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『ニューズウィーク日本版11・16』のメイン記事「おかしいぞ!牛肉輸入再開」を紹介させていただく。
※ 話がちょっと飛んでしまうが、10日昼のテレビ朝日「ワイドスクランブル」では、川村キャスターが「このところブッシュ大統領は牛肉を食べていないという話も伝わっている」と語っていた。
『ニューズウィーク日本版11・16』P.16〜22
「おかしいぞ!牛肉輸入再開 − 「科学的な分析」をもとに北米産牛再輸入に舵を切った日本 ガイアツも拒んだ食の安全へのこだわりをなぜ捨てたのか」
『リスク評価は困難−食品安全委員会の報告は、なぜかそれとは逆の「ゴーサイン」として報じられた。責任者不在の決定は、せっかく築いた安全確保のシステムを骨抜きにし、食品全体への信頼まで失わせかねない。
アメリカの牛たちが肉になるまでの道のりは闇に覆われている。そこで何がおきているか、うかがい知るのは簡単ではない。
日本の内閣府食品安全委員会のプリオン専門調査会が、条件つきで北米産牛肉の輸入再開を容認する答申案をまとめたのは10月31日のこと。その2日後、タイソン社やスミスフィールド社などアメリカの大手食肉販売会社は、日本でのニュースを受けて肉牛処理の現場を確かめようとした本誌の取材申し込みを軒並み断ってきた。
最大手のタイソンは、9・11テロ後のセキュリティー強化を理由に、施設への立ち入りは認められないと言った。他の多くの販売会社は、メディアに対する不信や嫌悪感を隠そうとしなかった。
食肉販売会社の施設で何が起きていようと、そこで解体処理された牛肉は近々、久しぶりに太平洋を越えることになるかもしれない。プリオン専門調査会は、正誤20ヶ月以下の牛で、脳や脊髄などプリオンが集まりやすい特定危険部位(SRM)が取り除かれていれば、日本とアメリカ、カナダの牛のBSE(牛海綿状脳症)の危険性の差は小さいと結論づけた。
米政府はすぐさま歓迎の意向を表明。日本政府も、輸入再開に向けた準備を整えはじめた。
[中略]
「輸入再開へ」と伝えた日本の報道には、きわめて不可解な部分もある。プリオン専門調査会の答申はリスクがないと断じたわけではない。むしろ「リスク評価は困難」としている。それでも輸入を再開するとなれば、誰がどんな責任において決断するのか。
プリオン専門調査会が「評価は困難」としたのは、現段階でも牛肉管理体制についてデータが十分ではないアメリカが、日本の求める検査基準を受け入れて確実に実行するかどうか、今の時点では検証しようがないからだ。新聞の世論調査で7割近い回答者が「輸入が再開されても食べたくない」と答えていたのも無理はない。
食品安全委員会はどの行政機関からも独立して、純粋に科学的な見地から違憲を表明するために設立された。そこからお墨つきをもらえば、行政は輸入再開を主張しやすくなる。「科学が政治のダシに使われた」と、プリオン専門調査会のあるいいんは本誌に語った。
何より問題なのは、露骨な「ガイアツ」を拒んでまで貫いてきた食の安全に対するこだわりを、日本が捨てようとしていることだ。
[中略]
03年5月には、リスク管理や緊急事態への対応を定めた食品安全基本法が成立。トレーサビリティ導入の動きは、野菜や果物、鶏卵、貝類などにも広がっている。
− 米食肉解体業者の実態は問題だらけ? −
だが、食品安全委員会が「リスク評価は困難」とした北米産牛肉の禁輸措置解除は、官僚と民間業者がせっかく築いてきたそうした制度のあり方と矛盾する。月齢の確認やSRMの除去に不安を残したままの輸入再開は、トレーサビリティ制度全体への消費者の信頼を揺るがしかねない。
年間3000万頭の牛を処理するアメリカでは、神経の異常がみられるか歩行困難な状態の牛と、月齢が30ヶ月を超える牛しか検査の対象にしていない。全頭検査は「子どもにアルツハイマー病の検査をするようなもの」と、全米肉牛・牛肉協会(NCBA)のジェイ・トルイット副会長は言う。
[中略]
月齢の若い牛を検査しても感染を発見できないことは日本のプリオン専門調査会も「自主的に」認め、日本政府は昨年10月、検査対象を月齢21ヶ月以上に緩和した。当初の全頭検査は、国内産牛肉への不信を一刻も早く取り除きたい政府がつくり出した「安全幻想」の側面が強かった。
むしろアメリカの問題は、米政府が定めたガイドラインを業者がきちんと守っているかどうか、疑問が残ることだ。アメリカには、政府の検査が入る食肉解体施設が約1000ヶ所ある。大半は従業員500人以下の小規模施設だ。
米農務省の検査官は、解体される牛にBSEの症状がみられるかどうか、脳と分泌腺を調べる。その場で怪しいと判断され、専門の施設に送られて詳しい検査を受ける牛は1割ほどにすぎない。
今回、匿名を条件に唯一取材を受け入れてくれた中西部のある州の業者でも、立ち入りを許されたのは処理される直前の牛を押し込んでおく納屋と、解体済みの枝肉をつるしておく冷凍庫だけ。途中の過程はスチーム掃除機や洗浄作業の音が聞こえるだけで、現場には立ち入らせてくれなかった。
食肉会社が取材に神経をとがらせるには理由がある。約13万人いるアメリカの食肉解体業従事者には不法移民が多く、業界は彼らを搾取していると批判されてきた。平均賃金はわずか年2万1000ドルで、そのため定着率が低く、熟練作業員が育ちにくい。
食肉解体処理は、就労中の事故で負傷する労働者がアメリカで最も多い業界の一つでもある。人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは今年3月、業界の労働条件はあまりに劣悪で、基本的人権すら侵害していると批判した。
アメリカで2頭目、米国内産としては1頭目のBSE感染牛が発見された直後の今年8月。米農務省は、メディアの情報公開請求を受ける形で、SRMの除去を怠っていた例が1036件あったことを明らかにした。
米政府は04年1月、脳や脊髄などSRMの除去を職人処理業者に義務づけた。だが、12月には、食肉検査官の労働組合である米食肉検査官協議会のスタン・ペインター議長が、危険部位がいまだに食肉に紛れ込んでいると告発した(農務省は否定)。
危険部位に対する意識にも、日米の間にはギャップがある。たとえば、牛の背中を切り開く「背割り」の作業。日本では、髄液を飛び散らさないために、まず専用の機器を使って髄液を吸い出してから背中を切り開く。
6月にアメリカの解体処理施設などを視察した民主党の山田正彦衆議院議員によれば、アメリカではいきなり背中を切り開き、飛び散った髄液は温水などで洗い流すという。この手法で背割りを行った場合、危険部位が残留しないかどうかは科学的に検証されておらず、そのことはプリオン専門調査会でも報告されていた。
こうした現状をみれば、北米産と国内産のリスクを比べるよう諮問を受けたプリオン専門調査会が、北米産は「データの質、量ともに不明点が多い」として、リスク評価は困難と結論づけたのも当然だ。
そこになぜ、一定の条件を満たせばリスクは極めて少ないなどという「ただし書き」が加わったのか。
そもそも政府が条件に掲げた月齢20ヶ月以下の牛については、すでに日本でも事実上、検査が義務づけられていない(実質的には都道府県が自主的に行っており、補助金支給は3年間)。
これに加えてもう一つの条件である「日本と同程度のSRMの除去」を実施させれば、アメリカとカナダにも日本と同等の管理体制が構築され、リスクも同等になることは明らかだ。わざわざ科学者に諮問する必要などない。
報告書をまとめたプリオン専門調査会の吉川泰弘座長は、答申が輸入を容認したと受け止められたことについて、「あくまで最終決定は行政が行うこと」と強調しつつも、「諮問を受ける前に、諮問自体の妥当性を検討するべきだった」と反省の弁を述べている。
はっきりしているのは、輸入再開はアメリカが強く望んできたシナリオであるということだ。アメリカの食肉業界は年間売上高1750億ドル、労働者140万人の巨大産業。年間生産量の約1割が輸出向けで、03年の禁輸までその半分が日本で消費されていた。
米大統領選の投票日まで残り2ヶ月と迫った昨年9月10日。牧畜が盛んなオハイオ州での有権者との対話集会で、牛肉問題について質問されたジョージ・W・ブッシュ米大統領は「日本に対して輸入再開を求めていく」と明言。事実上の選挙公約と位置づけた。
アメリカにも、トレーサビリティを重視し、日本の求める基準を満たすべきだと早くから主張してきた生産者団体はある。だが、全頭検査の見直しなど日本の対応がぶれる一方で、アメリカの政府と議会と有力業界団体は一貫して、日本が譲歩する形での輸入再開を求め続けた。
今年8月には、二重基準との批判もあった、03年に感染牛が発見されたカナダからアメリカへの輸入禁止を解除。10月27日には米上院が、日本の禁輸措置に対して経済制裁を発動する案を提出した。
プリオン専門調査会の副座長を務める金子清俊委員(東京医科大学教授)は「直接的な政治圧力はなかった」と言いつつも、こう打ち明けた。「ブッシュ大統領や、(3月に来日した)コンドリーザ・ライス国務長官の発言、それを受けた日本の世論などを意識しなかったとは言い切れない」
[中略]
日本で「原産地表示」が義務づけられるのは生鮮食品のみ。加工肉や外食産業、給食などに使われる加工食品の表示義務はない。現行法では生鮮肉に塩を振りかけただけで加工肉の扱いになるし、ハンバーグなどミンチ状に加工した製品のなかには、数百頭もの牛の端肉が混じっていることもある。
管理体制がどこまで厳格でどこまでずさんか、明確になっていれば、リスクを承知で牛丼やハンバーガーを食べることもまた消費者の権利だ。しかし国内産牛肉と同等のトレーサビリティが確保されないまま北米産牛肉が輸入されれば、消費者は食品を選択する自由まで奪われかねない。
[中略]
BSEが人に感染した場合の潜伏期間は、これまでの発病例から10〜20年とされている。日本に本格的にBSEが上陸したのが1頭目の感染牛が見つかった01年ごろだとすれば、今はその潜伏期間にすぎないかもしれない。
十数年後、何が起きるかは誰にもわからない。ただ歴史を振り返れば、責任のあいまいな決定が災いを招くことは少なくない。
平田紀之(東京)、ジェイミー・カニンガム、トレーシー・カーペンター』
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