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http://www.bund.org/opinion/20061205-1.htm
ついに原発廃炉時代を迎えた日本
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クリアランスが適用される東海原発
加藤邦幸(シビックアクションみと)
核のゴミが再利用される
日本原電東海発電所は、日本で最初の商業用原発だ。東海原発は1998年に31年にわたる営業運転を停止し、2001年12月から日本で初めての廃炉措置に着手している。廃炉・解体工事は2017年まで続く。
東海原発を皮切りに、今後日本にある商業用原子炉は漸次廃炉となる。そのため政府は昨年、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」を改定してクリアランス制度を導入した。クリアランス制度の目的は、膨大に出る核のゴミを一般の産業廃棄物と同様に処分することで経費削減を図ることだ。
この制度が導入されたことで、東海原発の解体工事によって大量に発生する放射性廃棄物の行方は分からなくなる。 クリアランスを導入する以前は、放射線管理区域内(原発の建物内部で被曝を防止するために立ち入りを制限している区域)で発生した廃棄物は、すべて放射性廃棄物として扱われた。炉心から出る強烈な放射能の影響で、建材自身が放射化している危険性を考慮してである。
しかしクリアランスにより、原発の解体・撤去の過程で出てくる大量の放射性廃棄物でも、0・01ミリシーベルトを超えなければ「放射性廃棄物として扱う必要のない物」となってしまった。一般の産業廃棄物と同様に処分し、再利用してもいいことになったのだ。
原電の発表によれば、東海原発からは約19万2400トンの廃棄物が発生する。そのうちクリアランス対象物は約4万200トンで、全体の2割を占める。
原電東海事業所は、配管や核燃料取替機などの金属部分約2000トンの放射能測定を10月から開始したが、測定で0・01ミリシーベルトを超えなかったものはクリアランスの対象になる。
原電を含めた電力会社10社は、日本鉄鋼連盟とクリアランス金属の扱いについて合意を行ったが、クリアランス対象の核のゴミは、「電気事業施設、発電所内施設、原子力関連施設、及び理解活動を目的とするデモンストレーション用展示製品」として再利用される。
当面、再生金属は電力業界が使用するという。金属の溶解処理の際に出てきた不純物=廃棄物(鉱滓またはスラグ)の扱いについては決まっていないが、これらに放射能が含まれる可能性もある。「デモンストレーション用展示製品」は、各地の原発施設にあるPR館に置かれ、クリアランス金属の安全性をアピールするために利用される。
展示品は厳密に測定して安全性を確保するだろうが、クリアランス対象となる金属は最終的に約4900トン、コンクリートは3万5400トンにものぼる。再利用の結果、放射化した金属や建材が知らない内に日常生活に入り込んでくるのは避けられない。現に台湾では放射化した鉄骨が使われたマンション、学校、幼稚園などで、多くの市民が被曝し住民による裁判が行われている。
住民によるチェックが必要
核のゴミをどう扱っているのか、電話で東海事業所に問合せてみた。
広報担当者は、解体作業で出ている放射性廃棄物について「ウエスや不要なものを含めて、解体で出たものは一切外に出していない。放射性廃棄物は低レベルでも3段階に分けている。それとは別に、クリアランス対象となる鉄やセメントなどは低レベル貯蔵庫(ドラムヤード)に保管している。今後リサイクルするが、どこに使用したか追跡調査できるようにする。リサイクルする場合は一般の建物には使わず、原子力施設に使う予定だ」と答えた。原電側の話を聞く限り、取りあえず慎重に解体作業を進めているようだ。
では、実際に現場で放射性廃棄物を扱っている業者はどう考えているのだろうか。
茨城県産業廃棄物協会に登録し、放射性廃棄物の処理を行っているM産業に聞いてみた。
Q:東海1号炉の解体作業を行っているのか?
A:行っていない。事故前のJCOや大洗の原子力研究所の廃棄物を扱っているが、1号炉の解体作業は行っていない。大手ゼネコンが受注し、実際には下請けや孫請けがやっていると思う。
Q:廃棄物はどのように扱っているのか?
A:放射性廃棄物はコンクリートで固めて、六ヶ所に運んでいる。
Q:作業員の怪我や体調不良などはないのか?
A:原電は怪我についてすごく神経質だ。たとえ指でも怪我をしたら大騒ぎになる。だから当社は怪我をしても黙っている。放射性廃棄物を扱う作業は、10分などと時間を決めた範囲で行っているので、安全性について問題はない。
解体工事終盤の2011年からは、黒鉛ブロックが詰まった原子炉本体の解体が始まる。強烈な放射線によって作業員が被曝することは避けられないだろう。
現在、原電は下請け、孫請けが作業する解体現場に社員を立ち合わせ、廃炉措置のノウハウを作ろうとしているが、廃炉時代を逆手にとって新たなビジネスチャンスにしようとしているようだ。
安全性よりも経済性を優先して核のゴミをビジネスにするなど論外である。低レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていないなか、原発の廃炉時代を迎えるわけだが、核のゴミを住民が厳しくチェックしていくことが問われていると思う。
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厳しい財政事情から処分場に立候補する地方自治体
編集部
原子力発電所から出る核のごみのうち、高レベル放射性廃棄物の処分法を定めているのが「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(2000年6月制定)だ。
これにもとづき原子力発電環境整備機構(NUMO)は、2002年12月から高レベル放射性廃棄物最終処分場の公募を開始した。公募に応じた市町村の中から、@過去の地震、噴火、隆起などを調べる「文献調査」、A実際にボーリングなどを行って地層を調べる「概要調査」、B地下施設を設置して、岩石の強度や地下水の流れなどを調査する「精密調査」の3段階を経て、最終的に選定する予定だ。
当初は名乗りを上げる自治体はなかったが、ここにきて各地で応募の動きが出てきた。鹿児島県では宇治群島を擁する笠沙町(現・南さつま市)と奄美大島の宇検村、長崎県では五島列島の新上五島町、高知県では室戸阿南海岸国定公園の真中に位置する東洋町、滋賀県では余呉町などだ。四万十川の源流に位置する高知県津野町でも一時立候補の動きがあった。
NUMOは第2段階の「概要調査」地区選定を「平成10年代後半」としており、「文献調査」地区選定のために残された時間は残り1年程度しかない。
NUMOとは別個に経済産業省も、今年5月『新・国家エネルギー戦略』を発表し、「高レベル放射性廃棄物の最終処分地の候補地選定に向けた取組を早急に強化する」と打ち出した。「2030年代中頃の最終処分の開始を目指し、2006年度から、地域支援の充実、国の全国各地における重点広報の強化を行う」という処分地探しの強化策だ。
強化策の目玉は交付金の増額にある。現状でも「文献調査」で年間2億1千万円、「概要調査」で70億円(年間20億円)が交付されるが、来年度からは文献調査段階で年間10億円(総額20億円)に引き上げられる。
これに加えて「発電用施設周辺地域整備法施行令」が10月に改正された。1つの地域振興計画につき25億円(年間12・5億円)を都道府県に交付できる。処分場に市町村が応募を検討しても、県の反対で断念するケースが相次いだことから、都道府県向けの交付金も用意したのだ。
自治体の財源の内、地方交付税や国や県からの支出金によって賄われている部分を依存財源と呼ぶ。最終処分場に応募を検討している自治体は依存財源の割合が高いところだ。宇検村は約29億円の予算の内79%、東洋町も約21億円の内78%が依存財源である。
交付金に加え、NUMOは最終処分施設の建設・操業に伴い予想される経済効果は1・7兆円、雇用のべ13万人、固定資産税1600億円等と喧伝している。
財政難に苦しむ過疎の自治体にとって、豊富な交付金や処分場誘致による経済効果は大きな魅力だが、既に原発を誘致した多くの地方自治体は、箱物で交付金を使い果たしては次の原子力施設を誘致し、新たな交付金に依存する自転車操業に陥っている。青森県六ヶ所村には核施設が集中的に建設され莫大な交付金が下りているが、農業や漁業は衰退し、NUMOが描くようなバラ色の未来が訪れているわけではない。
高知県の橋本知事は「札びらでほっぺたを叩いて進めていく原子力政策はやめるべきだ」と国の政策を批判している。
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関西の水がめを核のゴミで汚してはならない
松葉井信一(おおさかエコムーブ)
琵琶湖のすぐそばの町
大阪から車で一般道を走ること3時間以上、滋賀県余呉町は最北部に位置し、東は岐阜県、北は福井県と接している。琵琶湖からは2キロ程の、山に囲まれた人口約4200人の町だ。
私たちが訪れたのは10月22日。2日前に町長が処分場問題で住民説明会を開いたという。
まず最初に余呉町役場に行ってみた。町長が誘致を言っているので看板などが乱立しているのか見に行ったのだ。しかし現状では町長が応募したいと表明しているだけで、役場に誘致推進の看板などはなかった。少し安心した。
古い役場の横には立派なケーブルテレビ局があり、余呉町自身が事業主体となり、各家庭に光ケーブルで番組を配信していた。財政難だというのに、こんな立派な設備を維持できるのかなと少し気になった。どうやら原発の補助金で建てたものらしい。町長の誘致表明の根拠を見た思いがした。
続いて余呉駅に移動した。この駅から徒歩10分ほどのところに余呉湖がある。余呉湖は周囲6・4キロメートル、周りの山々を湖面に映し出し「鏡湖」とも呼ばれ、羽衣伝説も有名だ。周りには国民宿舎やキャンプ場、あじさい公園といった観光スポットがある。余呉湖は琵琶湖よりも49メートルも高い位置にあり、湖水は余呉川を通って琵琶湖へと流れている。ここが汚染されたら危険だ。
湖畔には余呉観光館があり、「余呉湖はごろも市」が開かれていた。地元の人が手作りの野菜や米、漬物、わらじなどを売っていた。
ここで最終処分場の話を聞いてみた。「まだ町長が応募すると言っているだけで何も決まっていないよ」「敦賀原発ができるときには、色々と不安になって勉強会をしたり、現地へ見学会にも行ったけど、結局交付金をもらっているからね」
売り場のおばさん達の言葉だ。
余呉湖のほとりには、電源立地交付金の看板が立っていた。地元住民は交付金に依存している町の財政状態をよく知っているだけに、処分場立候補の話に強い危機感を持っていると思えた。あるおばあさんは、「地元の人は明確に反対とは言い難い。回りから反対意見を言ってほしい」と言っていた。
「はごろも市」を後にして、余呉湖と琵琶湖の間にある賎ヶ岳(しずがたけ)の山頂に登った。見渡すと、余呉湖と琵琶湖はわずか1・5キロぐらいしか離れていない。あらためてこの場所に最終処分場を誘致する問題の深刻さを感じた。
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核のゴミを貧しい自治体に押し付けるな
10月27日大阪市内で、経済産業省などが主催する「放射性廃棄物地層処分シンポジウムin近畿」が開かれた。
このシンポジウムで、大阪府能勢町の中和博町長が余呉町の畑野町長に「うちも応募を考えているのでがんばってください」とエールを贈ったと聞いて驚いた。
おおさかエコムーブは、能勢町であいがも農法に取り組んでいる。棚田が有名な長谷などがある能勢は自然豊かな町だが、ここでも核のゴミの受け入れが検討されているのだ。
畑野町長は最終処分場に立候補して文献調査費を獲得し、当面の財政難を解決しようと考えているのだろう。文献調査費だけもらい、途中で立候補を降りるという噂もある。しかし、交付金に依存している原発立地地域は、どこも依存体質から抜け出せなくなっている。町長の受け入れ表明で騒がれた滋賀県の余呉町も一度多額の交付金を受け入れてしまえば、もう後戻りはできなくなるだろう。
余呉町に行く途中の道の駅では、琵琶湖で獲れたワカサギのテンプラを売っているが、周辺の農林水産業や観光にも影響が出るのだ。琵琶湖を水源とする地域は、子々孫々まで放射能汚染に怯えなくてはならなくなる。
人口減少が始まり、ますます過疎化する地方をどう活性化していくのかは大問題だが、財政難に陥っている地方自治体に核のゴミを押しつけるのは間違っている。
小泉改革で都市と農村の格差はますます広がり、地方自治体は交付金による箱物行政に頼らざるを得ない状況が続いている。核のゴミを含め、日本が抱える根本的な問題を問い直す時期にきていると思う。
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(2006年12月5日発行 『SENKI』 1231号5面から)
http://www.bund.org/opinion/20061205-1.htm
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