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アロヨ・フィリピン大統領は、21日、同国訪問中のサウジアラビア・ナイミ石油相と会談した際、サウジアラビアが原油価格の鎮静化に向けて果たしている努力に謝意を表明しつつも、最近の油価高騰が開発途上国経済に与える悪影響に関し、強い懸念を表明した。一方、ナイミ石油相は、会談後の記者会見で、「サウジアラビア国王からフィリピンのような開発途上国が原油価格の高騰に苦慮しないように対策を講じるよう指示されている」とし、同国としては、自ら原油増産に取り組むと共に、OPEC諸国に対し原油増産を働きかけていると述べた。
しかしながら、当地紙が報じるところでは(筆者は目下、フィリピンに出張中)、「サウジアラビアはフィリピン向けに特別に原油価格を引き下げる意向を持ち合わせているか」との記者団からの質問に対しては、「原油価格は国際市場で決まるものであり、私が承知している限りでは、どの産油国も特別な値下げを行っていない」と答え、同国向けに特別な値下げを行う意向はない旨、明言した。
原油価格の上昇は、一般にインフレの昂進等否定的な影響を有しているが、昨年33%(2003年平均31.09ドル/バレル、2004年平均41.44ドル/バレル。WTI)も上昇したにも拘わらず、G7、あるいはOECD諸国経済においては、深刻な影響を生じていない。実際のところ、23日、米国連邦準備制度理事会(FRB)は昨年6月以来連続7度目にあたる政策金利引き上げに動き、2.75%とした際も、特段のインフレ懸念を表明しなかった。
徐々にインフレが昂進するフィリピン
しかしながら、問題は、油価高騰はフィリピンのような開発途上国経済の足元を徐々に突き崩していることである。同国のインフレ率は、2003年12月の3.1%から、2004年12月には7.5%と、月平均では4.8ポイント上昇した。また、2003年平均は3.0%、2004年は5.5%であった。現在入手可能な最新データである2005年2月にはさらに昂進し、8.5%になっている。
失業率は、この数年間、ほぼ恒常的に11%台にあり、特段の悪化を示している訳ではないが、見方を変えれば、エネルギー価格の上昇が経済成長の伸びを鈍化させているため、失業率が改善に向かわないと評価することもできる。
現在入手可能な、品目別輸入統計(1〜11月)では、石油輸入金額は前年同期の3,366百万ドルから4,221百万ドルに25.4%増加し、貿易収支悪化の一因を成した。また、ガソリン価格は、政策的配慮から抑制されているものの、既に30ペソ/リットル(約60円/リットル)に上昇、今週さらに2ペソ引き上げられる旨決定していることが既に発表されている。
原油高が長引けば、世界経済運営の綻びが開発途上国からもたらされる可能性は、サウジアラビア国王が懸念する以上に、実際は深刻なのである。
米国の消費者物価指数の上昇
一方、23日、米国労働省は、2月の消費者物価指数は全米平均で前月比0.4%上昇したため、関係者はインフレ懸念が一段と強まるとの見通しを示した。同月、ガソリンは+3.2%、医療費は+0.6%、住宅費+0.4%、食料品は+0.1%と、ほとんどの品目で上昇(前月比)を示した。その点からは、上記連邦準備理事会の見解にも拘わらず、インフレ警戒感が米国でも一段と強まることが必至であると評価することもできるだろう。
(財)国際開発センター
エネルギー・環境室 主任研究員
須藤 繁
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