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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/epidemic/05111101.htm
05.11.11
先月来、新型インフルエンザの世界的流行病(パンデミック)への恐怖が急速に高まっている。恐らくは中央アジアからの渡り鳥を通して、H5N1ウィルスがヨーロッパに到来したためだ。世界の先進国は抗ウイルス薬やワクチンの備蓄、開発に走り、途上国は高価な抗ウィルス薬の確保のために必死の努力を始めた。米国政府は、主としてワクチンと抗ウィルス薬のために71億ドルを支出するパンデミック計画を発表した。わが国も抗ウィルス薬の確保に走り、厚労省は病床確保などの行動計画もまとめたという(日本経済新聞、11月11日)。
多くの国は既にパンデミックに対抗する国家計画を策定してきた。しかし、パンデミックの脅威を必ずしも深刻に受け止めていたわけではない。いざ勃発となれば大混乱を収拾できるかどうか、甚だ心もとない計画にすぎなかった。最近の動きは歓迎すべきものではあろう。しかし、筆者は、これが人間のパンデミックの脅威を強調する余り、肝心の動物の感染拡大の防止から目をそらせることになるのではないかという新たな懸念を抱く。
ジュネーブの会合に向け、国連食糧農業機関(FAO)は、人間のリスクを減らすためには動物の間のウィルス拡散を止め、減らすことが重要だ、現在の投資計画は「抗ウィルス薬の備蓄に過大な重点を置いおり、動物の鳥インフルエンザに対する闘いは深刻な資金不足に陥っている」と警告した(1)。
アジア諸国やアフリカ諸国での家禽の感染拡大をいかに防ぐのか、目下の最大の問題はこのことではなかろうか。H5N1ウィルスがヨーロッパに拡散したことは、必ずしも人間のパンデミックの可能性が高まったことを意味しない。それは人間の感染の頻度に依存する。人間が野鳥からH5N1ウィルスに感染した例は知られていないし、ヨーロッパの家禽でのH5N1鳥インフルエンザ勃発は速やかにコントロールされるだろう。アジアやアフリカにおけるような家禽と人間の”緊密”な接触もないから、人間の感染のリスクも小さい。パンデミックが勃発するとすれば、その発祥地は、恐らくは、家禽の鳥インフルエンザ勃発が一向に制御できないアジア諸国か、アフリカであろう。
アフリカへのH5N1ウィルスの拡散は未だ確認されていないが、ヨーロッパにウィルスをもたらした渡り鳥が今アフリカに向かっている。ここの家禽の多くは野外で放し飼いされており、野鳥との接触の機会は多い。また、家禽と人間との”緊密”な接触もある。もし鳥インフルエンザ勃発となれば、栄養不良やエイズで免疫力を損なわれた多くの人々がウィルスに曝されることになる。ケニア、南アフリカなどは野鳥の監視を始めているが、いざ鳥インフルエンザ勃発となっても、その発見能力は弱体で、確認のための試験施設もたちまちパンクしていまうだろう。
アジア諸国ではH5N1鳥インフルエンザ勃発が止まらない。FAOによれば、10月に入り、中国では3省・1自治区で勃発、22万2000の鶏が死ぬかと殺処分された。タイでは5県で勃発、2万9175羽が死に、6万8223羽がと殺された。ベトナムでは2県で勃発、計510羽のアヒルの死が発見され、インドネシアでも2地区で数千の鶏が死んだ。カンボジアではアヒルにH5N1ウィルス抗体が発見されている。人間の感染も増え続けている。これらの国でいかにして鳥インフルエンザを封じ込めるのか、それが最大の問題だ。それは、資金の問題だけではない。WHOが推奨し、各国が導入しようとする封じ込めのための模範的手段も、至るところで農民の抵抗に出会っている。
11月に入り、新たに遼寧省で2件の勃発をみた中国では、農業部が10日、公式ウエブサイトを通し、8億の農村住民に鳥インフルエンザの予防、制御を訴えた。それは、中国の予防、制御は“非常に重大な状況”に直面していると警告、農民は病気のさらなる拡大を防ぐ能力を改善し、人間の感染を防ぐ行動を取るように勧告する。養鶏農民に対し、鶏舎を清浄に保ち、既に感染してしまった鶏の症候を見分ける方法を伝授するとともに、鶏へのワクチン接種、偽造ワクチンを購入しないこと、疑われるケースは地方獣医事務所や政府当局に速やかに報告することを要請している(2)。
勃発のたびに大量の家禽を処分、ワクチンを接種して完全に封じ込めに成功したと発表してきた中国政府も、ついに感染拡大防止はお当て上げ状態にあることを認めたわけだ。この訴えにもかかわらず、偽造ワクチンを使い、ときには補償金目当てにわざと感染させているのではないかと疑われる農村住民の飼育慣行がどこまで改善されるか分からない。
タイでは、昨年12月末を期限に、放し飼いの家禽をすべて閉鎖鶏舎に移動させることが義務付けられた。しかし、これは農民の激しい抵抗に出会い、未だに実行されていない。農民は、新たな飼育方法は、とりわけ放し飼いの家禽は野原で餌を取っているから、大変なコスト上昇につながると言う。政府は、放し飼いは保存すべきユニークな慣行と認めながら、現にウィルスが存在するのだから飼育方法の調整が必要と言う。10月9日、農業協同組合省は、農民の生計を維持すると同時にウィルスを封じ込めることができる方法を探る新たなパネルを立ち上げた(3)。
今月2日、農業協同組合省は、コントロール改善のために家禽飼育方法を改めるべく、農家の裏庭で放し飼いされている鶏(全土で6500万羽に上るという)を村の共同農場に集めるという計画を発表した。しかし、農民はこれにも激しく抵抗している。共同農場からの収入の分配をめぐる紛争が起きるというのが最大の理由だ。ある農民は、他の村人が自分の鶏の面倒を見るとは考えられないと言う(4)。
インドネシア政府は、農民への補償の財源がないと、感染地域の家禽のと殺処分をためらってきた。ジュネーブ会合では外国の資金援助を要請した。しかし、仮に資金が提供されたとしても、それを有効に使うことができないかもしれない。一獣医師は、資金もなければ人員も足りず、そのうえ農民の反抗もある、町や村の多くの低所得の人々が裏庭で鶏を飼っておりためにウィルスは間単に広がるから、状況は一層悪化していると言う。その上、貧しい人々から鶏を取り上げるのは大変な難事だともいう(5)。
これら貧しい人々だけではない。ここでは、2年前に初めてH5N1鳥インフルエンザが現れたとき、11の最大級家禽生産者が調査官の農場へのアクセスを阻止したという(ただし、生産者は否定)。政府は今、鳥インフルエンザ勃発が疑われる商業農場調査を妨げるために使われてきた法律の改正を考えているという(6)。
資金援助や紋切り型の鳥インフルエンザ撲滅策の推奨だけでは何の役にも立たない。これらの問題を克服するための方法の開発が急務だ。ただ、筆者には、どんな方法があるのか見当もつかない。あるいは国際機関や各国政府、専門家も、これをすっかり諦め、人間の保護に専念するのみと決めたのだろうか。人間さえ保護できれば大丈夫と狂牛病(BSE)根絶の目標を見失ってしまったのと同様に。
(1)Combating bird flu in animals needs more decisive action
http://www.fao.org/newsroom/en/news/2005/1000122/index.html
(2)Govt cautions farmers against bird flu,xinhua,11.10
http://news.xinhuanet.com/english/2005-11/10/content_3763416.htm
(3)Panel to seek better controls,Bangkok Post,11.10
http://www.bangkokpost.com/101105_News/10Nov2005_news03.php
(4)Communal farm option under study,Bangkok Post,11.8
http://www.bangkokpost.com/081105_News/08Nov2005_news06.php
(5)No funds, no vets, and no way for RI to be free of bird flu,The Jakarta Post,11.7
http://www.thejakartapost.com/detailheadlines.asp?fileid=20051107.@03&irec=3
(6)Indonesia to revise laws barring access to poultry farms,AgroIndonesia.com,10.25
http://www.agroindonesia.com/agnews/eng/2005/October/25%20October%2001.html
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