現在地 HOME > 国家破産40 > 189.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
日経金融新聞
\5,036/1カ月 (内消費税\239-)
新聞購読の申し込み
https://www.nikkei4946.com/np_j/index.cgi?c=0N4V&bt=0
日経金融新聞ホームページ
http://www.nikkei.co.jp/ks/
3年で売上高1兆円目標
東南アジア最大の食品メーカーであるフィリピンのサンミゲルが海外食品メーカーの買収を進めている。国内ビール市場で九割を超える圧倒的なシェアを背景に、事業基盤は強固。一層の事業拡大に向けて、海外に足場を築くのが狙いだ。目指すは売上高一兆円と、三年で三倍にも伸ばす計画を立てている。
昨年十二月初旬。国中がクリスマスの準備を始めたころ、サンミゲルの経営陣は新たな買収案件の検討を進めていた。
「オーストラリア食品大手のナショナル・フーズがサンミゲルによる買収を希望している」。欧州金融機関のABNアムロがナショナル・フーズ経営陣の意向を伝えてきたのだ。
ナショナル・フーズは昨年十月、ニュージーランドのフォンテラ・グループから買収提案を受けた。だが、フォンテラは容赦ない人員削減など欧米流の経営で知られる。これを嫌ったナショナル・フーズの経営陣が「雇用維持を重視する東南アジア企業、特にサンミゲルに経営を譲りたいと希望している」という。
サンミゲルにとっては千載一遇の好機。乳製品などで多くの有名ブランドを持つナショナル・フーズの年間売上高は約千億円。買収が成功すれば連結売上高を一気に五千億円規模に拡大できる。
すでにオーストラリアで始めている飲料品事業と物流、販売で相乗効果を見込めることもあり、役員会では賛成論が大勢を占めた。「一株六豪ドルでいこう」。総額千五百億円超の大型買収計画を決定したのは十二月中旬。提案から二週間弱のスピード決断だった。
海外事業の買収はこれが初めてではない。昨年はオーストラリア飲料品大手のベリー社の経営権を約百億円で取得。タイでもビール製造工場を約百億円で買い取った。
サンミゲルが狙うのはリスクの分散だ。同社は国内ビール市場をほぼ独占し、年間の営業キャッシュフローは百億―百二十億ペソ(約二百億―二百四十億円)に達する。
だが、国内での強固な事業基盤に安住はできない。売上高の約九割を国内市場に依存する現在の収益構造を放置すれば「国内消費が落ち込んだ時に逆に足をすくわれる可能性がある」(証券アナリスト)からだ。
海外展開を急ぐサンミゲル。株式市場はこうした戦略を総じて好意的に受け止めている。昨年九月は七十ペソ程度だった株価も一月には八十ペソ台に乗せた。
ただ、さらに株価を伸ばすには主に二つのハードルがある。
一つは海外事業の成果を示すことだ。ある証券アナリストは「海外事業を管理する人材が不足している」と指摘する。もう一つは国内事業の一層の強化。売上高の約四分の一を占めるジュース・清涼飲料事業は価格競争の影響で収益力が落ちている。原油価格の高騰による製造コストの増加をどう補うかも課題だ。
サンミゲルは今年、もう一つの転機を迎えた。第二位の大株主である日本のキリンビールが出資比率を一五・五五%から二〇%超に引き上げた。キリンはサンミゲルに送る役員を現在の二人から三人に増やす。発言力を高めたキリンとサンミゲルが国内外の事業でどのような相乗効果を生み出すか――。この点にも株式市場は注目している。
(マニラ=石沢将門)
【図・写真】海外展開を加速するサンミゲルのビール製造ライン(中国広東省)