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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05081801.htm
05.8.18
英国政府実験農場で、狂牛病(BSE)に感染させた羊が生んだ子羊のBSE感染が確認された(S. J. Bellworthy et al.,Natural transmission of BSE between sheep within an experimental flock,Veterinary Record, 2005 157-7;http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/reprint/157/7/206)。これは、自然の条件の下で(羊にBSE感染物質を食べさせる、あるいは接種する実験によってではなく)、BSEが羊の間で伝達することを初めて実証したものだ。
政府の獣医試験機関研究者は、BSE感染物質5mgを食べさせた2頭の雌羊が生んだ子羊が、出生から546日後、扁桃に感染の兆候を示した後に死んだことを明らかにした。母羊たちは、出産時には病気の症候を示さなかったが、その後、それぞれ73日、198日後に発症した。子羊は母親の子宮のなかで感染したのか、出生の直前または直後に感染したのかはわからない。出産時に出る分泌液を通してか、別のルートでの感染も考えられる。ただ、いままでのところ、外見上感染していない他の羊(つまり母親)から病気が移った可能性が非常に高いという。
これまで疑いはあった(牛のBSE発生率は、感染牛の子において僅かながら高い)ものの確証はなかった母子感染、あるいは水平感染の可能性が示されたわけだ。
ということは、羊群のなかにBSE感染羊が存在した(する)とすれば、羊のBSEが広く拡散している(拡散する)可能性があるということだ。羊や山羊では、BSE感染性を持つ部位は牛より広範囲に広がっており、大容量での実験的感染では血液やリンパ組織にも感染性が認められている。従って、感染羊1頭のがもつ危険性は、牛1頭よりもはるかに大きい。もし羊のBSEが拡散しているとすれば、人間のBSE感染リスクは大きく膨らむだろう。
BSEが羊を含めた他の多種の動物に伝達することは、早くから実験で確かめられてきた。そして、英国におけるBSEの全盛期、羊にも牛と同じ飼料が与えられた可能性が高い。とすれば、羊のBSEは発見されていないが、スクレイピーと呼ばれ、人間には無害とされている羊の病気のなかにBSEが隠れている可能性がある。このような恐れから、英国はスクレイピーの羊の検査標本の再検査を進めてきた。EUもこの問題を重視、羊と山羊の伝達性海綿状脳症(TSE)のシステマチックな検査体制を敷いた(英国:羊のBSEへの対処プランを公表http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/01092801.htm,01.9.28;EU:羊のBSE対策と廃棄物処理が新たな重要問題http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/01102402.htm,01.10.24;EU:科学運営委員会(SSC)が羊と山羊のBSEリスクに関する意見を発表http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/01102601.htm,01.10.26)。
スクレイピーとBSEを見分けるための検査は、1998年から2004年までにEU全体で3506頭の羊と57頭の山羊について行われたが、BSEの可能性が排除されないケースが羊で3頭(フランス:1、英国:2)、山羊で1頭(フランス)出た(Report on the monitoring and testing of ruminants for the presence of Transmissible Spongiform Encephalopathy (TSE) in the EU in 2004)。フランスの山羊のケースは、今年BSEと確定した(フランスの山羊、BSEと正式確認http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05013101.htm,05.1.31)。山羊群にBSEの存在が確認され、羊群に存在する可能性も消えていない。しかし、今のところ、大規模感染の証拠はない。過去に牛を感染させた餌を食べた羊が感染したとしても、そのような餌が排除されて久しい現在、既に大方は淘汰されてしまっているだろう。とはいえ、羊の間の母子感染や水平感染があるとすれば話は違ってくる。一層のサーベイランスと研究が必要になろう。
羊にはTSEに罹りやすさが異なる15の遺伝子型のものがあり、今回BSE感染が確認された羊の遺伝子型は最も罹りやすいものだったと言われる。最も罹りにくい羊は食用に供しても問題はないかもしれない。さらに、この子牛の脳に現れた病気の症候は牛のBSEに類似していたとされる。従って、スクレイピーに隠れて見分けがつかないBSEが存在する可能性も減ったと言えるかもしれない。安心材料もあるわけだ。ただ、現実に食用にと殺される羊の遺伝子型をその場で見分ける方法はない。脳の病気の症候もこれに限るとはいえないだろう。今回の発見が、羊や山羊からのBSEリスクに対する一層用心深いアプローチを要請することだけは間違いないだろう。
英国は、羊群中のBSEが確認されたときに備え、最悪の場合4000万頭の羊を殺処分する対処計画をまとめている。わが国においても、羊や山羊のサーベイランスとリスク軽減策を再検討することが望まれる。
同時に、この発見は、牛の感染源・感染経路についても再考の必要性を示唆する。母子感染や水平感染の確証はないが、羊であることが牛ではないとは言いきれない。ほとんどの牛のBSEの感染源は飼料とされてきたが、別の重要な感染源があるとすれば、それを前提とした発生予測やBSE拡散防止策だけでは不十分ということになる。謎の病気に、また一つの大きな謎が加わった。
関連ニュース
Sheep can pass BSE to their lambs,NewScintist.com,8.17;http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7861
BSE transmitted between sheep,The Guardian,8.17;http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,1550320,00.html
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