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核燃 開発の亡霊 鳥取『ウラン残土』
かつてウラン鉱山があった鳥取県の山奥で、うち捨てられた残土が亡霊のようにさまよっている。地元住民は一刻も早い撤去を望むが、行き先が定まらないためだ。撤去の責任を負う核燃料サイクル開発機構(核燃)に毎日七十五万円の制裁金が科せられたが、住民の不安は募るばかり。はかなく消えた国産ウラン開発ブーム。“夢の後始末”の現場を歩いた。 (浅井正智)
■地権者ならばフリーパスで
「土の中に青く光る粒があるでしょう。これがウランを含んだ残土です」。鳥取県湯梨浜町方面(かたも)地区の農業榎本益美さん(69)は足元のウラン残土から掘り起こした土の塊を示しながら言った。ウラン残土はウランを採掘するためトンネルを掘った際に運び出された放射性物質を含む土砂だ。
方面地区は全二十戸の過疎地域で多くが兼業農家だ。かつてのウラン鉱山は方面の集落から一・五キロ離れた急斜面の山中にある。榎本さんと方面地区の近藤明区長(56)と進んで行った。
「ここがウラン残土の堆積(たいせき)場」と教えられた場所は、残土というイメージとは違い、雑草が茂り、周囲の土との違いすら見分けがつかない。だが榎本さんはここで実際にウラン採掘に従事しただけに微量のウランもひと目で分かるようだ。
この一帯は国の鉱山保安規則に基づく「周辺監視区域」に準じ、立ち入りが制限されている。しかし核燃はこの敷地の所有者ではなく、地権者と借地契約をしている立場。榎本さんや近藤さんのような地権者は事実上フリーパスで区域内に立ち入っている。
■鉱山の町として経済的な期待も
原子燃料公社(現核燃)が方面地区でウラン探鉱を始めたのは一九五八年。それに先立つ五五年、岡山県と鳥取県にまたがる人形峠でウラン鉱床が発見された。「自分の地元で最先端の仕事をし、それが国の役に立つのだから、あのころは仕事に誇りをもっていた。地域を挙げてウラン開発に協力するという雰囲気だった」と榎本さんは振り返る。
ウラン鉱山の町になれば、経済的にも潤うという期待があったのは間違いない。しかし期待が急上昇した分、夢がしぼむのも早かった。鉱石に含まれるウラン含有量は少なく採算が合わないため、方面地区での探鉱は三年ほどで終わった。
そして八八年「方面地区で放射線の高い残土が放置されている」と報道され、住民から撤去要求が噴出したのが問題の始まりだ。
九〇年、自治会と核燃は、残土のうち三千立方メートルを撤去するとの協定を締結した。撤去先は明記されなかったが、両者とも岡山県鏡野町にある核燃人形峠環境技術センターに搬出することを念頭に置いていた。
ところがそこに盛られた「関係自治体の協力を得て」との条件をめぐり搬出先選びは迷走する。岡山県当局が猛反対したためだ。同県環境政策課の担当者は言う。
「鳥取県で危ないと判断されているものは受け入れられない。岡山、鳥取両県で残土堆積場は計二十二カ所あるが、すべて現地処理されている。なぜ方面だけが例外なのか」
核燃によると、残土は坑道の入り口の付近に堆積させ、覆土しておくのが世界的な通例で、現地の外への撤去が問題化しているのは、日本では方面地区だけという。核燃は鳥取県内でも搬出先を探したが、こちらでも「関係自治体の協力」が得られず頓挫する。業を煮やした自治会は協定の履行を求めて二〇〇〇年に鳥取地裁に提訴。昨年十月には最高裁で核燃に全面撤去を命じる判決が確定した。
さらに住民側は核燃に早期撤去を促すため、今年三月十日を期日とし、それを過ぎても不履行の場合は以後、撤去完了まで毎日七十五万円の制裁金を科する「間接強制」を鳥取地裁に申し入れ、認められた。
制裁金を避けるため搬出を急ぐ核燃は昨年十一月、方面地区と同じ町内の麻畑地区への搬出を決定した。人形峠環境技術センターの黒沼長助所長は「センターが借地であるのに対し、麻畑地区は核燃所有地であり恒久的な保管ができる」と変更の理由を説明する。さらにセンターへの搬出を前提に撤去協定を結んだことを「現地処理の原則に反する点があったことは反省している」とも話す。
ところが今度は鳥取県当局が真っ向から反対してきた。今年二月、麻畑地区が県立自然公園内にあることを盾に、同公園条例に基づく残土搬入の禁止命令を出したのだ。
裁判所が期限とした三月十日が過ぎ、毎日七十五万円の制裁金が科される事態の支払いがついに始まった。核燃はなおも麻畑地区への搬出で最終決着を図る方針を堅持しており、禁止命令の取り消しを求めて提訴した。「取り消しが認められれば、一軒ずつ戸別訪問をしてでも地元の理解を得たい」と黒沼所長は言う。
鳥取県はそれを拒絶する姿勢を崩さない。「撤去先が町内では住民の不安が解消されない。隣の家にもっていくようなもので意味がない」と同県環境政策課の担当者はあくまで人形峠への搬出を主張する。県同士の話し合いすらない現状は「核のごみ」を押しつけ合っているようにも見える。
しかし、そもそもの問題は残土が周辺の環境や人間の健康にどのくらい影響を及ぼすのかという点だ。
核燃によると、周辺監視区域内では最高で年間被ばく線量限度の三十六倍という高い放射線が測定されているが、一般の人が居住する同区域外については危険性を示す明確な科学的データはない。
両県は毎年定期的に各県内の残土堆積場周辺の土中、河川中のウラン、ラジウム濃度の測定を続けているが、地元住民を後押しする鳥取県は「周辺監視区域外の環境への影響や住民の健康被害は科学的に立証されていない」(前出の担当者)と明かす。
近藤区長は「明確なデータがなくても、残土が放置されているために、地元住民は不安な気持ちを抱きながら暮らしている。核燃にはその不安を取り除く責任があることは最高裁判決で明らかだ。核燃の意志一つですべてが解決する」と一日も早い撤去を訴える。
鳥取県の担当者も「放射線が多いか少ないかではなく、核燃が住民との撤去協定を守っていないことこそが問題だ」と強調する。
日本原子力産業会議の石井敬之・情報調査本部主任は「ウラン残土が安全かどうかという検証可能な問題ではなく、よその県が危険と判断したものは受け入れられないという情緒的かつ科学的根拠のない話のために、多額の制裁金が費やされている。科学的見地に立った議論が行われるべきだ」と指摘する。
忘れてはならないのは、核燃は文部科学省所管の特殊法人であり、地元自治会に支払われる制裁金は国民の税金から出ている事実だ。総額は四日、六千四百五十万円に達した。この状態が一年間続けば、金額は二億七千万円以上に膨れ上がる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050605/mng_____tokuho__000.shtml
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