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うつ病患者の家族、1人で悩まないで!――支え合う動き進む、専門家グループの支援も
http://smartwoman.nikkei.co.jp/news/kateiview2.cfm?genreCode=w2&pos=3
日本人の成人の15人に1人が経験している「うつ病」。闘病には家族など周囲の理解が不可欠だが、家族自身が患者を支えるのに疲れ果て、燃え尽きるケースも出てきている。そんな家族を支えようとの支援の輪も、少しずつ広がり始めた。
加藤洋子さん(仮名、35)は、夫の言葉にぼうぜんとなった。理由を聞いても「すべてが嫌になった」というばかり。
2年前から夫は仕事が急に忙しくなった。会話を避けるなど、家での様子がおかしくなったのもそのころからだ。浮気の気配はなく、素行調査の結果も白。「もしかしてうつ病では」。調べたところ、夫の様々な言動はうつ病の症状に酷似していた。しかし夫は治療を拒み会話も拒否。加藤さんは心配と絶望感で疲れ果てている。
うつ病は、脳内の神経伝達物質が正常に働かなくなり、極端な抑うつ状態になる病気。心が疲弊し、生きるのがつらくなる。厚生労働省によると、うつ病などの気分障害で医療機関を受診した推計患者数は、2002年が71万1000人。1999年の44万1000人から急増した。
最悪、自殺の危険があるうえ、再発も少なくない。患者本人の苦しさはもちろんだが、家族も相当の忍耐を強いられているのが現実だ。
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「私の一言がきっかけで、自殺してしまったらどうしよう」。パートタイマーの神田礼子さん(仮名、32)は、うつ病の夫とけんかした後、不安と恐怖に襲われる。
夫は休職を経験。復帰後も時々会社を休む。神田さんが家にいないと夫は寂しさで怒りをぶつける。「夫を支えているつもりなのに、理不尽なことを言われるとやりきれない。一緒の時間が長いだけに、どう対応すべきか悩む」と話す。
うつ病の闘病経験を持ち「どうする? 身近な人の『うつ』」の著書があるフリーライター、上野玲さんは「うつ病になると、頼れる人にはそばにいてほしい思いと、放っておいてほしいというコインの表裏のような気持ちを抱きがち」と話す。
夫だけでなく、妻や子ども、親など患者の対象は様々だが、「支える家族の側が燃え尽きてしまうことはよくある」と臨床心理士で武蔵野大講師の生田倫子さんは話す。
「死にたい」と繰り返す患者に対し、家族が話を聞いても数時間後には「死にたい」と繰り返す。「うつ病は、何度も悲観的な思考を繰り返す傾向があり、家族はやってもやってもダメなんだと気力を失っていきがち」
また、一家の大黒柱がうつ病を患うと、経済的に苦しくなる。子どもがいれば、理解と納得をどう得るかという問題もある。ただ日本では心の病気への偏見が根強いだけに「患者が、周囲に明かさないでくれと言うケースも多い。家族は周囲に相談しにくく、相当な孤立感を抱えている」。
そんななか、家族への支援の動きも出てきた。
「うつサポ生活向上委員会」。これは、うつ病の夫を支える妻たちが、昨年8月に作った自助グループだ。2カ月に一度、専門家を招いた勉強と妻同士で悩みや本音を打ち明け合う会を東京都内で開いている。現在会員は約40人。7月には関西支部も発足予定だ。
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代表の田中ひろみさんは、うつ病の夫を支えてきた経験から「患者本人も大変だが、支える妻も苦しい。でも妻への情報は不足しているし、感情を分かち合う場もなかった」と指摘する。
田中さん自身、出口の見えない苦しみを何度も味わったが、同じ立場の妻たちと知り合い、悩みを打ち明け合ううち、心が軽くなった。「苦しさを共に吐き出し、夫を支える元気を妻たちが取り戻せるような活動に育てていきたい」と話す。
うつ病の家族への支援を行う専門家グループもある。保健師の山口律子さんが3年前に立ち上げた「MDA―JAPAN(うつ・気分障害協会)」がそれだ。カナダに本部を置く支援組織の日本版で、精神科医や保健師、臨床心理士や産業カウンセラーなどの専門家がメンバーとなり、心理プログラムを中心に実施、患者と家族を支える。
同協会では、家族だけが集まる「家族会」を月に一度開いている。治療情報の交換や、患者本人の前では言えなかった怒りや悲しみを打ち明け合う。家族会の席上では、「ここに来なかったら私自身がうつ病になっていた」と涙を流し話す家族の姿もみられた。
自治体レベルでも、東京都足立区が昨年から、家族が対象の「うつ病ファミリーサポートセミナー」を始めるなど、支援の芽が出始めている。
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MDA―JAPANの山口さんは、「うつ病は家族関係を壊す病気。相談できる場所や仲間がいないと、家族自身の心が持たない。1人で当事者を支えるなんて絶対に無理ということを、家族も、そして社会も理解してほしい」と話す。
「普通の生活続けて」
MDA―JAPANの山口律子さんは、設立後、約500組の家族の相談に乗ってきた。その経験から、家族が燃え尽きてしまわないための予防策を提言している。
まず「学べることはすべて学ぶ」。患者をしっかり受けとめるためには、うつ病の症状を理解することが不可欠。「おまえと結婚していなければこんなことにはならなかった」など、配偶者の存在を否定するような言葉を患者が発することがあっても、「病気が言わせているとわかれば、傷つかずにすむ」ためだ。
また、「家族はこれまで通りの生活を続ける」ことも大事だという。家族があまりに過干渉や過保護になると、家族は疲れ果てるし患者自身が病気に立ち向かえない。深刻な状況の時は別だが、家族は好きな趣味や仕事は続けながら温かく患者を見守っていくとよい。
さらに、「自分の弱さを知り、家族自身がサポーターを持つこと」も勧めている。一人で何もかもできると思ってしまうと長続きしない。「気持ちを吐き出せ、頑張りをほめてくれる支援者が多いほど、心が楽になる」
[日本経済新聞]
http://smartwoman.nikkei.co.jp/news/kateiview2.cfm?genreCode=w2&pos=3