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フライデー6/17号
http://books.bitway.ne.jp/kodansha/friday/scoopengine/article/20050617/ttl1401.html
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帰国1年後に生まれた娘は「右手指がなかった!」
イラク帰還米兵「劣化ウラン弾汚染」の真実
「私の軍への愛は一瞬で消えてしまった。国に裏切られた思いでいっぱいだ」
もうすぐ1歳になるという娘を抱きかかえ、ジェラルド・マシューさん(31)は私にこういった。
ニューヨーク州兵だったマシューさんが、輸送部隊の一員として初めてイラクに入ったのは'03年5月中旬。以降、軍用トラックを運転し、クウェートの基地とイラクを何度も往復した。爆撃された町を抜け、破壊された戦車や軍事車両などを運ぶ。
砂嵐に遭遇し、視界が利かず、砂漠の中で立ち往生することもしばしばだったという。
輸送を続けるうち、マシューさんの体調が異変を来きたした。
「下痢、頭痛、腰痛、排尿時の痛み……。顔の右側が赤く腫れ、皮膚に赤い斑点が浮かび、何重にも物が見え始めた。同僚も同じ症状で苦しんでいました」
部隊には医者がおらず、同年9月、マシューさんはドイツにある米軍の病院に移送された。帰国後は陸軍病院で診察を受けたが、原因は不明だった。
帰国してまもなく、妻のジェニスさんが妊娠。そして悲劇が起こる。
「担当の産科医が、挨拶するより先に発した言葉が『放射性物質に触れたことはありませんか?』というものでした。二人の初めての子供に喜びでいっぱいだっただけに、そのときのことは、いまだに忘れることができません」
ショックを隠しきれないマシューさんに、医師はこう続けたという。
「お腹の赤ちゃんは、右手がありません」
はたして、昨年6月に生まれたビクトリアちゃんの右手には、豆粒のような小さな指が2つしかついていなかった。
夫婦の家系に先天的異常は見受けられない。だが、イラクの子供たちの奇形の写真を見て、マシューさんはあまりにも状況が似ていることに気づく。自分の健康との関係について考え始めたのは、それからだったという。
「その後、私と同じような症状で苦しんでいた州兵の仲間から、劣化ウラン弾のことを初めて知らされました。当時は自国の軍隊が劣化ウラン弾を使い、被害が出ていることなど誰も知らなかった。教えてくれる人もいなかった」
劣化ウラン弾は、着弾後に高熱で爆発し、微粒子となって周囲に飛散する。体内に入ると、被爆と同時に重金属の毒性で内臓が冒され、白血病や癌、奇形児の発生などさまざまな症状を引き起こす。初めて実戦投入されたのは湾岸戦争で、イラク戦争では人口密集地域で大量に使用された。イラクでは、その影響と考えられる癌や白血病が多発し、奇形児がたくさん生まれているのだ。
「帰国時、軍医に『イラクでさまざまな害虫や化学物質に触れたので、今後1年は子供を作るな。献血は10年間行ってはならない』といわれたんです。無事に家族と再会できる喜びでいっぱいで、そのことが何を意味しているのか当時は理解できず、気にも留めていませんでした」
マシューさんらは軍に劣化ウラン弾の検査を要請したが、取り合ってはもらえなかった。だが、'03年秋、地元紙の『ニューヨーク・デイリーニュース』がドイツの民間機関で彼らを検査した結果、帰還兵10人中9人に劣化ウラン弾の異常値が認められたのだ。マシューさんは通常の8〜10倍の高い数値だったという。
さらに1年後には、ヒラリー・クリントン上院議員らニューヨーク州選出の国会議員、州知事などから、帰還兵全員の劣化ウラン検査を求める意見が次々と上がる。慌てて尿検査が行われたが、軍による発表は「全員異常なし」というものだった。どこまで信じられるのか……。
また、ニューヨーク州兵でサマワに駐屯していた部隊からも、同じように劣化ウラン検査で陽性を示す兵士たちが出ている。サマワでの駐屯地だった鉄道貨物集積所は、劣化ウラン弾で汚染された可能性が高い地域。実際、米軍の撤退後にサマワの治安維持にあたったオランダ軍は、集積所の放射能チェックを行い汚染を確認したうえで、町から離れた砂漠の中にキャンプを設営したのだ。
軍、そして政府の対応に怒りを覚えたマシューさんら被害者は、次々とマスコミに出演し、不満と不信を訴えた。彼らは現在、国に補償を求める裁判を起こしており、今月中には結論が出るという。
憲法の精神と愛国を疑わずにイラクへ赴いた米兵たち。国への忠誠心はいま、音を立てて崩れ去ろうとしている。
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