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揺れる『東証上場』
東京証券取引所が本年度内を目標にしている自社株の上場が流動的になってきた。カネボウ株の上場廃止を機に、監督官庁である金融庁が上場を認める際の条件として、東証が持つ上場審査など自主規制部門の分離を強硬に求めてきたからだ。東証がこれを手放せば、取引所を維持管理するだけの“死に体”になりかねない。金融庁との小競り合いは自民党を巻き込んでまだ続きそうだ。 (経済部・松本観史、安藤美由紀)
■大荒れ
「東証は自主規制機関として不適格だ」「あまりにも考え方が甘すぎる」−。今月三日、東京都内で開かれた自民党の企業会計と商法に関する合同小委員会。出席した議員から、東証に対する批判が相次いだ。
小委の主要テーマは「東証の上場問題」。だが、ライブドアによるニッポン放送株の時間外取引や有価証券報告書の虚偽記載を行った小田急電鉄への対応など、最近の東証のやり方に不満が爆発した格好だ。
金融庁や自民党が東証に批判的なのは、東証が企業の新規上場や上場廃止などを審査する権限を持ったまま上場する意向を示している点にある。上場企業を増やして収益増を狙う行為と上場企業を審査・監視する行為とが矛盾し「利益相反」のおそれがあるからだ。
かといって、東証が分離を認めると、取引所を管理するだけの「不動産業者」になりかねない。
小委で東証の吉野貞雄専務は「自主規制機能は市場運営と密接不可分」と分離を明確に否定するとともに、外部識者を交えた取締役会の諮問機関「自主規制委員会」の権限を強化する方針を表明、平行線をたどった。
■引き金
東証に対する風当たりは、カネボウの上場廃止が直接の引き金だ。カネボウ再建を進める産業再生機構や金融庁の意向を知りながらも上場廃止を決定。十一万人の株主をあわてさせた。
これを機に東証の上場廃止基準に関心が集まり、金融庁は上場廃止基準の見直しや自主規制部門の在り方など三項目について、今月十三日までに報告するよう求めている。
ただ、市場関係者の一部には金融庁の真の狙いを「自主規制部門を証券取引等監視委員会に取り込み、自身の機能強化を図ることではないか」との見方もくすぶる。
■すう勢
もっとも世界に目を転じれば、金融庁の分離論を後押しする動きはある。ニューヨーク証券取引所は今後の上場に向けて、自主規制部門を切り離す方針を表明。ロンドン証券取引所では国の金融当局に統合された。
大和総研の吉川満・制度調査部長は「東証が上場した場合、株主利益と証券取引所としての公益性・信頼性を、一般投資家が納得する形でどう両立させるかは難しい。ニューヨークの例にみられるように、取引所の上場と自主規制部門の分離はひとつの国際的な流れになっている」と指摘する。
東証は今月二十三日、上場審査部門と上場勧誘部門を別組織に分ける。すでに自主規制部門専任の最高規制責任者(CRO)を置いており、自身が上場しても収益確保だけに走らない体制づくりに腐心している。
自主規制部門が分離されると東証は大幅な組織変更を迫られ、上場の前提となる収益計画の見直しが避けられず、今秋を見込んでいた上場申請も大幅にずれ込むのは確実だ。
だが、東証は「なぜ自主規制部門の分離を嫌う一方で上場したいのか」、金融庁は「東証から分離した自主規制機能をだれが担うのか」を明確にしていない。証券市場として国際的に出遅れが目立つ東証の生き残りのために、何をなすべきか。金融庁や自民党にとっても重い課題を突きつけている。
<メモ>証券取引所の自主規制
市場の信頼性の維持や投資家保護のため取引所が自ら定めた規制・監督機能。東証は証券会社が適切に売買を行っているかを監督する「考査」と、相場操縦やインサイダー取引に目を光らせる「売買審査」を「狭義」の自主規制部門と位置づけている。金融庁はこれらに加えて新規上場・上場廃止の審査や、上場企業による情報の適時開示の徹底などを含めた「広義」の自主規制機能を議論しようとしている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050607/mng_____kakushin000.shtml