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2005/12/06
http://www.janjan.jp/living/0512/0512050999/1.php?PHPSESSID=55d8d2a454d7c2a021e93b777473c1fc
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建築基準法と震度
建築基準法に基づいて設計しなければならない耐震計算書を偽造した姉歯設計の問題が追及されている。震度5強で倒れるのでは、マンションの住民も近所の住民も気が気ではない。われわれ一般市民も明日はわが身の可能性があり、他人事ではない。
日常何気なく使っている震度とは何だろう。下表は勝又護著「地震を知る事典」(文献1、第3表P,161)から、気象庁の震度階級と加速度(GAL)を一覧にしたものである。
表から見ると、同じ震度階でも、加速度の幅がかなり大きい。震度5は80〜250GALである。このため、以降は震度内で加速度を比例配分して、震度を少数点以下1桁まで計算して見る。例えば、150GALの地震は震度5だが、比例配分して、5+(150−80)/(250−80)=5.4となり震度5弱である(小数点以下2桁を四捨五入)。震度7の上限は無いが中電が1000GALに耐える補強工事をするといっているので、仮に1000GALと設定する。
建築基準法は、震度5強(≧震度5.5)で損壊がなく、震度6(震度6.0〜6.9)でも一部損壊で済み、倒壊しないものを1とし、これを最低基準にしている。国交省構造計算書偽造問題対策連絡協議会が出している使用禁止措置の目安は0.5で、これは震度5強で一部損壊、震度6で倒壊する恐れがあるレベルである。姉歯設計で0.31だった建物は震度5強で倒壊のおそれがある。
参考:
(『朝日新聞』05年12月1日付)
(『朝日新聞』05年12月2日付)
原子力の耐震設計と震度
さて、原子力サイトの耐震設計は震度で表すとどの程度の震度に耐えられるのだろうか。現在の原発の「耐震設計審査指針」(文献2)によれば以下のようになる。
原子炉施設の耐震設計に用いる地震動は、敷地の解放基盤表面における地震動(以下「基準地震動」という)としてS1,S2の2種類を選定する。
(1)基準地震動S1(「設計用最強地震」という)に対しては、許容値以下(弾性範囲内)であることが要求される(建築基準法の損壊しないに相当)。
(2)基準地震動S2(「設計用限界地震」という)に対しては、塑性変形を許す(変形が残る)が、放射能を外部に漏らさないことが要求される(建築基準法の一部損壊しても、倒壊しないに相当)。
以下に、原子力安全基準・指針専門部会 耐震指針検討分科会の事務局資料(文献3)より、各原子力サイトのS1,S2の最大加速度を示し、それが震度いくつになるかを筆者が計算した結果の表を示す。
(注1)文献3では浜岡1〜2号もS1:450GAL、S2:600GALと記述されているが、筆者が申請時点の値に直した。明らかな基準地震動の設計ミスであるが、原子力安全委員会はそれを認めたくないばかりか後追い承認をしたようである。これは重大な耐震設計審査指針に対する違反行為である。
(注2)中国電力は島根1〜2号建設時に専門家の意見を無視し活断層は存在しないとしてきたが、島根3号の申請中に裁判で宍道断層が活断層であることが明らかになったためS2−N(活断層の設計用限界地震)を大きく取った。こちらは、設置許可を出したばかりなので、さすがの安全委員会も1,2号炉のS2−Nに456GALと記入できなかったと思われる。数年経てば、記述されるのは請け合いである。
基準地震動の設計ミスがあっても1〜2号機は耐震上問題ないとするのが中国電力や中部電力の言い分であり、安全委員会の立場である。奇妙なことにどちらも略称は中電である。
設計用限界地震S2−Nと震度
この表で、S2−Nはマグネチュード6.5の深さ10KMの直下型地震を設計用限界S2として採用した場合である(島根3号除く)。これが記述されている原子炉はS2よりS2−Nのほうが大きく設計用限界地震はS2−Nで代表される。このタイプの原子炉は全57基の原子炉の過半数の29基に及ぶ。しかも、これらの原子炉は最大加速度が370GAL、震度6.8までは放射能もれを防ぐがそれ以上では必ずしも保証の限りでは無いのである。建築基準法では1ならば震度6(<震度7.0)では一部損壊はあるが倒壊しないとしているのと比べると震度6.8を超えると放射能漏れを起す可能性があり、明らかに建築基準法より甘いのである。
これは、どんな地震にも耐え放射能は漏れませんと言ってきた電力会社の説明が如何に無意味かを示すものである。しかも、同じM6.5、震源距離10KMの直下型地震を想定してもサイトごとに地盤が異なり、最大加速度はサイトごとに異なるはずなのにほとんどが370GALと判で押したように同じなのである。これは原子力安全委員会の業界寄りのご指導の賜物である。とにかく、過半数の原子炉は震度6.8以上では放射能漏れを起さない保証は何も無く建築基準法より甘いのである。
本当に設計用限界地震を超える地震は発生しないのか?
原子力安全委員会は「設計用限界地震は起こり得ない想定外の地震であるから震度6.8以上の地震は起こらない」と反論するだろう。しかし、本当にそうだろうか。
4年ほど前からの耐震設計審査指針の見直しを進めてきた原子力安全委員会は「直下型地震」に代えて、「震源を特定せずに想定する地震動」を考えることになっている。耐震指針検討分科会のなかで石橋克彦委員は地震学の立場から、「震源を特定できない場所でマグニチュード(M)7.3までの内陸地殻内地震が起こり得るので、国内・外のその震源近傍の観測記録に基づき、敷地の地盤特性に応じて応答スペクトルを策定する」と提案している(文献4、P.6)
活断層がなくても直下の大地震が起こる例として1927年北丹後地震(M7.3、死者2925人)、1943年鳥取地震(M7.2,死者1083人)、鳥取西部地震(2000年M7.3、破壊開始点深さ6km)など多くの地震の記録がある。地震国日本の原発はどれもM7.3までの直下型大地震の危険にさらされているのである。したがって、現在S2−NとしてM6.5,深さ10kmは時代遅れで、これを設計用限界地震S2−Nにしている原子炉は放射能放出の可能性が大きいのである。
これに対して、12月1日に発表された事務局の「改訂耐震設計審査指針の本文及び解説のテキスト原案」(文献5、P.10)では、「震源を特定せず策定する地震動」については、「震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について、震源近傍の観測記録を基に、敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定し、」とある。石橋案に一見近いが、肝心のM7.3を抜かしているのである。さらに、解説事項(P.13のF)で、「この考え方を具現化した基準地震動の策定については、申請時点での最新の知見で、その妥当性を個別に確認すべきである」として、行政の裁量権で今までのS2−Nをも認めるつもりである。今までは、直下型地震はM6.5、深さ10KMで370GALと一律に規定していたのを、今度は行政の裁量権で個別に確認し、申請は電力会社ごとに異なっていいとしているのである。ご都合主義もここに極まった感を禁じ得ない。
M7.3を入れてしまえば現在稼動中の原発が耐震計算をやり直して、放射能漏れを起す可能性が高いからである。原発震災が起こればどんなに悲惨な結果をもたらすかは、拙稿
(文献6)を参照願いたい。
参考文献
1.勝又護著「地震を知る事典」(1995.7.30初版、東京堂出版)
2.原子力安全委員会
(1981.7.20)
3.
「α倍のSS」についての考え方(試案)震分第25−2号、原子力安全委員会事務局作成(2005.8.24)
4.
「耐震設計審査指針改訂に関する骨格の一部について(事務局整理案:その3)」に対する意見、震分第28−4号(改)委員:石橋克彦(2005.10.28)
5.
「改訂耐震設計審査指針の本文及び解説のテキスト原案について(事務局案:その2)」、震分第32−2号(改)原子力安全委員会事務局(2005.12.1)
6.林信夫
「(JANJAN記事2005.6.10)
(林信夫)
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