると、モーゲージ金利・米住宅ローン金利は当然のこと上昇する。途端に住宅需要に影がさしてきている。30年住宅ローン金利は、平均1%上昇し、6.25%となったが、この米住宅ローン金利の上昇を受けて、6月1週の新規住宅購入ローンの需要が減少(前週比6%低下)し、また、住宅ローン借換えは14%減少し2年ぶりの低水準となり、住宅ローン申請指数(新規購入・借換えを含む)は、この借換えの減少に足を引っ張られ9%低下している。
その機関投資家は、5月の米雇用統計では、失業率は横ばいの5.6%だったが、非農業部門雇用者数の伸びが事前予想(21.6万人)に対し24.8万人と改善傾向にあって、住宅に陰りは出てきても、日々購入するショッピングカート内の商品数が減っている訳ではない。しかし、そうした就業者にあっても、8割の人の年間所得は伸びていないのが現実であり、クレジットカードやホームエクイティローンを含め、家計の借金を年々増やしているのが米国の姿だと言い、現在、米国の家計と企業の負債は増え続け、米国GDP(1200兆円)の約2倍の規模となっていると指摘する。
さらに引き続いて、日本人にとっては銀行や郵便局の「預貯金」が貯蓄であるように、米国人にとっては「住宅」が、預金に代わる「貯蓄」と言う。住宅ローンは金利が下がれば、すぐ借換えできる自在構造であり、住宅ローンの金利は2軒目まで所得から控除できることから、住宅購入が資産作りの手っ取り早い方法であり、有効な節税対策となってきた。このスキームが、個人の住宅取得を促進し、住宅価格を上げてきた理由の1つでもある。2000年のITバブル崩落での株価下落以降も、住宅価格は継続して上がった。住宅のメンテナンスをすれば、その住宅が高く売れる現実は、株価の大幅下落があっても家計の資産の減少をさほど意識しないで済んだ。80年代半ばから90年にかけては、日本人にとっても、住宅こそが最大の貯蓄だったが、現在、これは含み損をもたらすものに変質している。6月の米抵当銀行協会(MBA)の2年ぶりの低水準に落ち込む住宅ローン需要データは、米住宅ローン需要に金利上昇の悪影響が出始めた可能性を指摘するもので、住宅バブル崩壊の可能性を示すものとして注意すべきものと言う。
昨年4月、国際通貨基金(IMF)は、日米欧など主要国の株式と住宅市場のバブル生成、崩壊の歴史、資産バブル崩壊の経済的影響を検証した「バブルが崩壊する時」と題する論文を公表した。
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(1)株式バブル崩壊は平均13年周期で起こり、株式価格下落は2年半続く
(2)住宅バブル崩壊は平均20年に1回で、価格下落は4年間の長期にわたり経済を圧迫する
(3)個人消費や企業の設備投資減少などによるバブル崩壊の経済的損失は、株式は国内総生産(GDP)の4%に留まるが、住宅は8%に達する
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米国で2番目の金持ちであり、数兆円の運用で成功を続けてきた投資家のウォーレン・バフェットは、バークシャハサウェイ社の株主総会で、(A)米国で起こり得るインフレを警告し(B)デリバティブの危険性と(C)米国の記録的な貿易赤字への懸念から(D)米ドル投資をしないようにと語っている。確かに、中国・インド・東欧・ロシアの30億人経済の近代化のため、長期では資源価格は上がることが確実であり、その予兆として原油価格が高騰し、米国のガソリン価格においては25%上昇している。先進国中、資源価格上昇に最も弱い国は、消費大国でもある米国だ。同氏はすでに株式、債券、不動産はとうてい買える水準ではないと投資対象から外し、現金に変えて様子を見ている。米国の家計は、借金を2倍に膨らませたが、世帯の貯蓄率はほぼゼロで、預金等はあってもホンのわずかで、(A)401Kでの株式保有と(B)住宅頼みの構図にある。米国の家計はあぶない構造の上に成り立っている。住宅価格の下落は、消費経済のパニックをもたらすが、この連想から株価が下がれば、401Kを含み個人は株式を一斉に売り出す。株価の下落があれば、米国では「年金」も消える運命にある。つまり、金利上昇がもたらす数%の住宅価格の下げで、家計はパニックとなり、全てが逆回転し始める可能性があることには特に留意しておく必要がある。こうした仕組みを見ると、米国経済の持つ強さと弱さは、世帯の行動が「金利に非常に敏感である」という点に集約できる。
米国ネオコンのイラク戦略に見られるアラブ圏の支配構想は、世界の資源価格の支配につながる資源戦略であったことは、すでに隠しようがなくなっている。イラクはラムズフェルド国防長官が軍事と政治の両面で(イラク統治の)権限を握っているが、イラク戦略立案の主要部分はウォルフォウィッツ国防副長官、ダグラスファイス政策担当国防次官らのネオコンに頼ってきた。その結果がイラク全土における反米闘争の激化であったことから、11月大統領選挙での勝利を願うブッシュ大統領は国防総省のやり方に反対するようになり、イラクの再建を国連に任せる戦略に転換している。もはや、軍事中心の方法で成功が難しい以上、国連へ協力を要請し、国連にイラクを任せ米軍を撤退させる方向にある。最大の債務国である米国が、2000年にかけてIT経済あるいはニュー・エコニミーで、(前任のクリントンが)日本・西欧・アジアからマネーを集めたように、不足するマネーを集める(米ドルを保有させる)には、資源、特に石油を押さえ、資源価格を支配する方法しかなかったが、この戦略が破綻したことは今後のマネー争奪としての金融戦略に影響を与えることになる。
(米国の)住宅価格が下がらない理由の1つに、米国がマネーを集めることで、それを使った「低金利」ローン等の仕組みを維持できたことがあげられる。マネーが集まらないとなると、最大債務国の米国では、調達金利を上げざるを得なくなる。米国の中東資源戦略が破綻するとは思わなかった3月にFRBのグリーンスパンは「日本政府によるドル資産の蓄積ペースを減速し、最終的に停止する必要がある」と、米国に資金提供し、米金利の低位安定に貢献していた日本政府を牽制した。その翌月から、年間で30兆円規模にのぼっていたドル買い介入(=日本からの米国へのマネー提供)はピタっと止まっている。小泉も(日本の)財務省も米国に従順であり、絶対服従姿勢ゆえに、現在はマネー供給を行っていない状況にある。
その機関投資家は特筆すべきこととして、2003年6月までの1年で「日本人の世帯」は90年以降初の「資金収支の赤字」という、家計が収入と支出で初めて赤字になったことをあげ、金融史に残る事件としている。これは、今後において黒字に転化する見込みはない。何故なら、高齢化の進展で、退職から年金生活へ移行した高齢者が、自身の預金を取り崩し始めており、賃金は横ばいか下がる時代にあって、担い手たる若者の賃金の上昇が見込めないためだ。今、世界最大の貯蓄マシンだった日本の世帯がおよそ2002年以降、貯蓄取り崩しの時期に入ったことで、米国に資金提供できる国は存在しないことになると言う。再度「米国にマネーを流してくれ」と言ってきても、日本にはその余裕がないのが現実だ。しかし絶対服従の小泉と財務省は、国民を欺きながら約700兆円の長期債務残高を増やすと予想される。米国の金融戦略でむしり取れるのに手っ取り早いのは日本だろう。しかし、長期では借金をしてまでマネーを流すことで財政は行き詰まる。結果、日米が共倒れになる可能性があると言う。
その機関投資家は続いて指摘する。マネーの動きの根底は人々の心理にある。そして、金融経済はウォーレン・バフェットのデリバティブの危険性の指摘のごとく、デリバティブを用いたレバレッジで何倍にも肥大している。マネーの逃避と言った金融の変化が一旦起こってしまうと、誰もとどめることはできず、経済体制の大変化になると言う。銀行倒産だと金融機能が停止することから、実物経済に合わせて金融が縮小することはありえない。そのため、現象としては「インフレ」になると言う。時期としては11月の大統領選挙前後を注意する必要があるとしている。
さて国内の相場だが、10年指標国債は5月27日の1.44%から6月16日には1.875%まで(金利が)0.43%上昇し、債券先物で見ると138.89円から133.70円まで5円以上価格が下落している。債券先物で5円の下げは、日経平均株価に換算すると2000円規模の大暴落の皮膚感覚だ。三菱東京のみ債券のデュレーション(平均残存期間)を短くしていたに過ぎず、53兆円規模と膨大な債券を持つ大手行のほとんどで、多額の含み損を蒙るにいたっている。デュレーションが長い銀行ほどマイナスが大きくなるが、0.4%の金利上昇で、いずれも推定ながら、みずほが3200億円、三井住友が3300億円、UFJが2600億円、三菱東京が1800億円の評価損となる。大手行の3月末の日経平均株価(11715円)を大手行の株式保有コストと見ると、一部のヘッジファンド等がサッサと資金を引き上げた後の買い主体となった機関投資家の株式の現在ポジションは「上値での戻り売り」と見ることができる。外国人投資家が去った後の市場では、機関投資家の内部事情も手伝い、上値が重くなっていると考えられる。
FOMCが金利を6月末に0.25%引き上げ、その後も金利が段階的に上昇する見通しとなると、国内株式相場においても上げトレンドを想定することは難しい。確かに、金利上昇が必ずしも株安につながるとは限らない。1回目の利上げで株価が下落に転じたケースはまれなケースだろう。投資家は、金利上昇の悪影響が、業績を悪化させるまでは、金利と業績の「綱引き」状態を上手く利用して儲けることも可能だと割り切り、過度に株式市場を敬遠する必要はない。ただ、今回の金融引き締め第一弾では、市場参加者の強弱感が分かれ、株価が不安定になる可能性も高い。さらに、株式市場へ参加する投資家が減った時期でもあり、裁定取引等のシステム売買が株価指数の上下に驚くほど大きな影響力を発揮してしまう時期ともなる。日経平均株価は戻り一巡からレンジ内での調整といった動きが考えられるが、急騰や急落が起き易くなっている状況にあることを忘れずに、好業績の成長企業として位置づけられている小型株のレンジ売買が効率的ではないかとアドバイスしている。
(F.H.)
http://www.gcams.co.jp/stock/mkt/0406_3.htm
【ワヤクチャ】
まあ、世界経済は幻想の上に成り立っているようなもんですなあ。
愚民党さん、注意の喚起をありがとうございました。
【誰も制御できないデリバティブ】
http://www.asyura2.com/0505/hasan40/msg/687.html
【客観的な経済認識、を構築していくという、あっしらさんの試みを復興させていきましょう(’経済による階層的和解’)】
http://www.asyura2.com/0505/idletalk13/msg/638.html
投稿者 XL 日時 2005 年 6 月 12 日 10:50:34: 5Sn8OMNzpaIBE
【ワヤクチャ】
とのXLさんのご指摘もありますし、政治も大事だけど経済の分析もしないとね。
ああ、忙しい。
客観的な経済認識、を構築していくという、あっしらさんの試みを復興させていきましょう。
わたしは、どうも。阿修羅の論調を’政治’’議会’に振りすぎた感があるので、
あっしらさんのおっしゃる、’経済による階層的和解’というものも、
復調していかねば、バランスが悪い状態が続いてしまうことになります。
(しばらく、このネームでいきます、よろしく。)