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1990年初頭のグラミン銀行への旅の後、ピーター・C・ゴールドマーク・ジュニア氏
(ロックフェラー財団理事長)は次のように語った。グラミン銀行には、大理石模様のように冷たくわかりづらい加入手続はなく、白いワイシャツ姿の貸付担当者や金銭出納係も、青いワイシャツ姿の警備員もおらず、バリバリと音を立てて数字を刻む機械もないと。「グラミン銀行の地方のセンター集会所は掘っ建て小屋だ」と、ゴールドマーク氏は言う。「大きさは約15フィート×7フィート。そこでは、35人の女性たちが、いくつかの列になって床に座っており、1列の女性5人から成る1グループで事業案を計画したり批評したりする。各グループは、それより大きなグループへと貸付を付託する前に、グループのメンバー1人に対し、貸付を承認しなければならない。最も重要なことは、5人それぞれがグループの貸付保証人であるということだ。
私がそこを訪れた日、女性たちは座り、貸付担当者に報告し、両足で跳ね、彼らの16ヶ条の決議を暗唱していた。
見るにつれ、私は何か別のものを目にした。古くさい規則の粉砕や、因習的な規範の打破である。私は良い意味での破壊を見ることができた。その破壊されたものをここに挙げる。
http://www.results.jp/resultsjp/mc/mcs.txt
マイクロクレジット(少額融資)・サミット
1997年2月2ー4日
宣言書(草案)
1996年4月
今、貧困を解消し、経済的自立を実現する有力な方策として、マイクロクレジット(少額融資)が注目されています。
2005年までに、世界中の1億世帯の貧困家の女性たちに自立の道を開くマイクロクレジットを提供するためには、世界規模で運動を始める必要があり、そのためには全世界の人々や、様々な機関に理解と参加を請わねばなりません。
マイクロクレジット・サミット
リザルツ教育基金方
236 Mssachusetts Avenue,NE,Suite 300
Washington,DC 20002
phone:(202)546-1900
fax:(202)546-3228
micro creditsum@action.
序文
今回のマイクロクレジット・サミットの目的は、2005年までに1億世帯にのぼる世界中の最貧困家庭、とりわけその中の女性たちに対し、経済的自立の道を開くマイクロクレジット(少額融資)を提供しようとという運動を世界規模で始めることにあります。
実際にマイクロクレジットを行なっている人々、マイクロクレジットを調査・研究している人々、そしてマイクロクレジットを各国で展開していくための資源・資金を有する人々や機関は、相互に関係を持ち調整し合っていかなければなりません。単独でこの運動を実現できる機関はありません。公的私的を問わず、全ての諸機関が、また非営利団体もが、この世界的規模の運動の中で、それぞれの役割を担っていかなければなりません。
しかしながら、マイクロクレジット・サミットは、貧困を解消するために払われている多大な努力の労力のほんの一部に過ぎません。貧困解消のためには、広範にわたる重要な戦略が実行に移される必要があります。1億世帯の貧困家庭の女性達に自立の道を開くマイクロクレジットは、これらの戦略の1つに過ぎないのです。
マイクロクレジットの戦略の中ですら様々な方法が存在するのです。プログラムによっては、個人の事業に助成金を与えたり、生活ローンとして家畜を提供するところもあります。その家畜から産まれた子供は、近隣の人々に与えられたりもします。また、先進国では、技術訓練なども行なわれています。
世界中で貧困層が個人事業や小事業ビジネス拡張のための信用貸付を受けることは、不可能ではないにしても難しいのです。最貧困層の20%だけでなく、40%、60%、あるいは80%の人々でさえ貸付を受けることは容易なことではありません。先進国やその他の国々では、必ずしもその国によって定められた貧困ライン(貧困層とそうでない層とを分ける線)以下で生活する人々ではないにしても社会的、経済的ハンディキャップを負った人々に、多くの貴重な援助の手が差し延べられています。
マイクロクレジット・サミットでは、ここに記されていないものも含めてこれら全てのプログラムこそ、貧困を終わらせるための鍵となる構成要素であり、支援に値するものと考えております。
同時に、マイクロクレジット・サミットでは2005年までに、世界中の一億世帯の貧困家庭、とりわけその中の女性たちに、経済的自立の道を開くマイクロクレジットを提供するための行動計画に焦点を置いています。なぜなら、各種の貧困根絶運動から最も疎外されているのは貧困層の中でも特に女性であることを経験的に知っているからです。
マイクロクレジット・サミット組織委員会は 、最貧困層を援助する協議団体(CGAP)の政策助言グループ(PAG)によって定められた「貧困」と「最貧困」の定義を適用しています。PAGによりますと「貧困」は国ごとに定められた貧困ライン以下の生活をしている人々と定義され、「最貧困」はその貧困グループの底辺の50%の人々を指しています。
世界中の開発途上国がこのサミットの目標に到達できるよう、我々は最貧困層にマイクロクレジットが浸透することに焦点を合わせていく必要があります。
工業化された国々では、その国によって定められた貧困ライン以下の生活をしている家族の援助を第一目標としたプログラムに焦点を当てていかなければなりません。
マイクロクレジット・サミットは、貧困を解消するという大いなる公約の一部に過ぎません。しかし、私たちはこうした運動が支援に値するものと考え、世界1億世帯の貧困家庭、特にそれら貧困家庭の女性たちに、マイクロクレジットを提供するというサミットの主旨に賛同してくださる多くの方々が、私たちと共に貧困撲滅に向けた第1歩を踏み出してくださることを願ってやみません。
マイクロクレジットを利用する人々の人生は、人間の尊厳と勇気を示した物語といえます。彼らは、人間の精神力の奥深さと貧困の悲惨さに打ち克つ可能性、つまり貧しい人々がマイクロクレジットというごく基本的な手段への道が開かれたことにより、自らの力で貧困を克服したという勝利を示しているのです。
カーディー
セネガルに住むカーディー・ディンは4人の子供の母親です。数年前まで、家族をほとんど養うことができませんでした。村を訪れる支援機関の援助を受け、その日暮らしをしており、商売の知識や貸付へのアクセスもなく、貧困から抜け出すことができずにいたのです。
1990年にカトリック・リリーフ・サービスの援助を受けて、カーディーの村に銀行が設立されました。カーディーは、生まれて始めて銀行から40ドルの融資を受け、自分の小さな土地で飼うための家畜を買いました。その後、彼女の生活は飛躍的によくなっていったのです。今では、牛、鶏、羊に加え、馬も一頭所有し、良質で丈夫な家畜を販売するために努力し、安定した収入を得ています。ローンの返済もきちんと行なう彼女は、さらに多額の融資も受けられるようになりました。そのローンは月賦で返済しています。
現在、彼女は外部の援助に頼らずに家族を養うことができます。銀行の識字プログラムでも学んでおり、貧困の絶望的な状況を克服した彼女は、今や村の真の指導者となったのです。
ナージャハン
ナージャハンは、バングラディシュのグラミン銀行の利用者です。彼女の名前には、「世界の光」という意味がありますが、彼女は生後3カ月で親に捨てられて、近所の人に育てられました。12歳で結婚しますが、1年後、妊娠3カ月の時に夫にも捨てられ、その後は、育ての親の元に戻り、息子を育てながら家事を手伝っていました。
グラミン銀行に加入する前、彼女の年収は37.50ドルを超えたことがなく、土地もありませんでした。加入後5年を経て、彼女の年収は国民平均を若干上回る250ドルになり、羊2頭、妊娠中の牛1頭、鶏10羽、3分の2エーカーの土地も手に入れました。その土地は1000ドルの価値があり、米の収穫時には手伝いを2人雇うこともあります。5年生まで就学する子供はわずか46%というこの国で、彼女の息子は今8年生です。
ジュディー
ジュディー・テーラーは、シカゴで公的援助を受けいましたが、子供たちを育てるのに何年もの間苦労してきました。子供を1人亡くした悲しみをこらえ、内に威厳を秘めた彼女は、残った子供のためにもより良い生活を渇望していたのです。そして、わずかな給付金の足しにと靴の訪問販売を始めてみましたが、彼女の意気込みと販売能力にもかかわらず、依然として公的援助と医療保険に頼らざるを得ませんでした。ジュディーは健康にも悪く、最低限の賃金しか得られないこの仕事を将来にわたって続けるつもりはありませんでしたが、かといって他の仕事にも恵まれなかったのです。
ある時、ジュディーはケースワーカーからWSEP(女性自立プロジェクト)を紹介されました。WSEPは、事業を始めようとする低所得層の女性を支援するためにアメリカで数多く設立された組織の1つです。まず、ジュディーは600ドルを借り、2年半後には、得意客を確保しつつ、さらに多額のローンを利用して、自分の店を開きました。
現在、彼女は「ジュディーの高級靴店」という店を経営しています。WSEPのミーティングによくついてきた彼女の一番下の息子は、母親の小売り経営のほとんど全てを知っており、将来は自分も事業を起こしたいと話しています。
1.貧困と貧困に打ち勝つ戦い
技術進歩にも関わらず、発展途上国の人口の5分の1が毎晩飢え、4分の1は安全な飲み水といった必要最低限のものさえ手に入らず、3分の1は存在さえ脅かされるような言葉ではとても表現できないほど悲惨な絶望の中で暮らしています。私たちはいまだにそうした世界に住んでいるのです。
UNDP ヒューマン・ディベロップメント・レポート 1994
1.1 今日の世界の経済状態は、1つの完全な対照を成しています。一方は、豊富なエネルギーや資源を使って快適に暮らすことができる先進国及び発展途上国の裕福な人々のライフスタイルであり、もう一方は、生活向上のための教育や商業貸付を受けられないばかりか、栄養失調や伝染病の感染の危険にさらされている、そして貧困から抜け出すための手段を手に入れるチャンスのない貧しい人々のライフスタイルです。
1.2 一般に極貧とは、人間が成長し生きてゆく上で必要な最低限の栄養を満たすだけの生活収入が得られない経済状態のことを指します。つまり極貧の人々、特に子供たちは慢性的な栄養失調に陥っているのです。したがって彼らは、私たちにとってはなんでもない病気によってしばしば命を落とすことがあります。毎日35000人の子どもの命が慢性的な栄養不良と飢餓に関係した病気で5歳の誕生日を迎える前に失われています。もし貧困を根絶することができたなら毎年約1億3百万人の子どもの命が助かるのです。
1.3 第2時世界大戦以後、世界的な生活水準の安定した伸びにも関わらず世界保健機構は1995年10億人以上または世界の人口の5分の1が極端な貧困のなかで生活しており、貧困は死亡原因の中心となっていると報告しています。
1.4 またUNDPによると、世界人口の5分の1を占める極貧の人々のGNPが、世界のGNPに占める割合はのわずか1.4%であり、商業貸付は0.2%を占めるに過ぎません。(図1参照)
世界経済の不均衡
経済活動の分布、1989年の世界合計の比率(収入により全人口を5等分)
【1/5の裕福層】
GNP:82.7%
国際貿易:81.2%
商業貸し付け:94.6%
個人貯蓄:80.6%
個人投資:80.5%
それぞれの帯は、世界人口の1/5を表わす
【1/5の貧困層】
GNP:1.4%
国際貿易:1.0%
商業貸し付け:0.2%
個人貯蓄:1.0%
個人投資:1.3%
1.5 大多数の貧困者は第3世界の貧しい国々に見られます。世界の最貧困層20%の人々のうち、3分の1近くがインドと中国に住んでいるのです。国別人口比で見ると、その最貧困層20%は“第4世界”として知られる最貧国(付属資料のLDCリスト参照)45カ国に集中していることが分かります。また、貧困と飢餓は裕福な国々の国境付近にも存在します。収入維持プログラムは、裕福な国の貧困を緩和する一方で、スーダンやフィリピンと同じようにロンドンやアラバマの田舎の貧困者を衰弱させているのです。彼らの社会的、心理的な無力感と依存性は少しも改善されていません。先進工業国でも経済的逼迫から、社会福祉プログラムの“安全網”は深刻な脅威にさらされ始めているのです。
1.6 開発途上国においても先進国においても、貧困は益々女性に影響を及ぼしています。UNIFEMの調査によると女性の収入は世界の収入のたったの10%であり、また財産の所有は10%にも満ちません。基本的教育を受けていない10億以上の成人人口のうち6億以上が女性です。1日に1ドル以下で生活している13億の絶対的貧困人口のうち9億人が女性です。開発途上国の経済において女性の労働力が決定的に貢献を果たしているという事実にも関わらず、女性が資力を持つ道は極端に制限されています。例えばアフリカの国々では女性は農業労働力の60%以上となり総合食料生産の80%以上の貢献を果たしていますが、小作人の10%以下の融資しか受けることができません。
貧困の中での勇気と救い
フランシスカ・ロハスは9歳で孤児となり、道端の溝で暮らしていました。ある女性が彼女を見つけて、家に連れて帰り、洗濯とアイロンかけの仕事を与えましたが、フランシスカは17歳の時にそこを飛び出し、18歳で最初の子供を出産しました。
「初めて銀行のミーティングに参加した時は、私にはローンを組んで返済するなんてできないと思いました。でも、そこにいた銀行員が、私の可能性を信じてくれたので、思い切ってやってみようと思ったのです」と、エルサルバドルで加入者となったフランシスカは語っています。
最初のローンで、フランシスカは、市場で売るために香辛料と麺、お盆に載った小さな陶器類を購入しました。50ドルのローンを3回受けた後、彼女は45ドルを貯金することができたのです。「私は今まで貯金をしたことがありませんでした」と語った後、フランシスカはこう続けています。
「以前私は週17ドル50セントしか稼せげませんでしたが、今では毎週35ドルから53ドル稼いでいます。それまでの約2倍のお金を食事や家のために使ったり、薬を買ったり、貯金にまわすことができるのです。今、私はとても安心しています。どうやってお金を返そうかと心配せずに、ゆっくり眠ることができるからです。だれにも頭を下げなくてもいいので、自信もつきました。以前の私のように貧しかったとしたら、あなたもきっと非常に恥ずかしい思いをすることでしょう。私がまだ幼かった頃でさえ、人々は私のことを見ようともしませんでした。みんな私が何かをねだるのではないかと恐れていたのだと思います。ですから、友達は一人もいませんでした。今は、毎週、銀行のミーティングに出席しています、みんな私に会うのを楽しみにしてくれます。今の私には友達がいるのです。これが一番大切なことです」
2.外国援助、公共福祉事業、そして最貧困
海外援助金のうち今すぐ生活支援が必要な人々のために使われる金額はほんの10%未満に過ぎません。西側先進国による二国間援助は年間400億ドルですから、食糧・基礎保険・飲料水・衛生管理・初等教育・家族計画などに使われるのは、わずか40億ドルということになります。これは援助する側の国で1年間に消費される運動靴代の半分にも満たないのです。
ユニセフ「世界子供白書 1993」
2.1 近年、援助機関の内で援助政策及び援助そのものの大きな見直しが行われてきています。その中の最も重要な変化は、援助プログラムが世界の最貧困層20%まで浸透していないという評価です。NGOを通しての最貧困層の援助を目標とした試みが熱心に行われようとしています。比較的豊かな国から貧しい人々への公共援助プログラムは失敗に終わる例が少なくありません。その理由は貧しい人々が自立できる道をあまり開いていないことにあります。働き口を作ることへ焦点をあてるかわりに多くの援助策はどうにか生き残れるためのわずかな食料などを供給するのみで自活の道を妨げています。経済的自立の選択は、規定による障害、投資を始めるための資本、または融資が利用できないことによりしばしば妨げられます。最近になって、公共福祉事業は低収入事業者がマイクロクレジットプログラムを受けられるよう財産と収入の限度を当分見送るという特例の実験プロジェクトを進め始めました。これらのプロジェクトはNGOの強要である場合が多いです。
2.2 最貧困層の人々に自己決定権と経済的自立への参加を促す重要な第一歩が着手されました。おそらく最も重要なことはもし貧しい人々に基本的な経済力を手に入れる道が開かれさえすれば彼らは自ら進んで貧困から抜け出していくという事実を自覚させることでしょう。この識見は都会や田舎の村に住むとても貧しい人々を援助する少額融資プログラムの支援を拡大しています。
零細事業者への援助は、非常に貧しい個人起業家、なかでも女性たちから、特別な関心がよせられるでしょう。なぜなら、こうした人々はそれら援助の手が届きにくくとも、零細事業に頼って生きているからです。 1994年6月22日
USAID憲章 零細企業援助
1世帯を6人家族として、もし我々が1億世帯に資金援助することができたなら、1日1ドル以下で暮らしている世界中の人々の半数を救うことになるのです。それはとてもすばらしいことであり、だからこそ、私は喜んで参加したいと思うのです。 1995年10月2日
世界銀行総裁 ジェームス・D・ウルフェンソン
私は皆様と同様、この「マイクロクレジット」という画期的な手段が、貧困の撲滅に必ずや威力を発揮するであろうと堅く信じております。
国連開発計画行政官 ガス・スペス
先進諸国でさえ、貧困層の援助計画の多くは失敗に終わっています。援助に頼る生活から抜け出す手段はほとんど与えず、働ける状況を作り出すことよりも、当座の生活に必要な物資を提供することによって、彼らの自主性を摘み取ってしまうからです。個人で事業を始めようとしても、たいがい条例違反や自己資金不足、融資が受けられないといった問題で行き詰まってしまうのです。
3 最貧困層の自助努力
3.1 世界中から貧困を根絶する闘いの主力となるのは、自分のため、とりわけ子供たちのために、何としても生活を改善したい、成功したいという人々の願いです。人間の熱意はどんな援助プログラムより強い力を秘めています。自分の持っている技術がどんなにささやかなものでも、彼らはそれを活かして少しでも生活を改善しようとし、日雇い労働者として働いたり、朝から晩まで街角に立って飴玉を売ったり、靴磨きをしたりしています。毎日何時間もかけて遠くまで働きに行ったり、自分の住む家を離れ、時には国を離れて、何カ月もあるいは何年も、愛する人々と離ればなれになりながら働いているのです。
賃金労働に就けない大部分の貧しい人々は、あらゆる手段を使って細々と生計を立てています。ラバズのある女性は道端でオレンジを売り、ボンベイのある男性は屑鉄を叩き伸ばして鍋を作っています。これは、雇用のないところで、自ら職を作り出して生き延びている何億という人々の代表的な例といえます。彼らは不利な条件と闘いながらも家族を養い、家計をやりくりしています。発展途上国では労働人口の50%以上がこうした個人事業家であり、多くの都市部ではこの割合は70%にのぼります。
4 金融市場における見えざる貧困層
4.1 貧困層の人々のこうした自助努力の大部分は、正式な金融機関からは無視されています。彼らに融資をしても利益は上がらないので、貧しい人々は融資の対象とは見なされていないのです。しかし、最貧困層の人々にも、自分たちのささやな事業を起こし、維持するために資金が必要なのです。商品を作ったり農産物を売ったりするためには、原料や材料を仕入れなければなりません。資金さえ借りられれば、靴を作って売るための革が、ミルクを搾るための牛が、家具を作るための木材と釘が、食べ物を作って売るための穀物粉と肉が手に入るのです。通常の金融機関では相手にされないため、非常に貧しい人々は、時には日に10%もの金利を要求する昔ながらの高利貸しに頼るしかありません。しかし、こうした高額の金利を払っていては、貧しい者はいつまでたっても貧しいままなのです。
4.2 先進国においてさえ、自営業者が受けられる融資は多くはありません。まして貧しい人々に融資するための組織に割かれる資金ときたらごくわずかです。職に就いている人々が消費を促進するという名目でクレジットカードという形の融資(マイクロクレジット)を受けることができるのに対し、庭師の仕事を始めるための芝刈り機を買おうという人や、美容院を開くために道具を揃えようという人々は、金融機関に何の援助も期待できないのです。
5 マイクロクレジット;貧しい人々に自らの力で貧困から脱出する力を与えるもの
1975年、銀行が依然として多くのリスクを避けていた頃、ある野菜の行商人が銀行を訪れました。彼女は経済的に大変行き詰っており、絶望的な状況でした。彼女の夫は1人で織物を営んでおり、毎日あちこちぶらついては何とか空腹を満たしていたのです。これでは、彼女や子供たちは生活していけません。銀行は彼女に50ルピーを貸し出すことにしました。そして彼女を伴ってグリーンマサラス(コリアンダーのようなもの)、ハッカ、ショウガ、ニンニク、トウガラシといった香辛料を買いに行き、その日は病気で空腹だった彼女の子供たちをSEWA(自営のための女性協会)が預かりました。彼女は香辛料を売って、6ルピーの利益を得たので、その夜は、多くの食べ物を持って家に帰りました。彼女はその後も毎日仕事を続け、翌週には51ルピーを返済しました。彼女に融資をしたことで、銀行は少しのリスクも負いませんでしたが、彼女にとっては生死に関わる真剣な問題でした。このことをきっかけに、私たちは多くの女性たちに50ルピーの融資を始めたのです。
インドSEWA事務長 WWB会長 エラ・バット
5.1 マイクロクレジット・プログラムは、貧しい人々が自分で事業を始める際に、必要とする最低限の資金を融資し、それによって彼らに自分と家族の生計を立てさせようというものです。マイクロクレジットプログラムはほとんどの場合経済的自立のための融資に加え、様々なサービスを組み合わせて提供しています。このサービスには貯蓄、トレーニング、ネットワーク、貧しい者どうしの助け合いが含まれています。マイクロクレジットは6つの大陸のすべての国の人々に実証してきた貧困解消の強力な手段です。マイクロクレジットプログラムは開発途上国の非常に貧しい約8百万の人々に浸透していると概算されます。
5.2 先進国におけるマイクロクレジット運動は、ゆっくりと、しかし着実に広がっています。何万という低所得者、特に女性たちは目的の決められた貸付資金や先進国における厳しい規制下での自営に関する法手続や事業計画に対する援助から利益を得ているのです。
今や、成功を収めた人々の数々の実績と、貧困解消のための戦略を描いた質の高い研究が数多くあります。これらの実績は、何十年や何百年ではなく何年という短期間に世界から貧困を撲滅することが可能であることを示しています。マイクロクレジットの真価と、マイクロクレジットが世界の何十億という最貧困者層の多くを救済する可能性は、ここに挙げる6つの調査結果に表れています。いずれも実際の経験と慎重な調査に基づいたものです。
5.3.1. 連帯責任システムの下では、貧困者、なかでも特に女性達はは貸付のリスクとならない
マイクロクレジットプログラムは様々な方法で異なった文化のなか動いています。例としてケニアのK_REP、涙慄浣のバンコソル(Banco Sol)などがある。これらのプログラムは非常に貧しい人々が他の被融資者に比べ同等のもしくはそれ以上の返済率を達成しているという事実を明らかにしました。返済の遅れや不良融資の割合はその他の銀行と比べ同等かそれより良い状態です。例えばバンコソルのエイミーグロサー氏の調査によると他の銀行では30日以上の延滞率が4.42%を示しているにもかかわらず、バンコソソルではたったの0.04%であることを明らかにしました。まれにある例外を除いて、成功を収めているプログラムの被融資者の大多数は女性です。このことは女性が家族の幸福にどれだけ献身的であるかを表しているものであり、また経済的自立への熱意の現れでもあります。
5.3.2. 開発途上国におけるプログラムの有益性と持続性は達成される
マイクロクレジット事業が経済の活性化を可能にすることの確信は革命的な事実である。多くの人道的プログラムは一人援助する毎にそのプログラムの資金を一人分浪費していき、少しづつその経済的限界に近づいて行く。社会的影響により動機づけられた多くの人道的行動がこのような構造上の矛盾により縛られていたことから解き放つことをマイクロクレジット事業は可能にする。成功を収めているマイクロクレジットはより多くの自助努力を促す。
マイケル・チュ ACCION インターナショナル会長
1994年の「零細事業金融の裾野の拡大ー成功プログラムからの教訓」というレポートの中で、クリスセン、リネ、ボーゲルの三氏が、バンコ・ソル、FINCA・コスタリカ、グラミン銀行を含む11の零細事業金融機関の調査を行なっています。
それによると、11機関の中には無償資金援助や補助金を受けて存続している機関もありますが、助成を受けずに独自で運営を続けているところも、2、3あり、全体的には持続可能であることが示されています。開発途上国におけるマイクロクレジット・プログラムは急速な発展が約束されているといえるでしょう。クリスセン、リネ、ボーゲルの調査は、それぞれの機関の成功例と機関の拡大を示した上で、開発途上国のマイクロクレジット機関が金融市場で、充分な競争力を持ち得る事業になる可能性のあることを指摘しています。
5.3.2.1 アメリカの多くのクレジット専門家は、先進国ではローンからの実収入による持続性は望めないであろうことに同意しています。しかし、多くがマイクロクレジットは貧困と戦うための費用がかからない効率的な方法であるという見方をしています。マイクロクレジット・サミットは、先進国のプログラムが持続性に乏しいとしても、それが個々人の才能を引き出し、みごとに貧困から抜け出す手助けとなるならば、当サミットが祝福に値するものであり、こうしたプログラムの発展を促すべきであることを断言します。
5.3.3 マイクロクレジット・プログラムは広範囲に広がっている
マイクロクレジット・プログラムは民族・文化の相違を越えて、急速に世界へと広がっています。グラミン・トラストはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの19の国でプロジェクトの開始を支援しました。また、FINCAは、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの14カ国で、村営の銀行に関する技術を広め、そのモデルは少なくとも36カ国の68のNGOへと受け継がれています。そして、USAIDや他の開発援助団体は、多くの国々でプロジェクトに融資し、ACCIONネットワークは、現在ラテンアメリカの14カ国に25万7千人の加入者を有しているのです。
5.3.4 プログラムは多くの貧困者に浸透し始めている
マイクロクレジット・プログラムは大変広い範囲に浸透しています。バングラディッシュ農村活動協会(BRAC)は現在100万世帯に融資を行っている。FINCAには現在、14カ国で15のプログラムを実施しており、利用者数は5万5千人に達しています。現在、「飢餓からの解放」主催の「教育貸付」というプログラムが14のNGOや地域を基盤とする金融機関によって実施されており、8カ国で2万人の人々が参加しています。
5.3.5 マイクロクレジットは利用者の貧困からの脱却を援助する
実務家や参加者の貧困が軽減されているという直感的な理解を支持する証拠が徐々に増えつつあります。ACCIONは、インドネシアにおけるBRIマイクロクレジット・プログラムの調査を引用して、このプログラムによって、推定17万8千世帯で収入が76
%増加し(インドネシアの農村における一般的な所得の増加は12%)、「深刻な貧困」から抜け出せたと報告しています2。
カトリック・リリーフ・サービスの調査報告によると、タイの2つの村営銀行の利用者のうち97%が40ドルから200ドル所得を増やすことができたということです。同様に、エルサルバドルのFINCA村営銀行の利用者380人との面接では、彼らの週給が平均145%増加したことが分かっています3。
1995年に世界銀行は、ハンドカー、ハリリー、ハンによるグランミン銀行の詳細な調査を発表しています。調査員は、グラミン銀行のある村とない村との賃金水準を比較しました。その結果、グラミン銀行がある村の方が賃金水準がかなり高いことが分かったのです。これは、グラミン・クレジットによって、経済活動が活性化した結果、労働市場が縮小し、それによって地域の収入が増えたことを示しています。また、グラミンの利用者たちが、1994年には1987年よりはるかに多く貯蓄しており、グラミン銀行から受けた訓練援助のレベルと関連して、より多く貯蓄していることがわかりました4。
3 エリザベス・リンとリンダ、S・ロスブラット「なぜ信用貸付を行うのかー主要な零細企業金融機関の分析調査ー」(ACCIONインターナショナル1994年9月 p.17)。アン・ダンハム・サトロの研究(「カぺデスの開発の影響の調査」ブリーフィング・ブックレット/ラカヤタ・インドネシア銀行/ジャカルタ/インドネシア リン、ロスラボットによる引用)。
4 スーザン・ハナ、マリオ・ガナッツァによる研究(「村営銀行:運営の状況」『SEEP Network』1995年 7月号P.71より引用)
5 シャヒドール・R、ハンドカー、バキ・ハリリーザド・カン 「グラミン銀行:功績と持続性」世界銀行貧困社会政策部門 1995年
マイクロクレジットは、利用者による貯蓄を要求するか強く薦めることによって、プログラム貯蓄計画と徐々に結びつきつつあります。実務家によれば、安全で便利な機関に貯蓄する能力は、貧困者の自立にとって非常に重要な道具になるということです。そしてまた長期に渡る経済的保証と自活に不可欠な資産をつくるのに役立っている。
5.3.6 マイクロクレジット・プログラムは様々な社会開発のための手段となる
低所得の母親の収入が増えると、家族の暮らしは1歩1歩よい方向へと変わっていきます。まず母親は、より多くの食料を買うことができるようになります。良い食事や栄養を摂るにしたがって、家族はますます健康になっていきます。体が健康になれば、病気に対する抵抗力が増し、エネルギーが蓄えられ、働いたり学んだりする意欲も湧き、生産性も高まります。家族の栄養状態や健康が安定すると、子供の教育にをよりお金をかけるようになり、その次には住宅を改善するためにお金が使われます。そして最終的には、これらの結果は利用者の自尊心を形成することにつながっているのです。 FINCA創設者 ジョン・ハッチ
貧困貸付プログラムに共通する特徴の一つは、週1回、2週間に1回、あるいは月に1回の、連帯グループの定期的なミーティングを行なっていることです。これらの定期的なミーティングは、ローンの分割返済を機能させるだけでなく、利用者グループの団結を強化するという重要な役割も果たしています。また、プログラムの計画という観点から、これらの定期ミーティングでは、充実した公開討論が行なわれており、健康管理、公衆衛生、家族計画、結婚持参金の廃止やビジネス経営その他の問題について学習及び議論がなされています5。インドにおける貧困貸付プログラムSEWAの創始者は、利用者が共通の問題を考えたり、共通事項に合意したり、共同活動を決めたり、共通したイデオロギーを養ったりするためにプログラムが利用者らを組織すると述べています。託児所、学校、遊び場、診療所、再植林、飲料水、電力化、読み書きの授業などは、この経験豊かな利用者グループの指導力や団結力によって産み出された社会開発プロジェクトのほんの数例に過ぎません。
6 バーバラ・マクニール、クリストファー・ダンフォードの論文は、マイクロクレジット・プログラムの社会的、経済的利益に関する研究をとりあげている。(「信用貸付と貯蓄が飢えと栄養失調に有効であるための条件ー書評ー」『飢餓からの解放』)
6 成功を収めているマイクロクレジットプログラムの特徴
6.1マイクロクレジットの進め方はプログラムごとに異なっていますが結果として上で述べたような大きな成功を収めているプログラムの多くには共通した特徴があります。これらのマイクロクレジットプログラムは本質的に民主的です。そしてこれらのマイクロクレジットプログラムは高い水準の経済的自立の手段を人々に与え、そして組織化した意思決定機関への広い参加を助長しています。成功をおさめている例のほとんどの場合、担保のような昔ながらの保証は仲間どうしのグループによる集団責任のシステムにとってかわりました。多くのマイクロクレジットのモデルがそうしているように、借り手自身がその銀行の所有権を持つこともまたもう一つの実現可能な目標です。地方の銀行か融資組合かにかかわらず、これらのプログラムはSEWAの設立者であるエラバット氏によって定義された「人々の組織」(People's organization) の参加型民主主義的性質を帯びています。「人々の組織はその貧しい労働者、生産者、企業家である会員の利益のために存在しまたこの人々により管理され民主的に運営され彼らの自信をつけることを目的としたものである。」とバット氏は述べています。
6.2マイクロクレジットの借り手の状態を最もよく判断できるのは借り手自身であり、借り手は融資を受けられたときどのように使うべきかを最もよく理解しているという基本的前提をほとんどのマクロクレジットプログラムは主として受け入れています。それぞれの借り手は自分の状況に応じた収入を得る活動を選ぶ機会があります。同時に借り手どうしで構成しているグループメンバーから建設的な批評を受けるという利益もあります。このようにしてプログラムは個人の創造性と仲間どうしによる参加民主主義的計画の両方から刺激を受けています。多くのプログラムは借り手にアドバイスを与えますが仕事を始めるときの責任、そして最終的な責任は借り手個人とその仲間の借り手グループによるものです。成功を収めているマイクロクレジットプログラムの他の特徴は次のとうりです。
6.2.1 ・ローン適用の調査及び承認のための手続きが簡単である。
6.2.2 ・クレジットや関連サービスを便利かつ利用者に友好的なスタイルで村や近隣の ユーザーに提供している。
6.2.3 ・少額かつ短期(3カ月から1年)のローンを早急に行っている。
6.2.4 ・最初のローンの返済が終わると同時に、より高額のローンが利用できる。
6.2.5 ・利子率が運営コストをまかなうのに充分であるか、もしくはその一助となるよ うに設定されている。
6.2.6 ・貸付プログラムと同時に貯蓄を促している。
6.2.7 ・マイクロクレジット利用者による意思決定への民主的参加への約束とそのため の教育。
6.2.8 ・女性がマイクロクレジットの受取人となるようにプログラムの運営を合わせ る。
7.マイクロクレジット以外の援助
7.1「借り手が最もよく知っている」という原理に基づいて開発途上国の最貧困層の人々を対象に運営されている多くのマイクロクレジットは利用者の経済的自立の必要性に応じて他のサービスも始めています。多くの貧しい人々は市場の中で何とか自営業らしきものを営んでいます。今その市場はますます世界市場に影響され左右されつつあります。最貧困層の人々が持続的に収入や財産を得、生計を立てていくには以下のことが必要です。
7.1.1 ・市場の情報と取引のつながり、ビジネスのコネ
7.1.2 ・生産性を高めるための適切な技術と方法
7.1.3 ・原材料仕入れの際のノウハウ、コネ、交渉力
7.1.4 ・健康と社会的安全体制および
7.1.5 ・個人及び共同企業のための適切な経営の専門的知識及び意見。
7経験的に女性は男性に比べて、新しい現金収入を家族の福祉のために使う傾向がある。同時に、新しい収入を家族 に提供することは、女性の地位向上につながり、それは彼女自身の利益にもなる。
7.2同時にますます成熟したマイクロクレジット機関が上記のサービスを拡大していくときフィーフォーサービス型(fee-for-service)(サービスに対しての料金の支払い)の事業運営を続けていくことが大切です。開発途上国でのマイクロクレジット事業によるすべてのサービスは貧しい人々がこれらのサービスの料金を支払うことが当然であるということを通して明瞭かつ直接的な価値基準を示して行くべきです。
7.3貧しい人々へのこれらの金融以外のサービスの成功を見極める基準となるのは以下のものです
7.3.1 ・付加価値;サービスは小企業の生産性、売り上げ、利益をのばす直接の影響を 持つべきである。
7.3.2 ・規模;マイクロクレジット機関は何千何万もの利用者に与えるサービスの潜在 的収容能力を持つべきである。
7.3.3 ・持続性;サービスを供給する機関は、どのようにこのサービスを補助金なしに
初期の実験的期間と、その成長の後持続させていくかを示す明確なプランを持つ べきである。これらのサービスは資金の非常に多くを占めるため、これをカバー するために基本財産もしくは資本金の作成のための戦略、相互補助金サービス、 フィーフォーサービス型の事業運営の確立を必要とすると思われる。
7.4このようなアプローチはサービスの供給のため世界中のいくつかの組織でうまく適用されています。このようなサービスは以前はとても貧しい企業家への社会経費として支えられていました。SEWA銀行はその組合員の健康保険料および生命保険料の支払いを資本金からの収入でカバーしています。組合員の貢献は保険金の支払いと、一時的に資本金を作るための中期融資の払い戻しをするのに十分なものになっています。グラミンやシャクティ(shakti)そして他の機関では自然災害が人々の生計を破壊してしまう国々で必要となる「緊急時、災害時の自治援助プログラム」をメンバーのために設立しました。
8 行動への呼びかけ
決心するまでには、躊躇があり、引き返したくなることがあります……独創力や創造力に基づくあらゆる行為について考えてみると、一つの本質的な真実があります。数え切れないほど多くのアイディアやすばらしい計画を、葬り去るようなものを無視してしまうことです。その瞬間こそ人は決意を固めるのであり、また神の摂理も働くのです。次のゲーテの対句は私が深く尊敬するものです。
できること、またできると思うことは、何であれ始めよ。
大胆さは、それ自体の中に才能と力を、そして魔力を秘めている。
W・H・マレー「スコットランドのヒマラヤ遠征」
8.1第二次世界大戦が終わった時点で、戦争に疲弊したヨーロッパと日本が瞬く間に復興を果たし、合衆国の経済的優位さえ脅かすようになるとだれが想像できたでしょう。20世紀になった時点で、その数十年後に、この地上から天然痘が撲滅されるとだれが想像できたでしょうか。1945年に開発途上国が一個人の寿命より短い期間で、幼児の死亡率を60%も下げ、平均寿命を41歳から62歳へと引き上げ、一人当たりの食費を35%も増やせるなど、だれが予想できたでしょう。
8.2私達はこれらの事実を、自己満足のために挙げたのではありません。人類が一致協力することによって、どれだけすばらしい成果が得られるかを述べたに過ぎないのです。団結した人類の意志が、巨大な、そしてダイナミックなエネルギーとなって、頑強に残存する貧困を根絶する時が来ました。
8.3マイクロクレジット機関は数々の成功を収めています。未だに困窮を極めた生活をしている人類の5分の1の人々の潜在能力を開発することは緊急の課題であり、そのためには、住んでいる場所に関係なく、貧困者にマイクロクレジットが浸透するよう世界的戦略をたてることが早急に必要なのです。
8.4私達はマイクロクレジット・サミットに集った代表として、ここに多様な局面からなる世界的運動を遂行することを決議します。当サミットは、実務家、ボランティア、支援者、調整者、そして金融業界や政府の指導者たちが、共通の目的に向けて協力するための団結の場であり、また、人類の可能性を引き出すための、次の重要な段階へ向けての10年計画に賛同するために集う場でもあります。
8.5マイクロクレジット・サミットは、すべての善意ある人々に対して、2005年までに1億世帯の最貧困家庭、特にこうした家庭の女性に、マイクロクレジットが浸透するよう、私達と共に運動に参加してくださるよう呼びかけます。私達はマイクロクレジットという方法が、地上から貧困を根絶するための決定的な武器であり、このキャンペーンが、人々を貧困の呪縛から解き放すという歴史に残るような偉大な人道的2005年までに運動になると信じております。
マイクロクレジット・サミット
1997年2月2日〜7日
行動草案
9 マイクロクレジット運動の世界的要求
9.1 2005年までに1億世帯の最貧困家庭にマイクロクレジットを浸透させるには、無償資金援助、低利融資、及び市中金利融資を合わせ、200億ドルが必要とされる。これは開発途上国では、一人当たり150ドルの融資と50ドルの訓練費、及び制度開発費に、先進国では、一人当たり500ドルの融資と同額の訓練費、及び制度開発費に相当する。マイクロクレジット機関の経験から、無償資金援助及び譲渡性融資(低利融資)は、総額100億ドル必要であると考えられる。これらの試算は、さらに100億ドルが商業信用市場及び貧困者自身の貯蓄から利用可能となることを想定している。
9.2 当初その資金は膨大な額に思われたかも知れないが、意思がそこに存在する限り、それは到達できうる場所に位置している。またマイクロクレジットの確実性と生産性が証明されたように、マイクロクレジットの大きな成長も因習にとらわれた経済市場の中でも活気づけられることは可能であろう。今後10年間に必要となる資金のセクター毎の分担(推定)
出資区分(セクター) 無償資金援助 譲渡性融資 市中金利融資 2005年までに必要な
資金の総額(財源別) 二国間援助 40億ドル 0 0 40億ドル
(先進国政府機関)
国連機関 10億ドル 0 0 10億ドル
国際金融機関 ※1 0 30億ドル 0 30億ドル
民間セクター 10億ドル 10億ドル 0 20億ドル
開発援助機関(NGO)
親睦団体
民間基金
企業献金
宗教団体
個人
商業銀行 0 0 80億ドル 80億ドル
マイクロクレジット 0 0 20億ドル 20億ドル
利用者の預金
2005年までに必要な 60億ドル 40億ドル 100億ドル 200億ドル
資金の総額(タイプ別)
※1 世界銀行、地域開発銀行、IFAD
10 必要資金の種類
10.1 発展途上国の少額融資制度は、補助金追加がなくとも数年で、自分たちの計画を維持できる経済状態になる。しかし、現在、少額融資業は機関の設立と、規模拡大の無償資金援助と譲渡性融資という形を必要としており、これがサミットの目的である。少額融資運動は無償資金援助、譲渡性貸付や商業銀行、金融機関による公正な投資といった異なる融資援助を必要とする。
10.2 無償資金援助と寄付金は新しい少額融資機関の発足と著しい増額が望まれている。これらの資金は、初回融資と機関自体が自己運営してゆく上で充分な収入になるまでの、スタッフの給料や訓練プログラムに当てられる。また、少額融資機関に必要なのは、無償援助金の他に、基盤作りのための資金である。この種の援助の最も明らかな財源は、多国間、二国間援助計画や国家、地方行政であり、他の財源としては、個人寄付、援助金により設立された団体、親睦団体、学校、宗教団体、法人である。
10.3 国際金融機関(世界銀行、地域開発銀行など)と同じ補助金支給率の少額融資計画の貸付や、社会的認識のある個人投資家にとって、少額融資機関の早期の多くの人々の貸付利用の機会の増大が重要になってくる。これらの資金は、発足したばかりの機関が、特別な援助なしに維持してゆけるまでの過渡期の助けとなる。少額融資の利用は、別な方法以上に借り手を急速に増やし、職業訓練の場を提供するだろう。
10.4 保証は金融市場から少額融資計画に向けられる有限な
1.1 全世界1億世帯の最貧困家庭、特に女性に対し、経済的自立のためにマイクロクレジットを提供するという目標達成のためには、
・開発途上国下位45カ国(別紙参照)の国民のうち低所得層50%
・他の開発途上国や東側諸国数カ国においては、低所得層下位25%
に焦点をあてる必要がある。
先進国においては、上記目標達成のため、国ごとに定められた貧困ライン(貧困層とそうでない層とを分ける線)以下の家庭を主に対象としたプログラムに焦点をあてる。
1.3
各セクターの達成目標
2.1 マイクロクレジット・サミットは、以下のセクター毎に委員会を設置し、資金調達を含めた政策の改善、運営状況のモニタリング、及びそれぞれのセクターに属する機関や選挙区民への参加を呼びかける。
実務家
3.1 国際的に承認された定義と基準
実務家は、委員会を通じて制度開発の流動的モデルを定義し、計画や基準を案出する。これらのモデルを基に、実務家は商業金融機関の代表と協力し、個々の機関やマイクロクレジット産業全体の財政状況を分析できるよう、共通の会計用語や枠組みを定義する必要がある。
3.2 訓練カリキュラム及びプログラム開発のための協力
実務家は、新しい機関のスタッフを訓練し、既存機関の能力を強化するための推進力となる必要がある。訓練に必要な資金は、公的及び民間から集められた開設資金(無償資金援助)によってまかなわれる。
3.3 拡張計画の共同開発
実務家は、機関拡張の計画を綿密に立てる必要がある。それにより、今後10年間で全世界1億世帯の最貧困家庭、特に女性に対し、経済的自立のためにマイクロクレジットを浸透させるという目標を達成することができる。実務家は、キャンペーンの構造的枠組み(例えば訓練機関の規模や特徴、既存機関の拡張率、及び新機関の年ごとの開設数や目標成長率)を立案する上で力となるであろう。
国際金融機関
4.1 長期低利融資のための財源
世界銀行、地域開発銀行、世界農業開発基金( IFAD )といった機関は、零細事業者に財源を提供する上で中心的な役割を果たす。その財源は、譲渡性融資(例えば 長期の低利融資)及び融資保証を行うプログラムを通じて提供される。当初の推定によれば、これらの機関から必要とされる譲渡性融資は、今後9年間で30億ドルとなる見込みである(年平均 3億3千万ドル )。
4.2 貧困層を援助するための協議グループ(C−GAP)
1995年に世界銀行によって設立されたC−GAPは、最貧困者への支援に実績をもつ中間機関に対し、無償資金援助を提供する上で重要な役割を果たす。
政府
5.1 二国間援助プログラム
先進国政府の国際援助プログラムは、マイクロクレジット機関発足当初に要する無償資金援助(マイクロクレジット機関のみならず、トレーニング・センター及び様々なマイクロクレジット・ネットワークの運営費も含む)の大部分を負担する必要がある。同プログラムは、無償資金援助を受けるための煩雑な事務手続きや無償援助のモニタリングをなくし、開設資金が中間機関を通じて借り手に直接流れるようにすべきである。可能な限りこうした政策は、実務家からの情報をもとに共同で展開されるべきである。二国間援助機関は、必要な無償資金援助60億ドルのうち66%、すなわち今後9年間で40億ドルを拠出することが望ましい(年平均4億4千万ドル)。
5.2 法規制
マイクロクレジット機関にとって良好な環境をつくるためには、国際委員会及び国際機構を通じて、理想的な法的条項を創出する必要がある。この法律により、預金の運用が活性化し、預金金利の上限はなくなり、出資国に資本の回収を保証することができる。また、これらの条項はプログラムの統一を保証し、プログラムが直面している官僚的な障害を最小限にすべきである。この法規制の改正には、無担保貸付の許可と金融機関の免許交付の簡略化が含まれる。
1億世帯の最貧困家庭を支援する機関を広く設置するために、主要な国々でこの法律が採用されるよう目標を設定すべきである。
5.3 発展途上国の国家及び地方の零細金融資金
政府は国内プログラムをつくり、マイクロクレジット機関に適切な資金を提供すべきである。これにより、無償資金援助や譲渡性融資、及び商業金融機関にとって参加しやすい環境が創出されるであろう。
5.4 先進国の国家及び地方の零細金融資金
(後述)
5.5 先進国の譲渡性融資資金
先進国ではプログラムに譲渡性融資を使えるような方法を探るべきである。
援助資金調達組織としての国連ファミリー
6.1 プログラムの目標
国連組織の多くの機関は、様々なかたちで世界的な貧困問題に直面し、的を絞った開発を通じてその解消に関わっている。各機関はそれぞれの専門分野、例えば健康、子供の生存と成長、女性福祉、食糧と栄養、難民などに分かれているものの、これらの機関は、貧困解消が人類の福利に関するすべての問題に、密接に関連していることを認識している。
6.2 国連は組織として、1億世帯の最貧困家庭、特に女性に対し、経済的自立のためにマイクロクレジットを浸透させるという目標を、今後10年間の最優先課題として宣言すべきである。各機関は、貧困層を支援するマイクロクレジット機関をどのように進展させ、支援するかが問われるであろう。こうした要求は、各国政府と同様、書類手続の簡素化や、マイクロクレジット機関の早期運営費用のための無償資金援助の創出、及びネットワーク事務所の支援といった、様々な戦略を通して展開されるものと思われる。
6.3 国連の共同公約は、それぞれの機関(例えばUNICEF、UNIFEM、UNESCO、UNDP、WHO)のチームによって考案され、国連の統率者の承認を得るために提出された目標を盛り込むべきである。
6.4 資金調達
国連機関は、今後9年間に要する60億ドルの17%(10億ドル)を拠出する必要がある(年平均1億1千万ドル)。
NGO(非政府組織)
7.1 プログラムの計画目標
NGOは、一般的な社会開発、とりわけマイクロクレジット運動の先導力であり、マイクロクレジット機関を誕生させ得る可能性が最も高い組織である。
7.2 多くのNGOは、過去20年間にわたり、何らかのマイクロクレジット・プログラムを実施してきた。より多くのNGOが、マイクロクレジット機関の創設に携わる必要があり、すでに携わっているNGOは、既存のネットワークやマイクロクレジットの適用範囲を早急に拡大する必要がある。
7.3 NGOは、それぞれのプログラム計画を見直し、着実に拡大している貧困根絶活動にマイクロクレジットを組み入れる方法を模索すべきである。NGOは同時に、非営利セクターで誕生したマイクロクレジットを持続的・効率的な機関に発展させる方法を研究する必要がある。
7.4 NGOは、マイクロクレジット・サミットのために創設された実務家や支援者の世界的ネットワークと、各々のマイクロクレジット・プロジェクトを、連結させるべきである。それによってNGOは、マイクロクレジット産業の標準化計画に参加し、こうしたネットワークから得られる情報や技術援助を活用することができる。
7.5 NGOは、政策立案者の評議会における発言力を国際的にも国内的にも増す必要から、連合組織を徐々に創り上げてきた。これらの連合組織は、マイクロクレジットを支持する上でも、また制度開発の調整を図る上でも重要な役割を果たすことができる。
7.6 国際開発援助団体(例えばアメリカのInter ActionやオーストラリアのACFOA)の国内連合組織は、メンバー団体の間でマイクロクレジットの制度開発を支援する必要がある。NGOは、マイクロクレジット・ネットワークとの協力により、メンバー団体を教育するための訓練会議の標準スケジュールを作成する。それにより、既存のマイクロクレジット機関を拡大すると同時に、新規のマイクロクレジット・プログラム及びマイクロクレジット機関を創設するための最善の戦略と技術を習得することができる。NGOは、必要な無償資金援助60億ドルのうち__%(__百万ドル)を民間の財源から集めるか、集める計画を立て直す必要がある。
商業銀行
8.1 マイクロクレジット機関への市中金利融資拡大
民間金融機関は、1億世帯にマイクロクレジットを浸透させるために必要なクレジットの大部分を提供することになるだろう。早期試算によれば、必要な資金80億ドルは商業銀行、証券市場、投資基金によってまかなわれることになる。この目的を達成するためには、商業銀行が産業としてのマイクロクレジットの拡大に携わる必要がある。
8.2 マイクロクレジット産業の会計、実施、及び必要な法改正確認の協力
専門家、銀行家、会計士、及び実務家からなる国際委員会は、資産金額や負債率、マイクロクレジット機関を「銀行化」するための業績期間といった特徴を定義し、利用できるクレジットの水準を引き上げるために必要なマイクロクレジット機関の拡大基準を定義する必要がある。国際委員会は、マイクロクレジット産業のための国際会計様式の定義に深く関わり、法規制による障害を指摘し、法改正を提案してゆく上で積極的な役割を果たすべきである。
8.3 金融業界の育成
マイクロクレジットの活動にすでに参加している銀行家や金融業界の指導者たちは、マイクロクレジット産業との協力関係を構築し、さらに、マイクロクレジットに熟知した多くの商業金融業者を育成する上で重要な役割を果たす。
その他の企業
銀行以外の企業も「マイクロクレジット2005キャンペーン」において、多くの重要な役割を果たすことができる。マイクロクレジット・サミットは、民間企業セクターでの活動を調整し、マイクロクレジット運動と連携していくための強力で専心的な企業委員会を設置する予定である。企業は以下の分野で貢献できる。
9.1 民間セクターの分担金10億ドルの一部として、開設のための無償資金援助を提供する。10億ドルのうち企業は__%(__百万ドル)の無償資金援助を提供する。
9.2 マイクロクレジット運動、マイクロクレジット機関、及びマイクロクレジット・ネットワークに専門技術(例えば会計、マーケティング、広報活動)を貸与する。
9.3 マイクロクレジットについて職員や顧客を教育し、政府高官にマイクロクレジットの重要性を主張する。
親睦団体
10.1 親睦団体は、社会福祉に関心のある企業家たちを国際的規模で結ぶ有効な手段である。FINCA や他の組織は、既に ラテン・アメリカ の村営銀行と アメリカの親睦団体を結ぶことに成功している。 世界中の親睦団体は、開設のための無償資金援助、直接的技術援助(例えば団体のメンバーによる会計援助など)、及び世界中のマイクロクレジット機関に対する道徳的支援を行うことができる。したがって 親睦団体は、「マイクロクレジット2005 キャンペーン」 の中で、毎年どれだけの数のマイクロクレジット機関の開設を支援できるのか、具体的な目標を設定すべきである。親睦団体は、1億ドルあるいはキャンペーンに要する無償資金援助総額の __% を拠出することが望ましい。
研究者
11.1 これまでの知識を蓄積し、どの分野での研究が有益であるのかを評価する。
11.2 マイクロクレジット専門家のための訓練プログラムを開発する。
11.3 サミットの目標達成に向けて、サミットキャンペーン委員会と共に世界的進展を評価するためのプログラムを開発する。
メディア
12.1 メディアには、大災害と同様に人間の建設的な発展に関して報道する責任がある。マイクロクレジット機関の着実な成長や成功は、見出しの題材にはならないかもしれないが、定期的に印刷物や電子メディアでカバーする価値はある。
12.2 メディア専門家委員会は、マイクロクレジット運動の報道戦略を組織的に展開すべきである。これには、専門家が携わるプロジェクトの現地訪問、メディアに友好的な報道、優秀な報道に対する褒賞、及び専門的な要点説明会やセミナーが含まれる。
支援運動
13.1 支援運動の主な役割は、最も根本的な障害、すなわち失敗に対する恐怖と認識不足を解消することである。
これは、成功したプログラムやプログラム参加を通して一変した人々の生活を劇的に紹介することによって果たすことができる。この運動においては、マイクロクレジットの重要性を大衆に認識させ、資金を増大し、好ましい公共政策の風潮をつくるために、メディアの浸透戦略を発展させる必要がある。
次の段階
14.1 マイクロクレジット・サミットは、戦略を改善し、その発展をモニタリングし、各々の機関や選挙区民に働きかけ改革を支持するために、上記の各セクターに委員会を設置する。
14.2 マイクロクレジット・サミットは、サミット休会前に選出された創設委員から成る「マイクロクレジット2005調整委員会」を設置する。調整委員会には、銀行・NGO・企業・政府機関・マイクロクレジット機関・親睦団体・国連機関・国際金融機関・メディア・研究機関・及び支援団体等のすべての議長が含まれる。
14.3 リザルツ教育基金は、「マイクロクレジット2005調整委員会」の事務局として機能する。同事務局は、組織全体とその成果のモニタリングに対して責任を負い、プログラムの進行状況を示す「スコアカード(業績表)」を毎年発行する。これによって事務局は、際立った貢献をしている組織や個人を把握し、進行の遅れている分野を指摘することができる。
"RECLAIMING OUR DEMOCRACY - BANKING ON THE POOR"
1990年初頭のグラミン銀行への旅の後、ピーター・C・ゴールドマーク・ジュニア氏
(ロックフェラー財団理事長)は次のように語った。グラミン銀行には、大理石模様のように冷たくわかりづらい加入手続はなく、白いワイシャツ姿の貸付担当者や金銭出納係も、青いワイシャツ姿の警備員もおらず、バリバリと音を立てて数字を刻む機械もないと。「グラミン銀行の地方のセンター集会所は掘っ建て小屋だ」と、ゴールドマーク氏は言う。「大きさは約15フィート×7フィート。そこでは、35人の女性たちが、いくつかの列になって床に座っており、1列の女性5人から成る1グループで事業案を計画したり批評したりする。各グループは、それより大きなグループへと貸付を付託する前に、グループのメンバー1人に対し、貸付を承認しなければならない。最も重要なことは、5人それぞれがグループの貸付保証人であるということだ。
私がそこを訪れた日、女性たちは座り、貸付担当者に報告し、両足で跳ね、彼らの16ヶ条の決議を暗唱していた。
見るにつれ、私は何か別のものを目にした。古くさい規則の粉砕や、因習的な規範の打破である。私は良い意味での破壊を見ることができた。その破壊されたものをここに挙げる。
貧しい人々は救いようがない人々だという信念(盲信)。
女性は万物の中で最も救いようがないという信念。
土地を持たない貧乏人は、信用するのに恐ろしく危険であるという信念。
貧しい人々はお互いに協力することができず、ローンの管理や返済ができないという信念。
多額の貸付は常に、少額の貸付よりも良いという信念。
経済発展の最高の形態は、国が請け負う大規模かつ中央主権的なプロジェクトであるという信念。
地球を破壊することにより経済機構を構築することができるという信念。
もしこれらの古い信念が陶器でできているとするならば、グラミン銀行の床はその壊れた破片に覆われていることだろう。
グラミン銀行は、成文化された文章ではなく、約束(コミットメント)の上に成立している。つまり、契約以上のものを扱っているのである。グラミン銀行は契約をより強固にし、ビジネスセンスをも磨いていく。
さらに、グラミン銀行は産児制限に関して独自の方針を持つ世界でただ1つの銀行だ。メンバーは誓いを立てる。『私たちは、私たちの家族を少人数に保ちます』。
グラミン銀行は結婚に関して独自の方針を持つ世界でただ1つの銀行だ。メンバーは誓いを立てる。『私たちは新婦の持参金に関する罵詈雑言から、センターを解放します。私たちは、幼い子供同士の結婚(超早婚・幼婚)を行いません』。
グラミン銀行は、衛生に関して独自の方針を持つ世界でただ一つの銀行である。メンバーは誓いを立てる。『私たちは、簡易型トイレを作り、使います』。もし私たちが別の方向から世界に目を向けることを選択したとすると、どれほどのことが達成され得るか見え始めて来たであろうか」。