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原油高騰
石油枯渇時代がはじまっている(2)
http://www.bund.org/opinion/20050505-2.htm
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新エネルギーの実用化には官民の連携が必要
レポーター 久保田誠
小型水力発電 河川の落差や流れを利用
水力発電というと、これまではダムで川をせき止めて行う中・大規模なものが主流であった。近年、自然エネルギーの利用が叫ばれる中で注目を集めているのが、ダムをつくらない小型水力発電やマイクロ水力発電である。
水力発電そのものはCO2も出さずクリーンな発電方法だが、ダムを利用する水力発電では多くの問題が発生する。 中国・三峡ダムの例をあげるまでもなく、ダムで川をせき止め流域を水没させれば、流れが止まって魚が川を遡れなくなり水質が悪化する。ダムには砂泥が堆積し、下流では砂浜が消失する。ヘドロ状になった砂泥を放流すれば、水中の微生物や動植物が窒息死してしまう。「ダムができれば川は死ぬ」――環境面で考えると、ダムを利用した水力発電はとても自然エネルギーとはいえない。
これに対し、河川の自然の落差を利用したり、流れそのものを利用する小型水力発電はダムを必要としないので極めてクリーンである。山間部が多く、年間を通じて降水がある多雨な日本の自然条件は小型水力発電にピッタリだ。ダムを造る莫大な建設費もいらなくなり、設置コストも大幅に低減できる。
自然河川だけでなく、農業用水路や養殖池への水路、下水処理場からの放流落差など、設置可能な場所は広範囲にわたる。たとえば群馬県前橋市では、市中を流れる広瀬川に6カ所の小規模発電所が設置されている。こうした適地は、全国各地に無数に存在する。
ただし現状では、新たに発電を行おうとすると非常に制約が多い。一つが水利権の問題だ。河川に勝手に水車をかければ、河川法に引っかかる。農業用水で水車を回すことも、「目的外利用」ということで認められていない。堰や取水口で新たな流れを引くとなれば、相当の年月と労力をかけて水利権を取得・買収しなければならない。自治体が主体でやっても、手続きだけで数年〜10年もかかってしまうのだ。
最もクリーンな自然エネルギーであるにもかかわらず、太陽光や風力で行われているような公的な助成や補助がないため、コスト面での負担も大きい。発電された電気の電力会社の買い取り価格もかなり低めに抑えられている。
実は昭和20年頃まで、農山漁村電気導入促進法に基づき各地で農協や水利組合によってマイクロ水力発電が行われていたことがある。ところが、電力会社の送電線網が津々浦々まで引かれたこと、設備の維持管理が大変なわりに電力の買い取り価格が低く抑えられたことからすたれてしまった。小型水力発電の復活をはかるには、現行法や制度の変更が不可欠だ。議会や行政の積極的な取り組みが求められている。
燃料電池 水素の抽出が大きな課題
自然エネルギーそのものではないが、化石燃料を燃やすありかたからの転換として期待されるのが燃料電池だ。最近では愛知万博会場や新首相公邸への導入で話題になっている。
燃料となる水素が自然界に無尽蔵に存在する、温暖化や大気汚染をもたらすCO2やNOxやSOxを発電過程で排出しないなどのメリットがある。「電池」と呼ばれるだけあって、燃料となる水素は貯蔵や運搬が容易で、自動車や小型の携帯機器に用いることも可能だ。
とはいえ、まだまだ課題も多い。一つが水素をどうやって抽出するかである。自然界に単体で存在するわけではない水素を取り出す方法には、大きく分けて水(海水)を電気分解するものと、石油や天然ガス、メタンガスを高温で化学反応させる(改質)ものがある。
前者はそれ自体に莫大な電気エネルギーが必要となり、製造コストも非常に高くつく。化石燃料を燃やして作った電気を使っていては温暖化防止の効果が薄くなり、資源の問題もクリアーできない。順調に燃料電池が普及していった場合、2030年に必要となる水素は、年間170億立方メートルとも500億立方メートルともいわれる。これだけの量の水素を作るには、日本中の住宅屋根の半分に太陽光パネルを搭載し、風力やバイオマスなども最大限に設置して発電したとしても間に合わない。後者の方法は、安いコストで現行エネルギー並にすることも可能だといわれるが、改質の段階で発生するCO2や硫酸化合物をどうやって取り除くか(脱硫)といった課題がのこる。
こうした問題を一気に解決してしまおうと、政府関係機関が進めているのが原子炉での水素の抽出だ。高温ガス炉と呼ばれる次世代原子炉が生み出す高熱で水を化学反応させて水素を取り出す方式である。現在日本原子力研究所が茨城県大洗町で研究を行っている。
しかし、多量の放射性廃棄物や安全性の問題など、「核燃料サイクル」が実現不可能といわれるいま、ウラン燃料の資源としての寿命は石油と大差がない。政府や経産省が「クリーンな水素社会を」と宣伝するのは、原子力の推進がねらいなのだ。
燃料電池のもうひとつの大きな難題は、電極の触媒に白金を用いている点である。白金(プラチナ)は、指輪やネックレスなどの宝飾品で「金よりも希少」として高価なことで有名だ。地球上には、1300立方メートル(50メートルプール1杯分)しか存在しない。
主に4つのタイプがある燃料電池の中で、高温反応型で大・中型の燃料電池(MCFC:溶融炭酸塩型など)は白金触媒を必要としないが、自動車や家庭用に導入できる固体高分子型(PEFC)の小型燃料電池には白金は必要不可欠だ。技術的には代替品はなく、かりに白金の埋蔵量のすべてを自動車用の燃料電池に用いたとしても、普及できるのはせいぜい2億台。2000年時点での世界の自動車台数8億台にも及ばない。今世紀中に中国だけで3億台以上の自動車があらたに増えると見込まれる中、「近い将来自動車の主流は燃料電池」というのはとても無理だろう。
環境先進国スウェーデンを代表する自動車メーカー・ボルボは、こうした問題からすでに燃料電池車の開発からそれ以外の次世代エンジンの開発にウェイトを移している。バイオマスで下水処理場から取り出されたガスを用いるメタンガス自動車をガソリン車と比べて遜色のない性能で実現し、市場での販売に成功している。
もちろん燃料電池に可能性がないわけではない。水素が単独で化石燃料にとってかわるのは難しいが、様々な新エネルギー技術の一つとして有効なことにはかわりはない。
自動車用の小型PEFCとは違い、他の中・大型の燃料電池はビルや地域のコージェネレーションシステムとして実用化段階に入ってきている。バイオマス資源からの水素の抽出なら温暖化問題も回避でき、資源としても持続可能だ。
分散型発電 送電ロスを解決し廃熱を利用
原子力にしろ火力にしろ、大規模な発電所では燃料を燃やして発生する高温の熱を利用して発電する。生み出された熱エネルギーのうち、発電に用いることができるのはせいぜい40%が限界で、あとは原発の温排水のように廃熱として捨てられてしまう。大規模発電では消費地(都市)と生産地(発電所)が遠く離れているため、発電で利用しきれなかった熱の使い道がないのだ。
さらに大規模で長距離の送電網を必要とするため、送電コストが高くつくというデメリットや送電ロスの問題がある。高圧による長距離送電により、実に送電電力の1割近くが電磁波や熱となって排出されている。
こうした問題を解決する方策として近年脚光を浴びているのが、分散型のコージェネレーション(熱電併給)だ。すでに工場や大型ビル、商業施設などでは導入が進んでいる。発電で利用しきれなかった熱をパイプを通じて温水や蒸気といったかたちで供給する(廃熱の有効利用)ことにより、総合的なエネルギー効率で80%以上を実現することが可能といわれている。
家庭向けでは、東京ガスの燃料電池式コージェネレーションシステムが昨年末からモニター販売を開始した。ただし、一軒の世帯では電力需要と熱需要のバランスをとるのが時間的にも総量的にも難しいため、燃料電池ユニットの数倍の大きさをした巨大貯湯タンクの併設が必要になる。電力需要と熱需要のバランスをとるためには、オフィス、工場などの事業所、商店、家庭など、エネルギー消費の特性が違うもの同士が集まったコミュニティで導入するのがもっとも効率的だ。
現在、自然エネルギーの導入と併せて京都府弥生町、青森県八戸市など自治体レベルでの取り組みも開始されている。横浜市金沢区では計画が進行中である。
(エコアクション21)
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見学 小水力発電所 群馬県前橋市 利根川・広瀬川
ダムではなく、小電力を用水路で発電する
谷沢健二
自然エネルギー施設見学の第3弾として、群馬県前橋市にある小水力発電所を訪れた。坂東太郎の異名を持つ利根川には豊富な水が流れており、前橋市は日本最大の低落差発電所地帯になっている。
利根川から取水し、前橋、伊勢崎周辺の水田灌漑のための農業用水としてつくられたのが広瀬川だ。広瀬川の起点から前橋市街までの10kmの間には50mの標高差がある。その標高差を利用して建設された、6ヶ所の流れ込み式の低落差発電所では、およそ10万人以上の家庭が消費する電気を供給することができる。前橋市の家庭用電力の3分の1以上にあたる量だ。
今回見学したのは、その内の田口発電所、関根発電所、小出発電所と、利根川をはさんで対岸にある天狗岩発電所の4ヵ所だ。
はじめに訪れたのが田口発電所(管理は群馬県)。最大出力6000kW、有効落差12・4mの発電所である。ダム式の発電所と違い、こぢんまりとしている。周囲は住宅街で、何も知らなければ、通りすごしてしまうような施設だ。発電に使用された後、導水路に戻された水量はかなり豊富だった。
関根発電所、小出発電所と順番に回った後、最後に訪れたのが天狗岩発電所だ。最大出力540kWと、見学したなかでは最も小さい発電所である。1604年につくられた天狗岩用水と落差7・36m、長さ100mの区間を利用して発電している。
用水の周囲は田んぼと畑だ。すぐ脇には吉岡風力発電所がある。農業用水路を利用しているため、水量豊富な灌漑期(6月から9月)には発電機4台、非灌漑期には1台といった具合に、運転と水量の変化に対応した発電ができるようになっている。農業用水を利用した小規模発電所を最も実感できる施設だ。
日本には落差のある渓流が数多く存在する。農業用水や水道用水も豊富なため小水力発電所の立地には事欠かないが、ネックとなるのが水利権問題だ。建設計画をたてても水利権が問題で頓挫するケースがかなりあるという。
これまで日本では、石油代替エネルギーではあっても太陽光や風力発電などと違って実用化段階に達しているとの理由から、小型水力発電は新エネルギーの対象とされてこなかった。しかし2003年4月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)では、水路式で1000kW以下の小水力発電所が新エネルギーとして認定されるようになり、2004年4月の段階で全国339ヶ所、約16万kWが認定されている。
大型ダムと違い、既存の用水路を使えば環境への負荷も小さい。CO2の排出もほとんどなく、風力や太陽光のように気象条件に左右されることのない小水力発電は今後もっと推進されてもいいだろう。
(エコアクション21)
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オーストラリア――太陽光と風力が合体
高さ1000mのソーラータワー計画
太陽光による発電は、太陽電池パネルを用いたものだけではない。 オーストラリアのエンバイロミッション社は、高さ1000mのソーラータワー発電所の建設に向け、同国内に100平方Kmの用地を取得。政府の支援も受けて、2006年の着工を目指している。
そのしくみはこうだ。100平方キロにわたってひろがるタワーの基盤部分で太陽熱により暖められた空気が、対流によって中心部タワー内の煙突を上がっていく。上昇速度は毎秒15・6m、これによってタワーの内部にある32基の風力タービンが回って発電される。出力はなんと20万kW。小型の火力発電所や原発並だ。
普通の風力発電が気まぐれな自然の風によって発電が左右されてしまうのに対して、人工的に作り出した上昇気流を用いるため安定して稼動できる上、高出力だ。また蓄熱機能により、日射がない夜間でも発電を続けられるので効率も良い。
国土の狭い日本では実現は難しいだろうが、同社では実用化できれば自然エネルギーの導入に積極的な中国への売り込みをはかりたい考えだ。
もちろん1000mのタワー建設は、技術的にも資金的にもたやすいことではない。他にも課題は多い。広大な敷地を密閉してしまうことにより、周辺生態系に影響を与えることも懸念されている。上空1000mでタワーから吐き出される温風が雲を生み出し、せっかくの日光が遮られてしまうことも考えられる。
実際ドイツでは、上空大気に与える影響や、CO2の吸収源である巨大な緑地(牧草地)の破壊を心配して、ソーラータワーの開発をストップしている。これらの問題をうまくクリアできれば、「小型で不安定」という、風力、太陽光発電の弱点を一気に補うことができるシステムなのだ。
今世界中のいたるところで、新しい自然エネルギーシステムが競って考案・開発されている。「いつまでも石油や原子力に依存できない」という危機感が推進の大きな原動力になっている。
電力会社が自然エネルギーを導入する場合 RPS(買い取り枠で誘導)それともFIT(価格で誘導)? FITに軍配 EUではすでに1997年段階で電力の12%が自然エネルギー化されており、2010年までの導入目標も22%に設定されている。対して日本での導入目標は、2010年度で僅か1.35%にすぎない。
その背景にあるのが「新エネルギーRPS法」(正式名称・電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)だ。1990年代後半から欧米を中心に考え方が広まってきた自然エネルギー促進制度の一つで、「Renewable Portfolio Standard」(再生可能エネルギー割当基準)の略称である。電力会社に自然エネルギーの導入枠を義務づけるとともに、過不足をクレジット化して市場で取引することを組み合わせ、目標実現を促していくというものだ。日本の他に英国やアメリカなどで導入されている。
一方、ドイツ、スペイン、デンマークなどではFIT(「Feed in Tariff」)が取り入れられている。こちらは電力会社に対して自然エネルギーの買い取りを義務化し、その買い取り価格を一定固定化する制度だ。自然エネルギーからの発電を行う事業者にとっては、価格も安定し電力会社の事情で契約を切り捨てられることもないため、投資リスクが非常に小さくなる。
RPSとFITのどちらが有効か、EUでは論争となってきた。目標の実現を自然エネルギーの買い取り枠で誘導(RPS)するのか、価格で誘導(FIT)するのか。官僚主導の規制によるトップダウンでいくのか、インセンティブによる民間からのボトムアップでいくのか。
現在のところ成功しているのはFIT陣営で、RPS陣営は総崩れに近い。オランダ・オーストリアはすでにRPSからFITに政策を切り替えた。中国政府も今年3月、2010年までに6000万kWの自然エネルギー発電を導入することを目標に、ドイツ型の固定価格買取型自然エネルギー促進法を成立させた。
日本のRPSは官僚により目標値が低く抑えられている上に、自然エネルギーからの電力購入の過不足もグリーン証書の発行で補うものになっている。その結果、自然エネルギーの「促進」ではなく「規制」する制度になってしまっているのが現状だ。
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(2005年5月5日発行 『SENKI』 1177号6面から)
http://www.bund.org/opinion/20050505-2.htm