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職場から :法律と現場が余りにも乖離している (SENKI)
http://www.asyura2.com/0505/hasan40/msg/477.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 5 月 28 日 23:18:27: ogcGl0q1DMbpk
 

職場から

法律と現場が余りにも乖離している

http://www.bund.org/culture/20050605-1.htm

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高齢者虐待防止法

法案いかすなら公立老人ホームは必要

太刀川海


 4月14日、自民、公明両党は高齢者虐待の早期発見や防止策を規定した「高齢者虐待防止法案」の要綱をまとめた。5月上旬に国会に提出し、今国会で成立する見通しだ。  

 高齢者の虐待は家族によるものが大半で、発見が遅れるケースが多い。法案要綱はホームヘルパーなど発見者に通報を義務付け、必要な場合は市町村職員による立ち入り調査を認めている。  

 高齢者虐待については@身体に外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行A著しい心理的外傷B性的嫌がらせC著しい減食または長時間の放置D財産の不当な処分―などと定義されている。

虐待者の9割息子や嫁

 法案ではホームヘルパーやケアマネージャー、医師、看護師ら関係者に対し、虐待の早期発見に努めるよう求め、生命や身体に危険が生じているケースを発見した場合は市町村への通報を義務付けた。必要があれば市町村は自宅への立ち入り調査ができるとし、調査を拒否した場合は罰金30万円の罰則を科す規定を設けた。  

 また被害者保護のため、被害者を老人ホームに入居させたり、成年後見開始の審判申し立てなどの処置をとるほか、加害者と被害者の面会を制限することができると規定し、介護者の負担軽減のための支援策も求めている。  

 厚生労働省の全国調査によると、02年11月からの1年間で虐待が発覚した高齢者は1991人だが、それはほんの一部でしかない。  

 虐待者の約9割は息子や嫁などの家族である。家族が介護に疲れて虐待を起こすような心理状態にもっとも陥りやすいのは、高齢者が寝たきりであったり、認知症(痴呆症)である場合だ。このとき高齢者はすでに自らの力で救済を訴えることが困難になってしまっている。密室で放置されかねない高齢者の救済は急務の課題なのだ。  

 虐待が発覚したときは、現在でも市が緊急避難として老人ホームなどに入居させている。私の勤めている老人ホームでもここ1年に入居してきた人は、この「虐待から逃れてきた高齢者」ばかりだ。  

 最近では、ひきこもりがちな息子から暴力をふるわれ、ほとんど食事をたべさせてもらえなかったり、年金を取り上げられるなどの虐待が増えてきた。加害者はあきれるほど幼稚で、親は「高齢者」というにはまだ若い、60代から70代の人がほとんどだ。  

 高齢者の救済はとにかく急を要するため、市の負担でまかなわれる公立の老人ホームが駆け込み寺となるケースが多い。ホームが新しく居を構えるまでの一時避難所になったり、経済的に他に移れない場合は終の棲家となったりしている。「高齢者虐待防止法案」が「被害者保護のために老人ホームを活用するなどして加害者と被害者の面会を制限できると規定する」のなら、公立の老人ホームの存在は「法案」を生かす有効なカードとなるだろう。   

 ところが現在、どこの市も財政赤字を理由に公立の老人ホームを閉鎖する政策を推し進めている。わが老人ホームも、今年度いっぱいで閉鎖される予定だ。  

 公立のメリットは、所得に関係なく、家族とあるいは一人での生活が困難な人は誰でも入所できることにある。わがホームでは、所持金が何十円という状態で行き倒れになって入所して来た無年金の人も、年金をたくさん貰っていて入居費を満額(10万円くらい)払っている人も待遇には少しの差もない。  

 これに対し、民間の経営する老人ホームは入会金が何十万円も必要で、月に10万円以上の入居費がかかる。公立のホームが閉鎖されれば、国民年金にしか入っていない人や無年金の人には、虐待によって生命に危険が及んでも避難する場所がなくなってしまう。これでは「高齢者虐待防止法案」をいくら叫んでも、生死のボーダーに在る高齢者を見殺しにすることにしかならない。  

 核家族化が進むなかで、昔のような3世代同居に戻ることは困難だ。「被害者保護」が少しでも実行されるために、是非とも公立の老人ホームを残してほしい。        

(ヘルパー)


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個人情報保護法

患者の番号化で医療事故をふせげるか

拓美零子

 4月1日から個人情報保護法が全国施行され、個人の氏名や住所・生年月日などの個人情報データを所有する企業や国体などは、その情報の適切な取り扱いを義務づけられることになった。各企業の担当部署は法律への対策に追われ、電器量販店ではシュレッダーがとぶように売れているという。個人情報保護関連の本もベストセラーだ。  

 今回の法施行と共に行政機関や独立行政法人についても新法が整備され、わが公立病院も新しく個人情報保護条例の対象となり、対策を迫られることになった。  

 先日は「個人情報保護法への対応」と題する事務局主催の講演会が開催された。以前ならこの種の呼びかけ講習会は不人気で参加者も少なかった。だがこの日は違った。大変盛況で、部屋は参加者ですぐにいっぱいとなった。驚いたのは、清掃業務を委託している業者からも数名の参加者があったことだ。なる程、ゴミを扱う清掃業者からは個人情報が漏洩する可能性が高い。こうした働きかけがどれ程効果があるかはわからないが、委託業者にも義務づけを行っているという実績が重要らしい。

企業以上に責任負う行政

 そもそも個人情報とは何だろうか? いわゆる「プライバシー」とどう違うのだろうか。プライバシー情報は、次の3つの条件にあてはまる情報のことをさす。@個人の私生活上の事実に関する情報Aまだ社会一般の人が知らない情報B一般人なら公開を望まない内容の情報。  

 私も含めて公立病院の職員の多くが、地方公務員法に定める守秘義務を負っている。「正当な理由はなく、業務上で知りえた人の秘密は、漏らしてはならない」ことになっているのだ。ここで言う「業務上で知りえた人の秘密」がプライバシー情報に重なる。  

 だが個人情報となると、それが〈私生活上の情報かどうか〉〈事実であるか〉〈すでに公表されているか、公表されることを望むかどうか〉に関係なく、「特定の個人を識別できる情報」であれば、たとえ電話帳にのっている氏名や住所などでもすべて該当することになる。  

 今回の法制定は、大量の情報が流通するなかで、迷惑メールや覚えのない相手からダイレクトメールが送られてくるといった事態に対処するためだといわれている。これまでなら氏名などの何でもない情報も、流出し利用されることで重大な弊害をもたらす可能性が高いことが懸念されているのだ。  

 こうした社会的不安はまったく根拠のないものではない。民間に比べて認識に遅れや甘さが目立つ「官」の最悪の実例が、私の属する市の不祥事として現実化した。よりによって個人情報保護法が施行された当日に、市の係長が産業廃棄物処分場建設をめぐり反対している住民の住所氏名、電話番号を産廃業者にファックス送信したというのだ。係長は「業者が住民と話し合いをするように指導したかった」と弁明した。だが、反対住民は業者から脅迫ともとれるような文書を送られたというのだから、市が業者と結託して反対派崩しを仕組んだと非難されても仕方がない。  

 個人にしてみれば、私企業には不用意に情報を伝えない防衛策を講じることはできても、行政機関に対しては強制的に情報が集められてしまうため防衛のしようがない。その意味で行政は企業以上に大きな責任を負っているのだ。

ネームプレートはずす病院も

 病院は、病歴カルテは言うに及ばず、病室入口のネームプレートや外来の順番を知らせる放送に至るまで、個人情報が満載の場所である。そのためわが職場でも、大わらわの対策が行われている。まずはシュレッダーがあらゆる所に導入された。これまで裏面をメモ用紙として利用していた検査や薬の伝票など、不要となった紙はすべて裁断されることになった。大量の紙ゴミの出現だ。もともと病院は感染防止の観点からディスポーザブル(使い捨て)にする物品が多い。それに加えて紙ゴミが一気に増えたため、処理に大変である。  

 病院によっては、病室入口に掲げた患者のネームプレートを外したり、外来の受付に銀行にあるような番号札システムを設置して、患者の名前を呼ぶことをやめたところもある。  

 しかしすべての病院がそうなるかといえば、それほど簡単にはいかない。医療事故防止のためには、何といっても患者を間違いなく特定することが必要になる。ネームプレートをはずしたり、名前を番号で呼ぶようになれば、その分医師も看護婦も患者の氏名や生年月日などの個人情報を、何度も何度も目で確認したり本人に言わせたりなどして徹底する以外なくなる。  

 他にも不安材料としてあげられているのは、交通事故などの夜間の救急時と電話での問い合わせへの対応だ。個人情報を第3者に提供する場合は、本人の事前同意が原則になっている。相手が警察であっても例外ではない。ただし、生命にかかわる場合や緊急性が高く、本人の同意を得にくい場合は例外とされている。つまり本人の意識が少しでもあるなら、同意を得る努力をするか、身元をたずねてきた相手に「緊急時である」と言わせなければならないのだ。瞬時の判断や対応に迫られる担当者は本当に大変だなと思う。  

 私自身、気をつけてはいても、患者さんから「あの看護師さんはどうしたの?」などと聞かれると、割と無防備に異動先を言ってしまったりすることもある。職員や派遣の人などの個人情報も保護の対象になっているのはもちろんのことだ。  

 なんだかますますストレスを感じることが多くなってきたこの頃である。     

(病院職員)


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郵政民営化法

中途半端な民営化ならやめてくれ

織笠亜衣

 とうとう郵政民営化法案が閣議決定されてしまった。これから国会の審議を経て2007年には民営化されるだろう。 私たち職員の心境はかなり複雑だ。「民営化にさせないぞ。公社で充分やっていける」の掛け声のもと、職員には実績を上げることが今まで以上に求められて来た。それなのに、貯金も保険も個人の利用限度額が決められているため、限度額を超えている人には「貯金を下ろしてください」と言わなくてはならない。そんな不自由な仕事が民営化すれば変わるかな?という淡い期待をもたなくもなかった。  

 しかし、今回閣議決定された民営化法案の内容を見ると期待だけで終わりそうだ。

みなし公務員はないだろう

 まず納得がいかないのが職員の扱いについてだ。民営化後の職員の身分は「みなし公務員」されることになった。  

 民営化して公務員でなくなれば、当然年金は国家公務員共済(国共済)から厚生年金に切り替えられる。国共済の組合員の25%を占める日本郵政公社共済組合が離脱すれば、国共済の基盤は揺るぎかねない。ただでさえ厚生年金よりも財政悪化が指摘されていた国共済はますます財政赤字になってしまう。そこで民営化後も「みなし公務員」とすることで、国家公務員共済のさらなる財政赤字化を避けたいということらしい。  

 確かに国共済は厚生年金よりも待遇がいい。負担と給付の割合からいえば厚生年金に比べずっと給付の割合が高いからだ。それゆえ、職員のなかには国共済にとどまったことを喜んでいる人もいる。しかし、自分としては日本郵政公社共済の厚生年金への移行を機に、日本の年金制度が一元化される方向に促されるなら、ずっと日本のためにはいいと思うのだ。  

 もともと郵政民営化を言い出したきっかけは、郵貯や簡保で集めた資金が財政投融資を通じて無駄な公共事業を増長させ、国が慢性的な赤字になっている現状を改革することにあったはずだ。年金の一元化はその一助となるだろう。それなのに「民営化すると国共済の赤字が増えるから職員はみなし公務員」というのでは本末転倒になりはしないか。  

 民営化後の会社の形態も疑問だ。持ち株会社の下に3事業各会社と窓口会社が置かれ、貯金・保険に関しては株を完全処理するという。問題なのはその株を買い戻すのに制限を設けない点だ。持ち株会社には国からの出資があるため、暗黙に政府が保証する一大財閥が出来上がる可能性もある。そのことを懸念した財界からの批判も大きい。  

 すでに財政投融資はなくなり自主運用しているが、運用先に制限がつけられていることからほとんど国債を買っているのが現状だ。民営化して自由に運用できるようになったとしても、それが国債の買い支えになってしまっては何の意味もない。お金の流れを変えるために強行されている民営化なのにこれでいいのだろうか?   

 職員が中途半端な公務員になるだけの民営化ならしないほうがいい。小泉の推し進める民営化では不満だ。

お金はいらないなんて言えない

 最初に述べたように、郵便局の貯金や保険は利用限度額が決められている。貯金は通常貯金も定期性貯金も全部合わせて1000万円、保険は保険金1000万円の契約まで。このことが仕事のやる気をなくさせている。一生懸命保険の話をして契約してもらっても、「限度額オーバーで入れません」なんてことが新人の時は何回もあった。今でも限度額を気にしながら勧誘している。貯金にしても公社になってから金融庁の監査が入るようになり、限度額1000万円を超えている人が大量に判明した。  

 せっかくお金を積みに来てくれたお客様に対して「お金はいりません」なんていう金融機関がどこにあるのだろう? と日々疑問に思いながらの仕事はうんざりだ。  

 貯金も保険も国が保証しているから限度額が決められているのだろう。それならいっそのこと、銀行と同じように預金残高に応じて預金保険を払うようにしたらどうか。当然ペイオフの仲間入りをすることになるので、破綻したら全額補償ではなくなる。農協や信用金庫のように貯金事業を全国で分社化独立採算にしてどこかが破綻したらみんなで補うようにしてもいいかもしれない。  

 こうした意見に対し、「資産規模が大きいから民業圧迫になる」という批判もある。もともと郵便局での貯金や保険は、民間企業がまだ未発達だった時の補完的なものとして始まった。都市部ではもう充分その役目は果たしたという声もある。しかし現状では、営業目標が課せられ、民間企業と競争していかなければならないのだ。  

 仕事をがんばると「民業圧迫だ」、がんばらないと「公務員は何もしなくても金がもらえてずるい」といわれる。じゃあどうしろって言うのよ!と叫びたくなる時もある。「民営化は避けられないだろう」というのが職員の本音だ。するならするで早いところはっきりとしてほしい。      

(郵便局職員)


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(2005年6月5日発行 『SENKI』 1180号3面から)

http://www.bund.org/culture/20050605-1.htm

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