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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu95.htm
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MGローバーの破たんは法律を破ることもなく行われた
洗練された強奪だった。規制のない資本主義の帰結だ
2005年5月31日 火曜日
◆道徳のない資本主義の帰結 5月30日 ビル・トッテン
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/rinen/totten/ow_text.php?A=1&B=691
去る4月、イギリスのMGローバーが破たんし、支援先企業を得られずに6千人が失業する見込みとなった。これはイギリス最後の自動車メーカーがなくなるという郷愁的な論調で語られることが多いが、ここで起きたことはもっとも醜い資本主義の手法がとられた一例ということができるかもしれない。
道徳のない資本主義の帰結
ローバーは一時国有化を経て1994年に独BMWの傘下に入ったが、販売不振からBMWは2000年に解体を決定し、「ミニ」がBMW、「ランドローバー」が米フォードに、そして「MGローバー」はイギリスの投資家グループに売却された。MGローバーを買い取りCEOとなったフェニックス・コンソーシアムのジョン・タワーズが買い取りに支払ったお金はわずか10ポンド(約2000円)だった。
これを知ったとき私が思い出したのは、経営破たんした銀行に日本政府が巨額の税金を投入し、それから米国の投資会社リップルウッドに売却された旧長銀の買収である。もちろんリップルウッドが支払ったのは十ポンドではなかったが、要はイギリスのハゲタカたちも不透明な条件交渉の中、格安でローバーを買い取ったということである。もしローバーの従業員が同じ条件で買い取るチャンスがあったら、彼らはそれを拒んだだろうか。MGローバーの取締役たちのように会社を略奪し、自分たちの仕事を破壊しただろうか。
しかしもちろん労働者にそのようなチャンスが与えられたはずはない。MGローバーの破たんは法律を破ることもなく行われた計算され洗練された強奪だった。
MGローバーは破たんしたが英自動車産業は堅調で、生産される自動車の多くは輸出され、日本のメーカーやプジョー、BMWなどが健闘している。しかしローバーは10ポンドで買い取られてから、生き残りの鍵となったかもしれない新しいモデルを出すこともなく赤字を出し続けた。その一方で4人の経営者は、自分たちに巨額の報酬と役員年金をお手盛りし、価値ある資産をMGローバーから親会社のフェニックスに移していった。
ローバーの破たんは、政府がビジネスを規制する必要があったことを示していると私は考える。なぜなら10ポンドでローバーを買い取った投機家は、合法的にできるだけ早く多くの利益をあげたにすぎないからだ。ブレアやサッチャー、シカゴ大学を中心に確立された競争と自由市場の有効性を説くシカゴ学派、ブッシュそして小泉政権などが、資本家がするべきことだと挙げていることを投機家は行っただけなのだ。経済は人々が自分の利益のために行動できるように自由放任にしたときに最もうまく機能する、したがって政府の介入は最少か全くないほうがいいという、彼らの思惑通りのことを実行したにすぎないのである。
従業員や顧客、社会のいずれも考慮されることのない資本家中心の経済理論はまた、現在の主流である規制緩和、民営化、グローバリゼーションを後押しする弱肉強食を正当化するための理論でもある。政府機関が民営化されれば、お金を持つ者がそれを買い取るのは当然だからだ。
英議会の委員会ではMGローバーの経営者に対する疑惑を追及する公聴会が行われているという。赤字にもかかわらず経営陣向けの年金に巨額の資金が追加されたこと、利益を生んでいたローバーの金融部門やエンジン部門を親会社に移す、つまりその利益をローバー再建に使えないような組織形態にしたことなどが議題となっている。しかしどのような結論が出されるにしろ、職を失った従業員にとってはほとんど意味をなさないだろう。
かたや米自動車業界に目を向けると、そこでも同じことが行われている。フォード社の会長兼CEOであるビル・フォード・ジュニア氏の2004年度の報酬は、総額で2200万ドル(約23億4500万円)にも上った。報酬の半分はストックオプション(株式購入権)だが、フォード会長と4人の経営トップへの2004年の報酬を合わせると4400万ドル(約47億円)にもなる。
フォード社の収益は前年比増とはいえ、収益の8割以上をもたらしているのはファイナンス部門であり、ローバーから買い取った稼ぎ頭のランドローバーもガソリンの高騰で今後の低迷は必至だろう。ストックオプションを含むとはいえこの報酬はどうみても正当化できるものではない。その一方でフォード社は米国のホワイトカラー従業員3万2千人のうち約千人を目標に早期退職などのリストラ策を発表している。
従業員や地域社会に対する責任を負わず、経営者の唯一の目標が自分の報酬を高めることであり、そのためにリストラなどのコスト削減を繰り返す。これが政府の規制、道徳という精神の規制のない資本主義の帰結である。
◆英ローバー破たん:戦略、最後まで不明確 英製造業の衰退象徴
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/archive/news/2005/04/09/20050409ddm008020145000c.html
【ロンドン藤好陽太郎】100年の歴史のある英国の老舗自動車メーカー、MGローバーが7日破たんしたことは、資本、開発力の弱いメーカーは、ブランドだけでは生き残れないことを象徴している。一時は日本のホンダと資本提携もしたが結局は解消し、戦略が不明確なことが最後まで足かせとなった。MGローバーは唯一残った英国資本の自動車メーカーで、英国製造業の一層の衰退を浮き彫りにしたともいえそうだ。
今後、買収者が現れない事態が予想され、市場関係者から景気への影響を懸念する声が強まっている。英国は総選挙を控えており、低失業率など好調な景気を前面に掲げる政府と与党・労働党にショックが広がっている。
ローバーの生産台数は03年に17万台と少ない。だが、ブランド力と技術力が評価されていた。一方で、規模のメリットが享受できず、生産性の低さが問題視されていた。
ローバーは過去、何度も経営危機に陥った。70年代には一時国有化され、80年代には、英航空機メーカー、ブリティッシュ・エアロスペースが買収した。ホンダとの資本提携もしたが、94年にはドイツ自動車大手BMWが買収した。
しかし、「一部のファンしか買わない」状況を改善できず、赤字を垂れ流し続けた。00年には、英国の投資家グループ、フェニックス・コンソーシアムがローバーをわずか10ポンド(約2000円)で買収した。それでも、自力再建できず、04年に中国の上海汽車集団と支援交渉を始めたが、今回、決裂し、破たんした。
ローバーはバーミンガムの工場に6000人の従業員を抱え、関連の部品産業を含めると2万人規模の雇用を抱えている。英国には、製薬、航空機という世界トップレベルの高付加価値産業があるものの、自動車産業の足場がなくなれば、製造業を軸とした技術力の一層の衰退は避けられない。
英政府は引き続き、ローバーを支援していく構えだが、過去20年に所有者が3度も変わっているだけに、「救済者は現れない」との指摘も出ており、苦しい展開が予想される。
毎日新聞 2005年4月9日 東京朝刊
(私のコメント)
英国の大手自動車メーカーのMGローバーが経営破たんして解散しますが、これで英国資本の自動車メーカーが無くなることになる。市場原理主義を米英のように徹底すれば英国のように自国資本の自動車メーカーも無くなっても当然なのだろう。やがては同じ市場原理主義の国のアメリカからも自国資本の自動車メーカーは無くなるかもしれない。
英国にしてもローバー社を国有化したりBMWに売却したり再建を図りましたが、どれも上手くいかずに、売れ筋商品のミニやランドローバーは他のメーカーに売却され、抜け殻だけが残されてハゲタカ投資家に解体されていった。かつては英国には世界的名車が数多くありましたが、アメリカやドイツの車に市場を奪われていった。
一時はホンダとの資本提携でホンダ車のライセンス生産を行っていましたが、BMWに買収されてホンダとの提携は終わった。MGローバーの一番の欠点は製品開発力を無くしてしまったからで、ブランドだけでは売れない商品なのだ。しかし6000人の従業員と関連産業を入れれば20000人もの人が失業してしまうから影響は大きい。
自動車産業は戦略商品だから世界各国で自動車の国産化を進めている。自動車産業は裾野が広い産業だから自国資本のメーカーが無くなることに英国は有効な手を打てなかったのはなぜか。アメリカと同じように優秀な人材が航空機や軍需産業に行ってしまい自動車産業にはデモシカ的な人材しかいなくなってしまったのだろう。
新車を開発するには巨額の費用と多くのエンジニアを集めて開発しなければなりませんが、売れなければ新車開発体制が無くなってしまい残るのはブランドだけになる。日産にしても売れ筋商品のブルーバードやサニーが売れなくなってルノー傘下に入った。日産の売れ筋の車が売れなくなったのは会社のトップに経理畑の人物がトップになり、魅力的な車が作れなくなったからだ。
自動車会社も成熟化するにしたがって技術畑のトップから経理畑の人材が経営するようになり、利益第一で個性のない平凡な車を作るようになる。アメリカのGMやフォードも個性のない大型車ばかり作るようになりガソリンがこれだけ高くなったのに燃費は最低だ。どうして燃費のいい小型車が作れないのか不思議なのですが、日本のメーカーに敵わない。
韓国や中国も自動車の生産に力を入れていますが、技術開発力はどうなのだろうか。韓国自身は国内市場が小さくて限界があり、中国もメーカーが乱立してとても技術開発に力を入れる状況ではない。だから韓国や中国の自動車はエンジンなどの主要部品は日本製などで作られているようだ。
自動車産業もグローバル化が進んで世界で残る自動車メーカーは十社程度になるだろう。EUにしてもドイツ、フランス、イタリアなどのメーカーが残り英国は競争に敗れた。ローバーはその象徴ですが、国策として一社ぐらいは残すべきではなかったかと思う。もしホンダとの提携が続けられていればライセンス生産で会社は生き延びられたかもしれない。
最終的にはたった2000円で投資家グループに売却され切り売りされて破綻しましたが、6000人の従業員は失業者として放り出された。イランや中国の企業が買い取る話もありましたが結局は買い手は現われず解体されるようだ。新車開発の技術力が無いから仕方がないのでしょうが、日本も明日はわが身と考えるべきなのだろう。