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原発震災の危険は強まる一方
原発再開の世界に未来はない
世界中で見直される脱原発政策
本年4月26日でチェルノブイリ原発事故から20年目となった。日本では今年3月、能登半島にある志賀原発2号機が運転を開始し、国内の原発は55基になった。政府はさらに原発を増やし今後20基の原発を建設する予定で、減らす計画はない。
ヨーロッパでも原発への回帰を模索しつつある。アメリカでは30年間停止していた使用済み核燃料の再処理を再開すると発表した。
これらの動きは現在の原油高や今後のエネルギー需要の高まりが要因といわれる。アメリカには現在34州に103の原発があるが、1979年のスリーマイル島事故以来新規の原発建設はない。しかし昨年「エネルギー政策法」が成立した。安全規制手続きの遅れで建設費が増大した場合政府が補償、法人税の優遇措置をとるなどして、建設を支援する制度をつくりだし路線転換したのだ。
2月のブッシュ大統領の一般教書演説では、2025年までにアメリカの電力供給量の半分を原発に変える方針が打ち出された。5年以内の原発建設再開を表明している。それを受けて電力大手会社が、全米10州で14の原発を計画している。
また米エネルギー省は原発の使用済み燃料の再処理を再開し、一部先進国と核燃料の供給・回収事業を行う「国際原子力エネルギーパートナーシップ」(GNEP)を発表した。これによって高速増殖炉の開発も再開される予定だ。
この計画の目的は海外からの化石燃料輸入依存からの脱却や、環境に優しい発展の実現とされる。とりわけ目的の一つとして強調しているのが「核廃棄物を安全に処分し、核技術と核物質をテロ組織やテロ国家から取り上げなければならない」というものである。外国で再処理されたウランやプルトニウムの核兵器への転用防止だ。
ドイツでも原発見直しの動きがある。ドイツでは10年以上にわたる論議のすえ、原子力エネルギーを廃止する法律を2002年に施行し、2021年までにすべての原発を停止することになった。
しかしキリスト教民主・社会同盟のグロス経済相は、「他国に依存しない原発のよさを見直すべきだ」と提案するなど原発の見直しの動きがでてきている。キリスト教民主同盟の「影の内閣」教育・研究担当のバーデン・ビュルテンベルク州教育相も「原発なしでどうエネルギーをまかなうか、現政権は答えをだしていない」と批判している。
キリスト教民主同盟は「脱原発」をやめ、運転期間を数十年延長することを公約にしている。連立相手の社会民主党からは、このような動きに対して批判はでているが、連立合意では原発問題は先送りしている。
ドイツでこのように原発再開の動きがでてきた背景には、今年1月、世界最大の天然ガス供給国であるロシアが、政治的圧力の手段としてウクライナへのガス供給を一時ストップし、その余波でドイツへの供給量が低下した問題がある。
イギリスでは、現在23基の原発が稼働しており、95年以来新規の建設はされていない。原発の老朽化による廃炉が進んでいる。しかしブレア首相は、今年夏をめどに発表する新エネルギー政策に「原発新設の是非が含まれる」と指摘し、反原発政策の見直しかと言われている。
1月にはジョンソン貿易相が「エネルギーの安定供給、温暖化対策にむけ、すべての政策オプションを否定しない」と述べ、ブレア首相の科学顧問は「原発を許可すべきだ」と発言している。政府としては原発建設再開の意向はかなり明確になっている。北海油田の生産減少や天然ガスの輸入抑制などが背景としてあげられる。
北欧のフィンランドでは現在4基の原発が稼働しており、5基目の原発が建設中である。数年前までは5基目の原発建設に対して議会の承認が得られず、計画は宙に浮いていた。しかし2002年5月に議会が承認。昨年の世論調査では原発新設に賛成は46%で反対の25%を上回った。国内で大きな原発事故は起こっておらず、温暖化対策として原発が容認されたこともあるようだ。
東海地震は確実に近づいている
アメリカやヨーロッパでは、80年代以降新規の原発建設はほとんどなかった。オイルショック後に登場したカーター大統領が1977年に発表した「エネルギー教書」では石炭をエネルギーの柱とし、再処理の無期限停止を宣言した。高速増殖炉も建設費の高騰と危険性が指摘されるなかで、85年に計画は白紙に戻された。
いちばんの要因は1979年3月に起きたスリーマイル島原発の大事故だった。原子炉から冷却水が失われて炉心が溶解するという、「原子炉の空焚き」状態になった。事故から2日後には8キロ以内の妊婦と幼児の避難勧告がだされ、10万人の周辺住民が避難した。
事故後、原子力規制委員会が安全規制を大幅に強化した。原発はコストとリスクの高い発電となったのだ。事故の際には巨額の補償が必要で、建設時にかかる環境や近隣への対策費も大きくなった。反原発の住民運動が各地で盛り上がり、住民投票で閉鎖に追い込まれた原発もあった。
今回ブッシュ大統領が発表したGNEP計画には、議会で早くも反対の動きがでている。
民主党はカーター政権が再処理の全面停止を決めるなど核燃料サイクルには元来否定的で、今回の計画は数千億ドルかかる巨大プロジェクトであり財政赤字を拡大させるというのが反対理由だ。ブッシュ大統領により再処理再開計画が出された背景としては、原発の使用済み燃料の地下処分計画が、ユタ州の強い反対で前に進まないという事情もある。依然として核施設に対する住民の反対運動はあるのだ。
イギリスで新規の原発建設の理由としてあげられるのは温暖化対策だ。しかしイギリス政府のエネルギー関係の諮問委員会は、原子力発電所の新設に反対する報告書をまとめている。
ジョナン・ポリット委員長は「原発新設は使用済み核燃料の処理問題など、深刻な不利益のほうが多い」と強調した。報告書によればイギリスの現在の電力需要の2割を賄っている原発の供給能力を倍増させても、「2035年までにCO2はほとんど減少しない」とされている。
ドイツでも2021年までに予定されている原発停止をやめ、運転延長を主張する動きがあるが、ガブリエル環境相は「エネルギー問題は、原発復活により解決できる問題ではない。稼働期間延長は核廃棄物最終処理の安全性の問題の解決にもつながらない」と述べている。
そもそも原発の燃料であるウランの埋蔵量は、あと50年分しかないというデータを、フランスにある世界エネルギー委員会は発表している。
55基の原発が稼働している世界有数の原発大国である日本。3月に運転を開始した志賀原発2号機は国内で2番目に大きな原発だが、北陸電力管内では電力需要は伸び悩んでいる。出力135万キロワットのうち90万キロワットは、今後5年間、関西、中部電力に売電する。右肩上がりの電力需要があり、電気が足りないから新規の原発をつくったわけでは全くないのだ。
しかも16都道府県の132人が志賀原発2号機の運転差し止めをもとめた民事訴訟の判決では、3月24日「電力会社の想定を超えた地震動によって原発事故が起こり、住民が被曝する具体的可能性がある」として、運転差し止めの判決がだされている。
地震による事故の危険性は、志賀2号機だけの問題ではなく、地震大国日本にある総ての原発にあてはまる。 各国で一斉に原発が見直されつつあるが、原発再開がエネルギー問題や温暖化問題を解決するわけではない。大量生産・大量消費社会を変えていくことが核心だ。とりわけ地震大国である日本の原発はスリーマイルやチェルノブイリ原発事故の再発の危険をはらんでいる。東海地震がいつ起きてもおかしくないといわれている現在、原発震災の危険は強まる一方だ。
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http://www.bund.org/editorial/20060515-1.htm
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