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近代化イコール善?! 中国原発事情  【小淵 俊】
http://www.asyura2.com/0505/genpatu3/msg/393.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 04 日 05:08:38: ogcGl0q1DMbpk
 

近代化イコール善?!

中国原発事情

小淵 俊

http://www.bund.org/opinion/20060505-1.htm

 2月6日、東芝がアメリカWH社を買収した。WH社は2005年から中国の原発に関する4基の原子炉の建設入札に参加しており、東芝はこれによって間接的に中国の原発市場に参入すると報道された。グリーンピースの創設にかかわったパトリック・ムーア氏が原発推進の発言をするなど、この間原発推進派の動きが注目されている。特に中国の原発推進の動きは、同じ東アジアに暮らすまさに運命共同体となってしまうわれわれ日本人にとっては、非常に気になるところだ。

エネルギー供給が不足する中国

 中国では2000年以降、10%に迫る経済成長を背景にして、電力需要が前年比で平均12%の急激な伸びを示している。もともと国内にエネルギー資源は豊富な中国だが、約4分の3の地域で電力不足になっており、工場等を中心に電力供給制限がなされるなどしている。断流による水不足や温暖化による電気使用量の増加もあるようだが、主な原因としてはエネルギー資源の偏在と、輸送力の問題が指摘されている。必要なエネルギー資源を、必要な地域に運ぶことができないのだ。

 石炭資源の約81%が北部の新疆、内蒙古、山西、陝西の2省、2自治区に。石油、天然ガスの約52%は西部に。水力発電の潜在量の約70%は南西部(四川、貴州、雲南、チベット)にある。これらの地域は開発の進んでいない地域である。

 こうした地域がエネルギーの生産地となり、華東(山東、江蘇、安徽、淅江の各省と上海市)、華中(湖北、湖南、江西、河南の各省)、華南(福建、広東の各省)といった、開発が進み経済成長の要となるエネルギー消費地へと、エネルギーを送るという構造になっている。

 その構造下、エネルギー不足により工業生産設備が十分稼動できなくなっている。

 こうした状況を受けて、中国では原発建設が活発になってきている。サーチナ総合研究所のポータルサイト「中国情報局」の、2004年1月9日付のニュースでは、「中国の電力不足が原発推進の引き金に」という見出しで、こう報道されている。

 「…同委員会(国家発展・改革委員会〈国家発改委〉―引用者注)の計画では、2020年までに中国は原発による発電量を3600万kWまで増大させる」。これは04年以降、毎年少なくとも100万kW級の発電機2基を設置することを意味している。つまり今後16年間、中国のどこかで毎年、原子力発電施設が建設されるということだ。中国の原発の歴史が始まってすでに30年余りになるが、それでも今回のように全国規模での計画が設けられたことはなく、「単発、分散」がその特徴だった。しかし03年、この状況に変化が訪れた。

 電力不足状態が頻発するようになり、政府は03年初めに「第10期5ヶ年計画(01年から05年)」中の電力供給計画に変更を加え、これまで「適度に発展させる」としか述べられていなかった原発に関して、初めて明確な数量目標を定めた。

 第16回中国共産党代表大会で提出された「2020年GDP倍増計画」による4兆ドルという経済規模を達成するためには、全国の発電機総容量を最終的に8億〜9億kWまで拡大させる必要があるというものだ。今のところ発電量は3億5000kWしかない。

環境のために原発を選ぶ?

 国家発改委の原子力発電事務室の元上級エンジニアで、同委員会の重大プロジェクト調査事務室に務める湯紫徳氏によると、もし上記の目標を石炭だけで達成しようとするならば、12億トン以上もの石炭が必要になるという。これはエネルギー資源の分配、採掘、運輸、環境保全のどの面をとっても大きな負担となる。電力不足、並びに一元的な電力供給構造が引き金となって、中国は原発拡大にお墨付きのゴーサインを出しているわけだ。

 「原発計画はこれまでの適度な発展というやり方から、急成長の段階に入った」と言うのは、国家発改委の研究院エネルギー所の韓文科副所長だ。03年9月30日、国務院の黄菊、曾培炎両副首相の司会によって、原子力発電発展計画に関するフォーラムが開催された。同10月24日には、今度は国務院原発指導チームのリーダーとして曾培炎副総理が再び杭州にて原発建設会議を開催、原発に関する戦略的計画を新たに明示した。

 その後、2006年度の電力不足が緩和される見通しが発表されているが、経済成長を下支えするエネルギー資源として、原発を積極的に推進する方針自体は変更されていない。

 「中国情報局」2006年2月21日付では、中国電力企業連合会の王永干秘書長が、2005年に天然ガス不足のため華東地区や中国南部において、電力不足、発電ユニットの停止が生じたのを理由に、「天然ガスによる発電に対しては慎重に対応するが、原子力発電、風力発電、新エネルギーを利用した発電は積極的に推進する」と、原発を重視する発言をしている。  

 環境保全に配慮したうえで、原発を選ぶというのは首をかしげざるを得ない判断だ。エネルギーの大量生産・大量消費社会の実現のためには、原発はもってこいの施設であり、原発が乱発されればエネルギー業界も潤うという見解なのだ。そんな社会は、すぐにカタストロフに陥る以外ないことは目に見えているのだが。

世界最大の石炭消費国

 中国には現在11基、合計659万kWの原発が運転中だ。2基が建設中で2005〜6年に完成予定である。総設備容量は856万kWになる。さらに、広東省嶺澳第U(100万kW2基)、淅江省三門(100万kW2基)、広東省陽江(100万kW2基)の新設、および析江省秦山第Uの増設(65万kW2基)の、計8基が国務院に認可されている。また四川省では、南充市の嘉陵江流域の2ヶ所、濾州市、宜賓市の各1ヶ所を候補地として原発建設準備の申請をしている。四川省の計画では2020年までに400万kWの発電量規模に達する。

 中国全体での2003年の供給設備は約3・85億kWであり、全体設備の内訳・構成比率は、水力約9200万kW・約24%、火力約2億8600万kW・約74%、原子力約700万kW・約2%、風力・地熱・太陽光約40万kW・約0・1%(風力・地熱・太陽光は2002年末)である。このうち火力発電の大半は石炭火力だ。中国は世界最大の石炭生産・消費国であり、2002年の石炭消費は14億2000万トンで、世界合計の27%に当たる。このような石炭消費の増大により、大気汚染や酸性雨の問題が深刻化している。中国の温室効果ガス排出量は世界の13%で、24%を占めるアメリカに次いで世界2位であるが、京都議定書による削減義務は負っていない。

 このような状況下、現在でも全電力供給の内2%にとどまっている原発だが、これを2020年には4%、2035年には20%にまで増設するというのが中国当局の計画だ。2020年までに原子力発電設備容量を合計3600万kW〜4000万kW(原子力発電シェアにして約4%)に拡大するために、今後15年間で30基ほどの原子力発電所を建設する。

 2004年9月1日、中国は「原子力産業の50周年」を祝ったが、その記者会見で国家原子能機構(CAEA)主任張華祝氏が、2020年までの15年間に100万kW級原発を27基建設、合計3600万kWの能力を達成すると発表しているのにこれは符合する。市場規模は総額4000億元(約483億3000万ドル)という。それで日本や欧米の原子力メーカーも売り込みに必死になっている。

 しかし、中国の原発は炉型戦略に一貫性がなく、さまざまなタイプの原子炉を採用している(自主開発PWR2タイプ、フラマトム製(フランス)PWR2タイプ、ロシア型PWR、カナダ型重水炉など )ため、将来、燃料、スペアパーツ、取替え用機器の円滑な供給、運転・保守員の訓練、安全規制等への影響が懸念されている。しかし、どんどん原発を増やしていけば、それだけ核廃棄物を増やし、核汚染を撒き散らしていくだけである。産業は潤っても、それによる汚染の拡大はどうするのか。地獄への道は善意で満たされているのだ。

解決されない核廃棄物問題

 では、核廃棄物の問題はどうなっているのだろうか。しっかりとした汚染除去システムが作られているのか。中国では、西北、華南、華東に処分場を建設または稼動中であり、中・低レベル放射性廃棄物はアスファルト固化、セメント固化の技術が用いられている。廃棄物は5年程度発電所内に貯蔵して浅地層処分をする。

 1998年10月には甘粛省北山地区(ゴビ砂漠)に処分場が建設され、操業段階に入っている。2000年には広東・大亜湾原子力発電所(稼動中)から5キロ離れた北竜サイトに中・低レベル放射性廃棄物処分場が完成する。全面的に完成すれば原子力発電所20基が40年間利用することが可能になるという。

 高レベル放射性廃棄物はガラス固化して深地層集中処分施設に処分する方針だ。深地層処分場の立地候補サイトは、現在甘粛省のゴビ砂漠に位置する北山だけ。高レベル廃棄物最終処分場の最終的な立地選定と許認可手続きは2020年、操業開始は2030年から2050年ころを予定しているという。

 この状況下「中国情報局」は、「中国科学院生態環境研究センターの王毅研究員は『巨額の投資と予算の上積みによって生まれる核廃棄物と原発管理費負担は、実のところ未知数だ』との懸念を表明している」(2004年1月12日付)と報じている。核廃棄物の処理については、発電所内に貯めておくか、地中に埋めてしまうといった以上の解決策が見出されているわけではないのだ。地中に埋めてしまえば目の前からはなくなるだろうが、結局放射能は何万年、何十万年と環境を汚染し続けることになる。処分場の受け入れ先も、すでに核施設の置かれているところか砂漠に持っていく以外ないのである。あるいは過疎で、核施設受け入れによる経済的見返りをほしがっている地域に押し付けるかだろう。

 原発を動かす以上、核廃棄物の問題は避けては通れない。しかし今の人類の科学では制御し、処理しきれないことはすでに歴史が証明済みである。それどころか、これからの科学の進歩によって制御可能になるという保証もまったくない。核廃棄物の問題が解決不可能である限り、原発は止めていく以外ないと私は思う。

中国核関連施設での核汚染

 あまり報道されていないが、中国でも放射能による被害は発生している。60年代には核実験、水爆実験等行っているわけだから、その当時から今に至るまで、少なからぬ人たちが放射能の被害に苦しめられていることは想像に難くない。

 中国国内外で反共産党政府活動をしている法輪功の機関紙『大紀元時報』(2005年8月19日付)に、「中国核原料基地・核汚染告発の職員、逮捕され行方不明」と報じられている。報道によれば、甘粛省迭部県の核原料基地(甘粛792ウラン鉱山)の職員、孫小弟氏が、基地の核汚染問題を告発したため、警察に密かに逮捕され、3ヶ月以上たった現在も行方不明であるという。この792鉱山は、中国の最も重要なウラン鉱の基地の一つだ。だが2002年鉱山は政策的に閉鎖された。

 従業員たちの告発によると、鉱山の幹部と関連政府部署がそれを廃業鉱山として報告しながら、密かにウラン鉱物を採取して売り出し、しかも核廃棄物を排出して環境を汚染したという。地元の人のがん、白血病、奇形胎児、流産などの発病率が明らかに他の地区より高く、特にがん死亡率は現地の死亡者の半分も占めているという。

 原発の作り出すエネルギーによって、消費文明を謳歌する人もいれば、原発産業の底辺で沈黙を強いられる人々もいる。しかし原発の放射能がもたらす被害、ひとたび事故が起きたときの被害は、あらゆる人が当事者となる。放射能は世代を超えて種を超えて生態系を破壊していく。

 とりわけ、日本、韓国、中国、台湾の4ヶ国・地域では、現在90基もの原発が稼動中である(日本54基、韓国19基、中国11基、台湾6基)。世界に434基ある原発のうちの2割を超える設備が、東アジアのこの狭い地域で動いているのだ。将来の世代まで核で汚染してしまうことのないよう、私たちは足元の日本から反原発の闘いを進めていかなければならない。

(中国問題研究会)


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(2006年5月5日発行 『SENKI』 1211号3面から)


http://www.bund.org/opinion/20060505-1.htm

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